慶三の家族旅行中に 

台本が完成した。

昼間は家族とともに過ごし 
夜はひとり、旅行先で漫画喫茶に行き 
書きあげてきた。 

「あとは任せたぞ。」

「OK、楽しみにしとけ!」 

慶三の本気を見せられて 
こりゃ、マジで賞でも獲らんと 
顔向けできねぇなと思った。 

日を見ずに
地中で必死にもがいている者たち

『ひみずや』





怒涛の稽古がはじまった。 







みんなでアイデアを出しながら 
膨らませていった。 


時間がない中で集中して創りあげてく。 

笑いの中にも 
ヒリヒリした緊張感があった。 




この感覚があれば、良い作品が出来ると 
今までの経験から分かっていた。 

ある程度、まとまった段階で 
問題があった。 

尺だ。 

二時間あった。 

タダでさえ狭い小劇場。 
隣の人と肩が触れ合い、トイレにも立てない 
状況に二時間もお客様を座らせるな。 

という、三上なりの拘りがある。 

10分〜15分 
尺を縮めたかった。 

チマチマ、台詞をカットしただけでは 
簡単に縮まらない尺だった。 

出来ないこともないが 
役者に混乱をきたす可能性が大きかった。 

シーンの丸々カットという決断が迫られる。 

カット候補のシーンは 
外組の色が、濃く出るシーンだった。  

メンバー内でも意見が割れた。 

長い時間話し合った結果 
三上の判断に託された。 

この判断を間違えると 
作品のデキを大きく左右する。  

悩みに悩んだ結果…