芸能事務所での活動がはじまった。 

時代劇を経験していたので
商業演劇と呼ばれる公演で 
新宿コマ劇場や名古屋御園座など
大劇場に立たせてもらった。

が、いずれも立ち回り要員、町人といった
その他大勢役。

早替えが間に合わず
出番をトチったことがあった。

怒られる、と思ったが
共演者でも気づいていたのは数人だった。

そんなものである。

カツラを付け忘れて、出たこともある。

これはさすがにバレる。

めっちゃ怒られた。

そんなものである。

芝居よりも早替え技術が磨かれた。

あとは、事務所でのレッスンの日々。 

芝居がしたい…
芝居がしたい…
芝居がしたい…

そして

遂に三上は 
禁断の地に足を踏み入れた。 

 『小劇場』 

ここに踏み込んで、帰ってきた者はいない。

はじめての小劇場は 
新宿にあるシアターモリエールだった。 

京都で知り合った安藤彰則さん率いる 
演劇ユニット

NO-TENKI(ノーテンキ) 

メンバーには 
元ラッツ&スターの山崎廣明さんもいた。

太秦の大部屋から 
活動の場を東京に移していた安藤氏に 

芝居やりましょうよ! 
小劇場やりましょうよ! 

三上は、ラブコールを送り続けた。

時を同じくして、安藤氏が通うバーに 

芝居つくって、俺出してくださいよ〜 

と、懇願している
お調子者のバーテンダーがいた。

このバーテンダーも出演することになるのだが 

稽古に遅刻しては
小ウソをつく
稽古中にバイクで事故って骨折しては 
小ウソをつく
本番中にも遅刻する 
そして当然、小ウソをつく

とんでもない男だった。 

この男こそ 
長野が生んだお調子者 
後の外組座長、中野マサアキだ。 

あれから二十年 。
相変わらず、小ウソをつかれながら
今も一緒に芝居をしているとは
なんとも不思議なものだ。 

禁断の地「小劇場」 
その魅力にハマり、これより舞台三昧の 
日々がはじまる訳だが 

その前に三上、事務所社長に呼び出される。 

なんだよ〜 
またなんか怒られるのかよ〜? 

恐る恐る事務所を訪ねると 
社長から衝撃の発言が 


お前、お笑いやれ。


 ……… 


 は?