今回は中村由雄に嫁いだ妻タソさんのお話を書きます。 タソは青森でも有名な 津軽塗りの老舗大沢家に生まれました。沢山の使用人が住み込み津軽塗を作っていました。20人近い大世帯でした。
津軽塗りは 青森の名産品です。タソは女ばかり5人のきょうだいの長女でしたが 写真を見るとタソが8歳くらいの頃にはお姉さんもいたようです。このことは淳子も初めて知った。写真の裏側に書いてあった。
その後の写真には写っていないからやはり病で亡くなったのでしょうね。 大沢家には男の子がいませんでした。タソの母親も女きょうだいばかりだったのでお婿さんを跡継ぎとして迎えたのでした。あなた方にとって曾祖父鉄三郎は秋田から婿に入ったのでした。
曾祖父の家柄は秋田でも裕福な家だったようです。婿に入ってから修業をして立派な津軽塗の跡継ぎになった人で鉄三郎のおじさんは津軽藩主の指南役だったそうです。武士の家系だったそうです。鉄三郎はきりりとした顔立ちです。タソは母親似でした。おきみさんは父親似です。
大沢家5人の娘たちにはそれぞれ付き人がいて、何不自由ない幸せな毎日を送っておりました。5人娘の中でおきみさんは4女でした。子供の頃からじゃじゃ馬で父親は器用なおきみさんが男だったらといつも言っていたそうです。
父親の鉄三郎が 芸者遊びをしてると、その置屋に行って父親の下駄とか 傘を持って帰ったという話は有名だそうです。やはり子供心から許せなかったのでしょうね。らしいよね。
ところが突然そんな幸せな大沢家にとって不幸なことが起こりました。それはタソが14歳 で一番下の妹はまだ幼く3歳の頃だった。
タソの母親も由雄の両親を襲ったスペイン風邪で亡くなったのです。タソは母親代わりになり懸命に下の妹たちの面倒を見ました。でもお手伝いさんがいたので なんとか頑張ることができたのです。
鉄三郎は子供たちの為に後添えを迎えました。何と後添えに男の子が生まれたのです。鉄雄と名付けました。大沢家にもようやく跡継ぎが出来たのです。ところが3年後働き頭の父、鉄三郎が同じスペイン風邪でこの世を去ったことで、大沢一家の苦難が始まった。
残されたのは子供6人と後妻だけ。老舗には父鉄三郎の弟も一緒に働いていました。タソの叔父になりますが周りの人間はその叔父とタソを結婚させようとしたのです。タソはそれが嫌で一人函館に逃げた。
しばらくして帰ってくると下の妹たちはそれぞれ秋田の親戚に預けられていたのでびっくりして泣いたそうです
。妹たちは預けられた親戚で酷い扱いで一番下の妹はおしんの様な生活が長かったそうです。血のつながった親戚は優しくても他人の妻や夫達に冷たくされた話を東京の叔母たちは後年淳子に何度も話してくれた。
話は戻りますが大沢の叔父たちは突然、鉄雄は鉄三郎の子ではないと言い出したのです。周りは後妻の子供に跡を継がせたくないため、何と親子を追い出したのです。
酷い話です。産み月より早く生まれたからだとか言われ、家から追い出された話は本当に可哀想過ぎます。
鉄雄一家とは、中村に嫁いでからもタソは母違いの弟として長くお付き合いをしました。間違いなく鉄三郎の子供だとタソは思っていた。何故なら鉄雄はタソの長男、了吾とそっくりでした。鉄雄は中村の家に良く来ていたので淳子も懐いでいたおじさんでした。母を姉さんと呼んでいた。
鉄雄の母はその後再婚しました。鉄雄は青年になって満州鉄道に勤務し帰国後も働いていた。淳子は鉄雄おじさんが大好きでした。家を追い出されなければ立派な津軽塗の跡継ぎになっていたでしょうね。これも悲しい定めですね。
両親が居ない老舗大沢家はその叔父達に乗っ取られてしまいました。老舗がその後どうなったか知る由もないがもっと聞いておけばよかったと思います。少し残念です。
ただタソは両親が眠るお墓を長女として守っておりました。 タソは子供たちを連れて お盆には大沢家のお墓参りに行っていました。夏休みのお盆に行くので親戚のない淳子はそれがとても楽しみでした。何故なら必ずバスに乗って行くからでした。大沢家のお墓はお寺の一角にあった。
タソは次男の雄三に苗字を中村から大沢にしてお墓を将来守ってほしかったのですが、雄三は厭だと言い大沢家は絶えたのです。それでも雄三はお墓だけはしっかり守ってくれました。
タソが亡くなって49日に合わせるように大沢家のお墓から中村家のお墓に遷しました。大沢家のお墓は無くなりましたが今はタソと一緒に大沢家のご先祖様が中村家のお墓に入っています。
実は余談ですがタソは大沢家を守るため、由雄が婿になるならと結婚を承知したそうですが由雄自身もお墓を守る立場だったので、タソは由雄に騙されたといつも言っておりました。タソは大沢家のことがいつも頭から離れなかったそうですが、次男の雄三は母タソの思いを全うしてくれたのでした。
冊子には、まだまだ続きはあります。タソの妹たちその後のことや、中村家から淳子が嫁ぐまでの事、淳子の兄姉弟の事など書いています。ここではこれでお終いにします。
ご覧いただいた皆様には心からお礼申し上げます。
