付き人… 

プロの俳優さんの側で学べるチャンスか⁈ 

よく分かんねぇけど、行ってみるべ! 

ソッコー応募し、面接に漕ぎつける。 

事務所にて、マネージャーさんに 

「あおい輝彦さんって知ってる?」  

「はい!大好きですっ」 

知らないけど、大きな声で答える。 

芝居は腹式が大切である。これは学んでいた。 

「車の運転は大丈夫?」 

 「はい!父が教習所の教官ですっ」 

三上は、ペーパードライバーだったが 
実際、父親が教官をやっていたので 
妙な説得力を出してみる。 

芝居はバックボーンが大切である。 
これも学んでいた。 

結果 …

合格!

今まで学んだことが実った瞬間だった。   

三上、「あおい輝彦」さん
の付き人になる。 

へぇ〜そうなんだ 
あおい輝彦さんの付き人だったんだ。 

と、思った人はたいがい「西郷輝彦」さんを 
想像しているのでご注意ください。 

元祖ジャニーズ 
水戸黄門の助さん 
あしたのジョーの声をやっていた 

あの、「あおい輝彦」さんだ。 

付き人って、何やるの? 

そう思う方も多いと思う。 
 一言でいうと、なんでもやる。 

撮影中のお世話はもちろん 
休みの日は庭の草むしりもする。 
師匠が海外旅行中は、家で留守番をし 
犬の散歩だってする。 
基本、365日24時間勤務だ。 

こりゃ大変だぁ〜! 

いやいや 
第一線で活躍する俳優さんの側で勉強できる 
こんな恵まれた環境はない。 
貴重な経験の数々で、ツライと思ったことは 
一度もない。 
たまに血尿が出ただけだ。 

まずは、兄弟子と一カ月共同生活を送りながら 
いろいろと教えてもらう。 

兄弟子との対面。 

時代劇俳優の付き人をやっている人だから 
さぞ厳しい兄弟子なのだろうと覚悟していた。

 が、現れたのは 

ツンツンヘアーに革ジャンを着た 
前歯ボロボロのパンク少年だった。 

な、なんだ、この悪魔くんみたいなやつは⁈ 

なにを隠そう、この兄弟子こそが 
後の外組船頭ヒロキチである。 

当時、三上20歳、ヒロキチ19歳である。  

そして、業界内で最も恐ろしいと噂される

「京都太秦撮影所」での 

三上の付き人生活がはじまる。