皆さんは創傷(主に日常の擦り傷や切り傷)に対してどのような対応をしていますか?
まさか消毒薬でしっかり消毒して、ガーゼとか当てたり、一般的な絆創膏とか貼ってないですよね…そしてマメにガーゼとか交換して傷を乾燥させようとしてたりして…。
我々が幼稚園の頃には転んでケガをすると、保健の先生がよく赤チンを塗ってくれました。赤チンの原料であるマーキュロクロムの主成分は実は有機水銀化合物で、マーキュロクロムの製造過程に発生するヒュームを吸うと水銀中毒になる恐れがあることから、1973年には国内での原料の製造が中止となりました。今思うと傷口に毒を塗られていたようなものですね。
今の学校の保健の先生は、オキシドール(3%の過酸化水素水)などで消毒をしてくれるのでしょうか?シュワーっと泡が出てしみて痛そうですね~。これもいけませんよね…。
あ、そういえば我々歯科医療の現場でも歯科衛生士さんが、スケーリング(歯石とり)の後で出血した歯肉に対して、消毒としてオキシドールを塗布しているのをよく見かけますが…皮膚の創傷でもよくないのに、しかも傷ついた(または傷つけた)粘膜に使用するなんて…私には怖くてできません!
家庭においては、擦り傷や切り傷には「マキ○ン(主成分:塩化ベンゼトニウム)」と「バンド○イド」、これが必需品とお考えの方も多いと思うのですが、本来の創傷治癒のメカニズムからいうと、オススメできませんね…
★ではなぜ創傷を消毒することがいけないのでしょうか?
そもそも消毒薬というものは、皮膚(粘膜)や創面の細菌を除去するために使用していると考えられますが、この行為は細菌を除去できないばかりか、創面を傷害しているだけなのです。
消毒薬には細胞傷害性があり、それは細菌よりも人体の細胞に対してより強力に作用するのです。外傷における消毒は治療行為ではなく、単なる傷害行為にすぎないのです。しかも強力で優れた消毒薬ほど人体への傷害性が強いのです。消毒によって一時的に細菌数を減らすことは可能ですが、皮膚(粘膜)や創面を無菌的にすることは不可能であり、消毒によって無菌化できるのは器具とか材料のみなのです。
★では実際に創傷に対してはどんな処置が良いのでしょうか?
ほとんどの創傷に対しては、水(水道水)でよ~く洗っといてください!滅菌水とか必要ないですからね。決して余計な消毒薬は使用しないで下さいね!みなさんが良かれと思って使用する消毒薬は実は創傷治癒を障害しているのですから!
残念ながら医師や看護師の中には「傷は消毒しなければいけないもの」という固定概念にとらわれている方が多いので、今もなお臨床の現場ではせっせと消毒薬が創傷に対して使われています。「消毒をしっかりしないと化膿する」とか「化膿しているから消毒しなければ」という考え方は間違っているのです。
一般的に創傷の感染というものは、細菌単独で起こるものではなく、異物や壊死組織が創面やその組織内に混在している時に起こります。もし創感染が起こってしまったら、感染の原因菌を死滅させることよりも感染の原因となった異物や壊死組織を取り除くことに重きを置いて下さいね。
私は歯科医師ですが、口腔外科を専攻していたこともあって口腔粘膜の創傷治癒だけでなく、外傷や手術創などの皮膚の創傷治癒についても色々と経験してきました。手術後の皮膚の縫合創においても消毒薬は一切使用せず、生理食塩水などで洗浄するのみでした。
日々の臨床においても、抜歯後や小手術後の口腔粘膜に対して一切消毒薬は使用せず、何もしないか、たまに水か生理食塩水で洗浄するのみです!術後の含嗽剤(うがい薬)についても患者さんが希望した場合でも「水でうがいしておけばいいですから」と殆ど処方しません。そんなの使用しても有効どころか創傷治癒の妨げになるだけですから…。
★では実際に傷をキレイに治すにはどのようにしたら良いのでしょうか?
ここからは、糖質制限でも有名な湿潤療法の第一人者である、「傷の治療センター」のセンター長を務める夏井 睦先生の書籍(これからの創傷治癒)の中から抜粋&引用させて頂きます。
主に今までの(皮膚)外傷においての治療は…
● 創は乾かすと治る。
● 創はガーゼで覆う。
● 創は(特に縫合創)は濡らしてはいけない。
という考えのもとに行われてきました。
ところがこれらはすべて間違いであり、
○ 創は乾かすと治らない。
○ 消毒しても化膿は防げない。
○ 皮膚欠損創をガーゼで覆ってはいけない。
○ 創はよく洗った方がよい。(しかも滅菌水、生理食塩水でなく水道水で良い)
という考え方が正しいのです。
ポイントは「傷を消毒しないで、よく洗って乾燥を防ぎ、ガーゼを当てない。」ということが今の正しい皮膚外傷の治療法なのです。もちろん普通の絆創膏もガーゼを当てるのと同じようなものです。
口の中の傷が皮膚の傷よりも早く治ることは昔から知られていることであり、歯科医師である私は日々の診療で実感していることなのです。これは傷が湿潤環境にあるためです。
そもそも創面を乾燥させると、傷が治るために働く表皮細胞は死んでしまい、上手く遊走できなくなります。このように細胞が生きていくためには適度な湿潤環境が必要なのです。
生体に損傷が加わると、組織の修復に必要な様々な細胞が局所に集められ、組織の修復や再生が行われます。そのときサイトカインの一種である細胞成長因子(創傷治癒因子)が重要な役割を果たします。
よく擦り傷のあとに、傷面がジクジクしてくることがありますが、このジクジクは感染(化膿)した状態ではなく、このジクジクの中に傷を早く治してくれる細胞成長因子が豊富に含まれているのです。
熱傷の時にできる水泡を破らないでおく方が破った場合よりも早く治ることは、ずっと昔から報告されていますが、これは水泡内液が細胞成長因子を含む浸出液で満たされているためであり、創面が湿潤状態に保たれているからです。
大切なのは創面を乾かないようにして密封することで、この細胞成長因子を創面に保持して、創傷治癒を早めてあげることなのです。
介護施設、在宅医療の現場で何年も前から行われている褥創(床ずれ)に対する「ラップ療法」もこの考えに基づいています。
実際にはどんな治療が行われるかというと…
創面を(密封するように)被うために、「創傷被覆材」を使います。
創傷被覆材の種類には、以下のものがあります。
1、ハイドロコロイド ドレッシング材(商品名:デュオアクティブ、アブソキュアウンドなど)
2、アルギン酸塩被覆材(商品名:カルトスタット)
3、ポリウレタン系 ドレッシング材(商品名:テガダーム、ハイドロサイトなど)
4、ハイドロジェル ドレッシング材(商品名:ニュージェル)
5、ハイドロポリマー など
これらは一般の薬局では売っていないことが多く(薬局で注文する又はネットにて購入可能)、しかもやや高価であるため安易に入手できませんが、市販のもので代用するのならば、「キズパワーパッド」や「ネクスケア」などのハイドロコロイド絆創膏が良いと思います。
またコンビニや薬局、スポーツ用品店などで販売されている「マメ・靴ズレ用」の商品の中に、上記のハイドロコロイドやアルギン酸タイプの創傷被覆材があり、これを自己責任の範囲内で「創傷の治療」に代用することも可能です。
これらの被覆材を創の外縁よりも数センチ程大きめにカットし(絆創膏タイプなら傷にあったサイズを選択)、しっかり密封できるように直接貼り付けて、そのまま一週間ほど剥がさずに様子を見ます。(ただし周囲の皮膚がトビヒになったりアセモを作ったりするようならば、一日一回は被覆材を剥がして周囲の皮膚をキレイにしてから再度貼るようにしてください。また被覆材が破れて封鎖性がなくなったり、浸出液が漏れて異臭を発するようなら、そのつど交換が必要です。)
特に問題なく一週間程経過したら再度被覆材の交換をしますが、その時にはすでに傷がキレイに治りつつあるのを確認できるでしょう。
皆さんも創傷治癒に対して正しい知識を身につけるようにして下さいね。
参考著書:「これからの創傷治癒 夏井 睦」
講演会やその他の依頼については、メールで受け付けております。
junkuno_7575@yahoo.co.jp





