聞こえないパフォーマー・もりおか見帆

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こんにちは、

聞こえないパフォーマーのもりおか見帆です。

 

 

 

先日、東京藝術劇場で上演された

舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」の注目作、

 

Shakespeare's Wild Sisters Group × 庭劇団ペニノ

『誠實浴池 せいじつよくじょう』

 

を観劇してきました。

 

 

リンクはこちらから👇

Shakespeare's Wild Sisters Group × 庭劇団ペニノ『誠實浴池』

 

 

 

 


今回は、久しぶりに情報保障としての
「字幕モニターの品質をチェックする」
という大切な目的も兼ねての観劇でした。





■生と死、人間の欲望が渦巻く、美しくも奇妙な物語

 

本作は、

川端康成の小説『眠れる美女』を
下敷きにした、日台共同制作の作品。

物語の舞台は、
戦争で命を落とした男たちが立ち寄る、
台湾の海辺にある不思議な浴場。

そこでは、
生前の行いが自らの身に返り、
人間の根源的な欲望が満たされていく…。

まるでこの世ならざる
地獄を覗き見るような、

美しくも摩訶不思議な世界観に、
終始引き込まれました。



■多言語上演の字幕と、情報保障のこれから

 

本作は日台共同制作のため、舞台上部には
常に「中国語・英語・日本語」の3言語字幕 
表示されていました。

これは多言語上演を成立させるための字幕で、
演者の動きと同じ視界に収まるため、


視線移動の負担が少なく、
物語を追いやすかったです。



その上で、手元のタブレット では、

聴覚に障害のある方向けの情報保障 
提供されていました。


タブレットは、
遮光フィルムが取り付けられ
光が客席に漏れないよう配慮されています。


ダークモードの画面に、横書きの白文字で
セリフが表示されていました。


舞台上の字幕にはない、

話者(女1、男2など)の名前 や、
「虫の音」「楽器の音色」といった

細やかな音声情報も文字で補完されていました。





ここで、
情報保障の「見やすさ」について
少し感じたことを共有させてください。





今回は、登場人物が多く、
話者が「女1、男1」のように 記号的 だったため、


セリフにある話者の文字の色

人物を区別する工夫 がされていました。

皆さんは、文字色と背景色、
どちらが見やすいと感じますか?





【文字色で区別するパターン】

   
女1  女2  女3  女4
  

   男1  男2  男3  男4


【背景色で区別するパターン】

   
女1  女2  女3  女4
 

   男1  男2  男3  男4






鑑賞者によっては、
話者を識別する時に、

 

脳が記憶している

「数字」「色」を 同時に認識する ため、
脳が少し混乱してしまうことがあります。



そのため、

個人的には文字色を変えるよりも

 

「背景色」

人物ごとに変える方が、


誰のセリフかをより直感的に
識別しやすいのではないかと感じました。



もちろん、

見やすさの感じ方は人それぞれですが、


こうした試行錯誤を重ねていくことが
とても重要だと感じます。

 



次々と現れては消える情報に対して、
瞬時に分かりやすさを追求する字幕制作は、
大変な労力を要する作業です。


そのクオリティを維持・向上させていくためには、
今後もこうした 
モニターチェック などを通じた


作り手受け手 の継続的な対話 
不可欠だと改めて感じました。



今回の観劇は、
言語の壁や聴覚の障害を超えて、


より多くの人が舞台芸術を楽しむための
大きな一歩となる、貴重な体験でした。