『GI値が低い果物に多く含まれる果糖の安全性について』 | 久野 淳(くのじゅん)のブログ 歯科医師 栄養指導 栄養療法 オーソモレキュラー 糖質コントロール 食育 食の安全 栄養マニア 料理教室

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街の歯医者さんをしながら複数のコメディカルの学校で講師をしたり、一般の方向けのセミナー活動をしています。栄養療法を日々の臨床に取り入れ、自身もゆるい糖質制限をしながら食育、食の安全に取り組んでいます。


天然の甘味で食後血糖値を上げない成分として注目されてきたのが果物に多くふくまれる「果糖」です。前回の投稿にて記載した果物のGIを見てみると、ほとんどが40未満と低いものが多いです。

吸収されてすぐ血中に移行するブドウ糖に対し、果糖はほとんどが肝臓で代謝されます。そのため甘いものが欲しいとき、果糖を中心にとれば血糖値は上がらず、肥満を防げるはずと考えられていました。そのため糖尿病患者を中心に、果糖を主成分にした健康食品も人気を集めていました。


ところが…

実はこの果糖というもの、摂り過ぎるとリスクがあることがわかってきました。




血液中の糖は、エネルギーとして使われる一方、体内のタンパク質と結びついてAGEs(終末糖化産物)を作り出し、毛細血管を傷つけるなど“毒性”を持つことがわかってきたのです。果糖は体内のタンパク質と結びつく力が理論上、ブドウ糖の 100であることがわかってきたのです。

さらに、下記の引用画像の表のように果糖の多い飲み物とブドウ糖だけの飲み物での比較試験で、果糖のほうが内臓脂肪を増やすことも確認されました。
(データ:Stanhope KL et al. JClin Invest119:1322-1334より)





被験者を2群に分け、一方はエネルギー比25%の高果糖飲料を、もう一方はブドウ糖だけを使用した飲料を10週間飲み続けてもらった。皮下脂肪、体脂肪、総脂肪の変化を分析したところ、果糖群で明らかに内臓脂肪、総脂肪が増加した(データ:Stanhope KL et al. JClin Invest119:1322-1334)。


これらの実験結果が示すように、ここ数年の間に果糖のデメリットが解明されてきたのです。

まとめると

1.果糖は、ブドウ糖よりタンパク質と約100倍結合しやすく、血液中に存在するとAGEs(終末糖化タンパク)を作り出す。
→メタボリックシンドロームの悪化、細胞や組織の老化につながる。

2.そのため人の体は、果糖を肝臓で分解するようになった。
→果糖を摂っても食後血糖値が上がらないのは、“毒性”から身を守るためだったという専門家の説もある。

3.果糖の摂取量が増えると、脂質代謝に異常をきたす。
→果糖の摂り過ぎで中性脂肪が増え肥満や脂肪肝になる。むしろブドウ糖より太りやすいのが果糖なのである。

果糖がいくら血糖値を上げにくいといっても、果物の糖質は果糖以外にも
ブドショ糖糖アルコールなどがあり、実際に柑橘系のデコポンなどを食べると血糖値の上昇度はパンと変わらないという報告もあり、さらにバナナなどはデンプンを多く含んでいるので、食べると血糖値が急上昇します。このようにすべての果物が低GIという訳ではないのです。

「血糖値が上がりにくいので、糖尿病患者は果物を食べても大丈夫」とか「生の果物は健康に良いのでいくら食べてもいい」とか「朝一番の果物は健康に良い」などと言われていますが、やはり空腹時の摂取の仕方やその摂取量については十分に気をつけなければいけないと思います。

美容と健康のために良かれと毎日食べている果物が、思わぬ老化と肥満の原因になっている可能性もありますよ!皆さんも果物の摂り過ぎには十分注意してくださいね!!

※前回と投稿の「GI値の低い食品について」の表の果物のアボカドパパイヤについては、糖質が極端に低く、良質な脂質やビタミン、ミネラルが豊富なので果糖を多く含む訳ではないので例外と考えて下さい!


参考資料(画像&投稿文の引用)「日経ウーマンオンライン」より