家に帰り、記憶を辿る。


… ?


…??


…???


何も覚えとらーん!


明日、警察署に行けば

どんな状況だったか

ねほりはほり聞かれるはず。


まったく覚えていないので

それっぽい仮説を立てることにした。


歩行者信号が変わるタイミングで

交差点に侵入、左折車に巻き込まれる

という事故の王道ような仮説を用意した。


左折車に巻き込まれたにしては

自転車がいささかクシャクシャ過ぎる

気もするが、他のシチュエーションが

思い浮かばない。


まさかノーブレーキで交差点に

突っ込みました!とか、そんなあり得ない

シチュエーションを言うわけにもいかないので左折車説でいくことにした。


翌日、警察署に出向くと

案の定


どんな状況だったか覚えてる?

だいぶ酔ってたみたいだけど


と、おまわりさんが聞いてくる。


三上は用意した仮説を

あたかも覚えてますよ!と言わんばかりに

身振り手振りをつけ披露した。


おまわりさんは

ニヤニヤしながら聞いていた。


三上の仮説披露が終わるや否や


なるほど

じゃ、これ見て!


と、一本のビデオテープを出してきた。


無言で再生されたビデオテープには

大きな交差点が映し出されている。


それは、交差点に設置された

監視カメラの映像だった。


信号が変わり、走り出す車の列。


大きめの交差点のせいか

どの車もスピードを出している。


そこに一台の自転車が現れる。


三上だっ


ビュンビュンと車が走っている交差点に

ノーブレーキで突っ込んでいく!


あり得ないシチュエーション⁈


跳ね飛ばされた身体は

宙に舞っていた。 


テレビでしか見たことがない衝撃映像が

そこには映っていた。


映像を見る限り

生きているのが不思議なくらいの事故だった。


おまわりさんが


これじゃ、タクシーも災難だねー!

どう処理するかは、運転手さんと 

よく話してね〜


その後


タクシーの運転手さんには

素直にお詫びを伝えた。


タクシーも、もちろん破損していたが

運転手さんも衝撃映像を見たようで


生きてて良かった!


と、一言。


事故は

双方、痛み分け


ということで、処理することになった。


苦労して成功させた、MC体験談が

完全に消し飛ぶ、失敗談。


成功は、ちょっとしたことで

簡単に消し飛んでしまう。


うまくいった時にこそ

その後の行動が鍵になる。


驕り高ぶらずに生きていく


そんなことを学んだ

恐怖のMC体験談ならぬ

調子にのったヤツの恐怖の失敗談でした。


あの跳ねられ方で 

ほぼほぼ無傷でいたことにも

何かに守られたのだなと思い

頂いた命に感謝しながら

この先も精一杯

命を燃やしながら生きていこうと

思います。