三上の役者歴を振り返ったとき
絶対に記しておかなければならない
恐ろしい撮影体験がある。
今日は、そのお話を。
はじまりは
とある映画の撮影現場だった。
いつものように長い長い待ち時間を
過ごしていた。
そんな時
同じ出演者の1人の若者が話しかけてきた。
聞くと、まだ学生だが
自分で脚本・監督をして
自主制作で映画を撮っているとのこと。
「もしよかったら、今度出てくださいよ〜」
「機会があれば、是非!」
三上は当然
当たり障りない返事をしておいた。
後日、連絡が
「先日話した自主制作の映画の件ですが…」
ほんとに連絡してきちゃったよ〜
「とりあえず、スケジュール確認するね。」
スケジュールなど何も無いが
当然、一旦寝かす。
再度、連絡があったので
一度、台本読ませてほしいと送ってもらった。
男二人、女の子一人、仲の良い三人組。
あることから男二人が一人の女の子をめぐり
決闘する!
なんというか…
そんな内容だった。
しかし、読み進めていくと
『激しく飛び交う銃弾!』
『窓ガラスを突き破り、飛んできた
ヘリコプターに乗り移る!』
『ハーレーダビットソンに跨がり疾走する!』
まるで、ハリウッド映画のような展開。
もしや、未来の大監督か!?
そうなると、当然三上はこう言う。
「やります!やらせてくださいっ」
後日、読み合わせを終えた時
未来の大監督に興奮を抑えきれず聞いてみた。
「ヘリコプターとかどうするんですか?」
「ヘリコプターとか無理なんで
カットします。」
え⁈
いや、でも台本に…
「じゃ、ハーレーダビットソンは?」
「自転車でいきます!」
捨てちまえ!こんな台本っ
しかし、すでに引き受けてしまっていたので
ここはプロ根性を出すしかなかった。
数日後、撮影がはじまった。
とくに問題も、盛り上がりもないまま
撮影は続き、ラストの決闘シーンに。
「ラストシーンはこの衣装でお願いします。」
着物を渡される。
なんで?
着物にピストルの男 vs 洋装に日本刀の男
だから、なんで⁇
ラストシーンは多摩川の土手
小雨の降る中で撮影した。
演者もスタッフも
雨が強くなる前に終わらせようと急いでいた。
そんな時、監督が川を指差し
「あそこの中州で撮らせてください。」
こいつ、マジかよ〜
と、思いながらも
作品づくりに妥協はあり得ない。
土手を下り、川原を歩き、クツを脱ぐ。
三上は着物を着させられているので
クツでもないが。
膝下あたりの川に入り、中州に渡って
撮影をはじめた。
次第に雨が強くなり、撮影中断。
止まない雨。
監督が
「撮影再開します!」
なんで?
「雨が決闘シーンを演出してくれます。」
うるせぇーよ!
前に撮り終えているカットの繋がりなんて
なんのその、撮影を再開した。
強まる雨。
もはやマイクで、音をひろえないほどの
豪雨になり、再度中断。
今日は中止にしようというスタッフ。
しかし、監督は一人
もう少し粘らせてほしいと食い下がる。
待てども雨は、一向に止む気配がない。
どれくらい経っただろう
三上が、ふと岸に目を向けると
あれ…⁈
土手を下りてから歩いた川原がない。
土手を下りたら川…
土手から川…
水が増えとるやないかーいっ!
一斉に、慌てだす一同。
監督だけが
「大丈夫です。」
なんでだよっ!
とりあえず、水位を調べようと
監督が川に足を入れた瞬間
バシャーンっ!!
監督の姿が消えた。
え⁈
なんとか川から這い上がってきた
監督が一言
「大丈夫です。」
ウソつけっー! !
ここから生還をかけた戦いが
はじまります。