ここに一枚の写真がある。
トンノとダイナンではなく
三上と脚本家の大橋慶三である。
二人は同い年。
慶三は元々ヒロキチの知り合いで
飲みの席で会った。
「外組、おもしろくねぇな!」
酔っ払って、よく絡まれた。
「うるせぇ、ブサイク!」
負けじと絡み返した。
慶三は小説を出していて
ボイルドエッグス新人賞を受賞していた。
『じらしたお詫びはこのバスジャックで』
ブサイクがどんな話を書くのか読んでみた。
おもしろかった。
慶三とは、ヒロキチを介して
二、三度しか会ったことがなかった。
外組の次回作の脚本家を探す時期がきた。
次回作は炭鉱をテーマにした話だ。
熱くるしくて、泥くさい
そんな作品にしたかった。
しばらく会ってなかったのだが
慶三に頼んでみようと、なぜか思った。
しかし、何回か
飲みの席で罵りあったことがあるだけで
お互いのことは何も知らない。
そんな時は
「とりあえず、飲むべ!」
何年も会っていない、親しくもないヤツから
の突然の飲みの誘い。
慶三は驚いていた。
浅草橋の大衆居酒屋で会った。
二人だけというのは、はじめてだったので
お互い妙な緊張をしていたのを覚えている。
3軒ぐらいハシゴした。
次の日、慶三からメールが来た。
「よく覚えてないけど、昨日は
モメなかったよね?」
「大丈夫、楽しく飲んだよ。」
「で、なんの用件だっけ?」
二回目に飲んだ時に、脚本を依頼した。
一回目もしたけど。
それからは
飲んでは、構想を膨らませ
飲んでは、忘れた。
次回公演は、劇場の薦めもあり
池袋演劇祭に参加することが決まった。
外組、初の賞レースだ。
罵りあっていた同い年の二人が
脚本、演出としてはじめてタッグを組む。
「よし!こりゃ獲りにいくべっ!」
また
挑戦がはじまった。
