私とプロレス 原田イチボさんの場合「第2回 幸福感とザラザラ感」 | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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有名無名問わず、さまざまな分野から私、ジャスト日本が「この人の話を聞きたい」と強く思う個人的に気になるプロレス好きの方に、プロレスをテーマに色々とお聞きするインタビュー企画「私とプロレス」。

 

 

 

 

 

 

今回のゲストは、ライターの原田イチボさんです。





(画像は本人提供です) 


原田イチボ

1990年生まれ、千葉県出身。編集プロダクション「HEW」所属のライター。

芸能人やクリエイターなどへのインタビューを中心に、幅広い媒体で執筆を担当。女子プロレスラーを招いたトークイベントのMCも手掛けている。



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インタビューの一部などを担当した東京女子プロレスの公式ガイドブック『まるっとTJPW!! 東京女子プロレス OFFICIAL “FUN” BOOK 2023』(玄光社)が発売中です。今年3月に出版された書籍ですが、今の時点ですでに「あの選手のこの発言がここに繋がってくるんだ!」と感じる出来事がいろいろ起きているので、どうせ読むなら早いほうがいいはず(笑)。ぜひお手にとってください。



 

プロレスを好きになるきっかけ、初めてのプロレス観戦、好きなプロレスラー、好きなプロレス団体、ライターとして大事にされていること、好きな名勝負…。さまざまなテーマでお話をお伺いしました。


是非ご覧ください!






私とプロレス 原田イチボさんの場合「第2回 幸福感とザラザラ感」


 


 船木誠勝の凄さと魅力とは?

 
──第1回では伊藤麻希選手、白川未奈選手、NOSAWA論外さんと原田さんの好きなプロレスラーについてお伺いしました。今回は原田さんが好きなプロレスラー・船木誠勝選手の凄さと魅力について語っていただいてよろしいですか。

原田さん 私は昔の船木さんを知っているわけではないので、あまり詳しいことは言えないんですけど、「何が起きるのか分からない」という緊張感やザラザラ感が漂う試合をする選手が好きなんです。船木さんには、そういう印象があって。

──確かに船木選手の試合は先の展開が読めないですよね。

原田さん そうですね。試合で目に指を入れたりとか。

──船木選手は真面目な方なんですけど、もう一方で狂気性を持っている方でもあるんです。

原田さん 確かに。あと鈴木秀樹選手にも同じイメージを持っています。大日本プロレスに上がっている頃の鈴木選手が特に好きで、私はまだ初心者で、関節技とかあまりよく分かってなかったんですけど、それでも面白かったんです。「なんか分からないけど、異様にヒリヒリしてる」という理由で鈴木選手の試合を見続けてました。



ザラザラしたプロレスが見れる選手や団体を常に探している


──船木選手と鈴木選手はプロレス界でもトップクラスの狂気性がありますよね。

原田さん あと私は足の長いプロレスラーが好きなんですよ。足が長いのはエースの資質だと考えていて、実際に足の長い新人レスラーがいると「未来のエース候補だな」と勝手に思ってます(笑)。船木選手も鈴木選手も脚が長い!鈴木選手に関しては名勝負となると関本大介戦なんですけど、強烈に覚えているのが、2018年9月16日・横浜文化体育館で行われた中之上靖文戦ですね。

──かつて鈴木選手がタッグマッチで一方的にふっかけて因縁が生まれた中之上選手との試合ですか!

原田さん あの試合が鈴木選手が圧倒的に強くて、最後は顔面を蹴り上げて試合が終わったんですよ。それで試合後に鈴木選手がマイクで「努力をした人が報われるんじゃなくて、報われたヤツは努力している。俺の方が努力しているんだよ。報われたから」って言うんですよ。なんて嫌なヤツなんだろうと(笑)。そこがたまらなく好きです!

──ハハハ(笑)。鈴木選手らしい発言ですね!

原田さん みんながハッピーになるプロレスもいいんですけど、見ていてモヤモヤするプロレスも好きなんですよ。だからいびつだったり、ザラザラしたプロレスが見れる選手や団体は常に探している感じですね。

──なかなか凄いマニアックですね!

原田さん 先日、アクトレスガールズを見に行ったのですが、意外と朝陽選手は船木選手や鈴木選手に近いザラザラ感がある選手なんじゃないかと感じました。彼女が更新したブログが最高で、なかなかぶっ飛んだことを書いているんです(笑)。

──そうなんですね!

原田さん 私の中では船木誠勝、鈴木秀樹、青木真也、朝陽が波風を立たせることをいとわない選手です(笑)。

──強烈な4人(笑)。鈴木選手と青木選手は意図的にやってますけど、一番自覚がないのは船木選手でしょうね。

原田さん 朝陽選手も船木選手に近い感覚かなと。だから彼女に期待しています!


東京女子プロレスの凄さと魅力とは?


──ありがとうございます。続きまして原田さんの好きなプロレス団体・東京女子プロレスの凄さと魅力についてお聞かせください。

原田さん 東京女子は見ていて幸せになるし、心が暖かくなるんですよ。

──東京女子は幸福感があって、ザラザラ感とは真逆ですよね!

原田さん はい(笑)。もう皆さん頑張っていて仲がよくて、互いに高め合っていくという感じがいいんですよ。東京女子はアイドル好きな人は絶対はまりやすい団体だと思います。私は女の子同士がギスギスしていると悲しい気持ちになるので(笑)、みんなニコニコして闘っているところは素晴らしいなと感じてますよ。

──東京女子は女子プロレス団体では珍しい男子プロレス(DDTグループ)から生まれた団体なんですよね。

原田さん 東京女子を解説する方も「動きが女子プロレスっぽくないよね」みたいなふうに言う人もいますね。

──その通りですね。

原田さん あと東京女子ってアイドルとかグラドルとか全然プロレス知らないで入ってくる選手が多いんですよ。他の団体だったら絶対デビューできないレベルの人が出ていて。

──確かにそうですね。とは言いつつも凄い選手がデビューしたりするのも東京女子なんですよね。

原田さん 山下実優選手、坂崎ユカ選手、中島翔子選手といったトップ選手がしっかりとしている一方で、プロレスを全然知らなくて興味もないレベルの人がデビューできるくらいスタートラインが低い。「プロレスって何?」という感じだった女の子たちが少しずつプロレスを好きになって成長していく過程を見守ることができるのも東京女子の魅力ですね。

──同感です!

原田さん 特に初期メンバーの皆さんはアイドルや芸能といった夢に敗れて、プロレスの世界に入ってきた女の子が多くて、第二の人生をプロレスに賭けているところが共感しましたね。


ハードヒットの凄さと魅力とは?



──ありがとうございます。ここで原田さんの好きな団体・ハードヒットの凄さと魅力について教えてください。

原田さん ハードヒットは、ザラザラしている感じが好きです(笑)。


──やっぱりそうですか(笑)。

原田さん 格闘技に近いスタイルで、試合が30秒で終わることもありますし、目が離せないですよ。でもハードヒットを最初に見に行った時は何が起きているのか全然理解できなくて、選手がリング上でゴロゴロ転がっていて、凄いことをやっているのは伝わるのですけど、この緊張感が面白くてなんとか理解したい気持ちになったんです。今はお休みしていますが、柔術とか習って寝技を知るようになって、何回かハードヒットを行くとだんだん理解できるようになりました。

──えらいですね!ハードヒットを理解するために柔術をやるとか。

原田さん 私はガリ勉なところがあるのかも(笑)。

──ハードヒットは今は独立しましたが、元々はDDTの一ブランドでしたね。

原田さん そうですね。ハードヒットは試合形式とか変わったものが多いんですよ。あと2022年の川崎球場(現・富士通スタジアム)大会で天龍源一郎さんがオープンカーに乗って来場されたんですよ。みんなが車に群がる中でにこやかに手を振っているのが最高でした(笑)。


──ちなみにハードヒット VS LIDET UWFの対抗戦はご覧になられましたか?

 

原田さん 『LIDET UWF Ver.0』(2021年6月9日新宿フェイス/ハードヒット VS LIDET UWF全面対抗戦)は見に行きましたよ。あれは凄く好きでした。謎の迫力があってモヤモヤした気持ちで帰れてよかったです(笑)。

──ハハハ(笑)。佐藤光留選手がカズ・ハヤシ選手を秒殺したじゃないですか。あの試合はモヤモヤしましたか?

原田さん モヤモヤしました(笑)。

──和田拓也選手が松井大二郎選手を塩着けした「地獄の15分」はいかがでしたか?

原田さん あれは現場で「これまだ続くの?」と思いながら見てました(笑)。相手に見せ場を作らない感じがよかったです!


──そういえばハードヒットの佐藤光留選手、和田拓也選手、関根シュレック秀樹選手もザラザラしているプロレスラーですよね。

原田さん そうですね。シュレック選手は好きですよ。

──シュレック選手はUWFへの想いが誰よりも熱い人ですからね。

原田さん まだ遡って見てませんが、恐らくUWFを見たらめちゃめちゃ楽しんだろうなと思ったりしています。いずれ履修したいですね。

──シュレック選手が大学時代に入門を熱望していたUWFインターナショナルや佐藤選手のバックボーンであるパンクラスの試合とかがいいかもしれませんね。

原田さん ありがとうございます。


トークイベント『レッスルガールズブラボー!』


──原田さんは、気鋭の女子プロレスラーにこれまでとこれからを聞くトークイベント『レッスルガールズブラボー!』をやられていますが、こちらのイベント開催の経緯についてお聞きしてもよろしいですか?

原田さん ロフト周りでイベントをやってる大坪ケムタさんから「女子プロレスのイベントをやろうと思ってるんだけどMCやってみる?」というオファーがありまして、私はあまり話すのが得意じゃないんですけど、得意分野だけでやっていてもよくないし、苦手分野とちゃんと向き合おうと思ったので、やることにしました。

 

──ケムタさんもMCでいてくださっているので心強かったんじゃないですか。

原田さん そうですね。さすがに一人では無理ですよ(笑)。

──『レッスルガールズブラボー!』は何回くらい開催されたのですか?

原田さん 4回ですね。

──実際にイベントに登壇された感想はいかがでしたか?

原田さん 相当緊張しますね(笑)。原稿は後で修正したりどうにでもなりますけど、イベントは一発勝負ですから。

──私も東京や大阪でイベントに登壇しましたが、『レッスルガールズブラボー!』はプロレスラーがゲストですよね。ファンの皆さんはプロレスラーの声が聞きたいわけで、MCのさじ加減がものすごく難しいですね。

原田さん そうなんですよね。ファンの方からすると「知っていて当たり前」と思うことを私が知らなかったりすると冷めるのかなと思ったりしますし。だからイベントの2週間くらい前から調子が悪くなって、イベントが終わったら爆睡するんですよ(笑)。


「ジャストさん、ちょっと仕掛けてもいいですか?」


──お気持ちは分かります!イベントをやられて充実感はありますか?

原田さん SNSで「すごい面白かった」という反応をいただけると嬉しいですし、「やってよかったな」と思いますよ。ライターも厳しい時代なので公開インタビューのようなイベントができるようになっていくと将来のためになるのだと信じて頑張ってます。

──素晴らしいですね!

原田さん ちょっと話が変わりますが、ジャストさんも同じことを考えていると思うんですけど、インタビューの場で多少は仕掛けたいなみたいな気持ちがあるじゃないですか。

──確かにあります。

原田さん 相手のいうことを全部受けようと思いますけど、あまり相手の都合のいい感じになってしまってもそれはよくないじゃないですか。だから「こいつは受け止めるけど、何かの拍子に目に指を入れてきそう」という気配を出しておきたいなと(笑)。

──船木誠勝選手のような感じですね。

原田さん ジャストさん、ちょっと仕掛けていいですか? 逆に質問したいんですけど。

──どうぞ。なんでも受け止めますよ。

原田さん ジャストさん自身はこういう感じのプロレスのインタビューをやっていきたいなというのはありますか?

──プロレスラーのインタビューをやるときは生い立ちから現在まできちんとお聞きして、良くも悪くもその選手のレスラー人生が伝わるものにしたいというのはありますね。

原田さん なるほど。

──私がインタビューしているプロレスラーの皆さんは特に個性の強い方が多いんですよ。彼らの生き方に時系列で迫り、プロレスに対する想いはあの手この手で引き出して、文章にするときは考察も交えて綴りたいという感じですね。

原田さん プロレスと同じく、インタビューもまた「受け」が重要ですよね。でもこちらが全部受けすぎると、逆に相手を輝かせることができない。「じゃあ、どうするか?」というので、ジャストさんの場合はプロレスに関する深い知識と考察を武器に、「やられているコイツも決して弱いわけじゃないぞ」という雰囲気を醸し出して、名試合に持っていくのでしょうね。プロインタビュアーの吉田豪さんも言っていることですが、プロレスとインタビューは通じるものがあるので、仕事で悩んだときは試合を見るようにしています。


(第2回終了)