外組其の参
『極悪河童譚』
動員数515名
上の写真は当時の集合写真だ。
…お気づきだろうか?
5人の集合写真。
電話口で、中野は泣いていた。
「き、き、喜楽が辞めちゃうよ〜!」
喜楽の実家は、大阪で工場を営んでいた。
お父さんが倒れ、経営が逼迫していた。
芝居を辞め、実家を手伝うという。
事情が事情だけに
ただただ送り出すしかなかった。
何も出来ない自分たちが、情けなかった。
5人で公演した『極悪河童譚』は
6人で出来ていた外組のバランスが
失われていた。
それでも、悲しみを乗り越えて
舞台に立ち、演じ続けた。
三上の役は、河童だった。
辛さに堪え、歯を食いしばり
緑の全身タイツを着込み
甲羅を背負い
頭に皿をのせる。
三上の役は、河童だった。
この公演は、下北に新しくオープンした劇場
Geki地下Libertyのこけら落とし公演として
上演させていただいた。
三上の役は、河童だった。
あれから、十年が過ぎ
喜楽から連絡があった。
「ぼく、東京に戻ります。」
工場はもち直し、両親から
「ありがとう。これからあんたは
好きなことやり。」
と、言ってもらったそうだ。
喜楽が東京に戻ってくる!
外組メンバーみんなで手分けして
部屋探し、バイト探しを手伝った。
あの喜楽が帰ってくる。
「久しぶりに集まって、みんなで飲むべ!」
十年ぶりの集合に歓喜した。
そして現在…
喜楽は東京で
元気に「講談師」を目指している。
外組に戻ってこんのかーいっ!
まぁいい
がんばれ喜楽
みんな応援してるぞ!
五人になった外組は
それでも3000人公演への
挑戦を続けるのである。


