私とプロレス 辻稔さんの場合「第3回(最終回)  プロレスへの愛」 | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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有名無名問わず、さまざまな分野から私、ジャスト日本が「この人の話を聞きたい」と強く思う個人的に気になるプロレス好きの方に、プロレスをテーマに色々とお聞きするインタビュー企画「私とプロレス」。

 

 

 

今回は人気バラエティー番組『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』で活躍されているTVカメラマン・辻稔さんにインタビューさせていただきました!



辻稔(つじみのる)1967年静岡県出身。(株)ニューテレス、(株)スウィッシュ・ジャパンなどのテレビ番組制作技術会社でテレビカメラマンとして活躍した後、2005年にフリーへ。チーフカメラマンとして、『アメトーーク』、『ロンドンハーツ』を手掛けている。またかつて 『めちゃ2イケてるッ!』、『やべっちF.C.』『内村プロデュース』といった人気番組のカメラマンとして活躍。現在は『アメトーーク』、『ロンドンハーツ』以外には      

音楽バンド『T-SQUARE』のライブ映像、撮影&編集、『倉庫deライヴ』(配信番組 AMDチャンネル)のカメラマンを担当している。ナインティナインの岡村隆史さんから「伝説のカメラマン」と呼ばれているバラエティー番組の生き証人のひとり。

   




(写真は本人提供)



好きなプロレスラーについて、好きなプロレス名勝負三選、愛するプロレステーマ曲の話、『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』、『めちゃイケ』や『リングの魂』での秘蔵エピソード、そしてZERO1と大谷晋二郎選手への熱き思い…。  


第1回「伝説のカメラマンは猪木信者」 


第2回「プロレステーマ曲への愛」 


 


実に3時間越えの取材となった今回はプロレスファンだけではなくお笑いファンも興味津々の濃厚な内容となりました。


今回が最終回です!

是非、ご覧ください!

  

私とプロレス 辻稔さんの場合「第3回(最終回) プロレスへの愛」





大谷晋二郎選手への想い

 


ーーもう一つコブラさんから質問をお預かりしています。「大谷晋二郎選手へのエールと想いを聞かせてください」とのことでした。


辻さん まず僕とZERO1さんが繋がったきっかけは、『アメトーーク!』のプロレス芸人の回で、大谷選手に密着させていただいたロケがありまして、そこから仲良くさせていただいています。


ーー2010年1月7日に放送された『アメトーーク!SP』内で『俺たちのゴールデンプロレス』がありまして、大谷選手が栃木県那須郡にある馬頭西小学校で「イジメ撲滅」の講演会をされて、仲良くなった生徒の家にホームステイして、翌日に学校の校庭でZERO1が興行を行い、試合後の大谷選手の熱いコメントが感動を呼んだ『アメトーーク!』屈指の神回でした。


辻さん 『アメトーーク!』プロデューサーの加地くんは、元々『ワールドプロレスリング』のディレクターだったんです。


ーー加地さんが絡んでいた頃の『ワールドプロレスリング』は、基本的には選手の入場シーンはカットしなかったんですよ。入場シーンをカットせずに流すように心掛けていたという内容を『ゴング0号』(2014年発売/アイビーレコード)のインタビューで加地さんは語ってましたよ。


辻さん その通りです!さすが加地くんらしいです。プロレスの醍醐味を当然、分かってますから。大谷選手と加地くんが同期のように仲が良かったんですよね。


ーー二人は「晋ちゃん」「倫三ちゃん」と呼び合う仲だそうですね。


辻さん 大谷選手の密着ロケ前に加地くんから「ZERO1という団体があって頑張っているので、密着します。辻さん、大谷晋二郎と仲良くなるのはたぶん2秒ですよ(笑)」と言われたんです。実際はもうちょっとかかりましたけど、加地くんの言う通り、そのロケ後にはすっかり大谷選手と打ち解けてましたね。


ーー確か大谷選手のロケは加地さんが現場に同行していて、大谷選手と一緒にホームステイ先に泊っているんですよね。大谷選手が「子どもたちに対してこうしてほしいという注文があれば、何でも言ってください」と言うと、加地さんが「いつも通りにやってくれ。いつも通りやっている姿をそのまま撮るから」とリクエストしたという話を聞いたことがあります。本当にあの大谷選手の回は、VTRとしても完璧で、バラエティー番組なのに最後に泣けるという素晴らしい作品でしたよ。


辻さん ありがとうございます。「子ども達に夢を…」というプロレスの真髄みたいなものがあったのかなと思います。


ーーこの企画がゴールデンタイムで放映された『アメトーーク』の特番で取り上げられたのはZERO1にとって、凄く大きなプロモーションになったと思いますよ。


辻さん 『アメトーーク!』がきっかけで、ZERO1さんにも名前を知ってもらえるようになって、「あの日のロケのおかげで、今の僕らがあります」と未だに大谷選手は言ってくれるんです。加地くんはプロレスを愛してますけど、本当に多忙なので、近年はなかなか会場に足を運ぶ機会が少なくて、特に『アメトーーク!』の代表というわけではないのですが、プロレスファンの僕が、ZERO1の会場に何度も行くようになるんです。なぜずっとZERO1を観に行くのかというと、それは大谷選手に猪木さんの影を感じているからなんです。


ーーやっぱりそこでしたか!大谷選手はファン時代は猪木信者ですから。


辻さん 本当に戦う表情が猪木さんにそっくりなんですよ。今のプロレス界を見渡しても、猪木さんを感じるのは大谷選手しか見当たりません。実はあの怪我をした試合も途中までは、大谷選手がアントニオ猪木にしか見えなくて、「この流れはいい感じだな」と思っていたところにと、あの事故が起こってしまって…。


ーー大谷選手は2022年4月10日のZERO1両国国技館大会で試合中の事故で救急搬送され、頚髄損傷と診断されました。大谷選手は懸命に治療とリハビリに頑張っていますよね。


辻さん そうですね。ただ「何度負けても立ち上がる」のが大谷選手の信条なので、彼が頑張って復活するのを我々は信じて待つしかないですよね。これがきっかけでプロレスから引いてしまうというのはあり得ないので。あの試合後の『アメトーーク!』の放送では、『アメトーークCLUB』の告知BGMとして、大谷選手のテーマ曲『Believe S-Road』が何週か使われました。『アメトーークCLUB』内でも大谷選手の言う「あの日のロケ」の映像が見れるようになってます。もちろん「エールを込めて」です。加地くん率いる我々『アメトーーク!』スタッフは「信じて待つ!」。それしかありません。頑張ってもらいたいです。


ーーその想いはプロレスファンの皆さんには伝わっていると思いますよ。


辻さん 放送後、Twitterを見ましたが、ありがたいことにプロレスファンには届いていましたね。



辻さんが選ぶプロレス名勝負とは?


 

ーーでは、辻さんが選ぶプロレス名勝負を3つあげてください。


辻さん 好きな名勝負が多いんですよ。だから5試合を選んでもよろしいですか?



ーーどうぞ。それは大歓迎です。好きなプロレス名勝負5試合を辻さんに選んでいただく形に変更します。


辻さん ありがとうございます。第5位は、髙田延彦VS北尾光司(1992年10月23日・UWFインターナショナル日本武道館大会)です。あれは衝撃でした。この試合がきっかけで僕は髙田さんのファンになりました。


ーー元大相撲横綱で、最強幻想のようなものがあった北尾さんを髙田さんが右ハイキックでKOしたのは確かに衝撃的でしたね。実は髙田VS北尾は時間無制限1本勝負だったのが、当日に3分5Rに変更になったんですよ。それでファンは引き分けだろうなと予想していて、あの結末だったで、会場は熱狂したのかなと思います。


辻さん みんな「髙田、負けたらどうするんだ!」と思っていた中での、あの勝ち方ですから。


ーーでは第4位を発表していただいてもよろしいですか。


辻さん 第4位は桜庭和志VSホイス・グレイシー(2000年5月1日・PRIDE東京ドーム大会)です。僕は当日仕事をしていたので、スカパーのPPVで録画して見ましたよ。あれはよかったです。夜中に大興奮したのを覚えています!


ーー『PRIDE GP2000』準々決勝の桜庭VSホイスと『PRIDE GP2000』決勝戦のマーク・コールマンVSイゴール・ボブチャンチンは、当日深夜に放送された『プロ野球ニュース』で一部映像で伝えてくれたんですよ。


辻さん そうなんですね!


ーーこの日の興行は平日月曜日に開催されて、17時に興行が始まって、全試合が終了したのが23時40分というロングランだったんですよ。桜庭VSホイスを実況したフジテレビの三宅正治アナウンサーは、『プロ野球ニュース』のキャスターだったんですよ。『プロ野球ニュース』の本番があるので、『PRIDE GP2000』準決勝の桜庭和志VSイゴール・ボブチャンチンまで実況してから、急いでフジテレビのスタジオに向かったんですよ。


辻さん あれも凄い試合でした。そして面白い試合でした。ちなみに第3位もPRIDEで、桜庭和志VSホイラー・グレイシー(1999年11月21日・PRIDE有明コロシアム)    です。あれはたまらなかった。桜庭選手がホイラーにチキンウイング・アームロックを極めた時は「折れ!」って叫んでましたよ。


ーー桜庭選手がホイラーの腕を極めていて、逃れられないにも関わらず、ホイラーがギブアップしないじゃないですか。レフェリーストップがかかって桜庭選手がグレイシー越えを果たすのですが、試合後にセコンドにいたヒクソン・グレイシーに挑戦状を叩きつけるじゃないですか。


辻さん 「お兄さん!次は僕と勝負してください!!」とマイクで言ったやつですよね。あの試合は桜庭さんの試合の中で一番好きな試合です。


ーーありがとうございます。では第2位をよろしくお願いいたします。


辻さん 第2位は新日本 vs UWF 5 vs 5イリミネーションマッチ・アントニオ猪木&藤波辰巳&木村健吾&上田馬之助&星野勘太郎VS前田日明&藤原喜明&木戸修&高田伸彦&山崎一夫(1986年3月26日・新日本プロレス東京体育館大会)です。


ーーこれが辻さんが先ほどおっしゃった前田さんと上田さんの絡みですね。


辻さん そうですね。猪木さんが最後に、一人になって、UWFが髙田さんと木戸さん2人が残って、1VS2になるんですが、その時の「猪木、イケるぞ!! もうひと息!!」という会場の一体感がありました。今回の取材前にその試合を見直したんですけど、お客さんが「うぉー!」って異常に興奮していて、今すぐあそこに行きたいなと思いました(笑)。では、第1位はなんだと思いますか?


ーー僕はアントニオ猪木VS藤波辰巳(1988年8月8日・新日本プロレス横浜文化体育館)だと思ったんですけど…。


辻さん 違うんです。猪木さんが色々な技を出すテクニック合戦のような試合より、まるで喧嘩みたいな試合が僕は好きだと言いましたが、第1位はアントニオ猪木VSブルーザー・ブロディ戦なのです。猪木VSブロディは何試合もやっていますが、どれも面白い。試合終盤に行くにつれて猪木さんが強いんですよ。お客さんの盛り上げとかも含めて全部の試合、猪木さんが実質、勝っていると僕は思うんです。


ーー猪木VSブロディは1985年4月18日・両国国技館大会の初対決から1986年9月16日・大阪城ホール大会までの1年5ヶ月の間に7回シングルマッチで対戦しています。結果は猪木さんの1勝2敗4引き分け。勝敗は共に反則負け、完全決着は1度もついていないんです。そして最後の一戦は60分時間切れで終わっています。


辻さん 当時の猪木さんは40歳を過ぎていて「猪木、もしかしたら負けちゃうかもしれない」という時期でハラハラさせるんですが、僕らのアントニオ猪木はそれを乗り越えていくんですよ。


ーー猪木VSブロディは猪木さんの引退特番で、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんが好きな名勝負としてあげてましたね。


辻さん 猪木VSブロディが好きだと人は少ないので、亮くんがそれを言っていたのは意外で嬉しいですね。猪木さんの名勝負といえば、藤波戦やビル・ロビンソン戦だという方が多いんですけど、僕はブロディ戦が好きなんです。あとプロレスラーの中で猪木VSブロディ戦が好きだと言っている人がいるんです。誰だか分かりますか?


ーー誰でしょうか。大谷さんですか?


辻さん ヒントは猪木さんの当時の付き人です。


ーー分かりました。蝶野正洋さんですね。


辻さん はい。蝶野さんがどこかの媒体のインタビューで言っていたのを覚えています。


ーー猪木VSブロディはものすごい心理戦なんですよ。東京体育館での試合だったと思うんですが、猪木さんがリング上で待っていても、ブロディが姿を現さないというシーンがあったんですよ。猪木さんはイライラしてきて、着ていたダウンを叩きつけて怒りを現して、「やってられない!」とリングを下りて帰ろうとした時に、ブロディが現れて、怒りの猪木さんがすぐに駆けつけて、ブロディを鉄拳制裁して、会場は「猪木、やれ!」と拳を突き上げて大歓声を起こるんですよ。


辻さん 猪木VS藤波、猪木VSロビンソンを否定するつもりは全くないんです。素晴らしい試合ですから。だけどこの2試合は僕は個人的にはやや刺激が足りないんです。


ーーレスリングに喧嘩ファイトという刺激が加わってこそ、猪木さんなんですね。


辻さん やっぱり「燃える闘魂」なんですよ、猪木さんは。



今後について



ーーありがとうございます。素晴らしい名勝負セレクトだったと思います。次の話題に移りますが、様々な現場で活躍されている辻さんの今後についてお聞かせください。


辻さん もうプロレスの試合をハンディカメラで撮るのはなかなか大変なので今の体力だとムズかしいかもしれませんよね(笑)。今年の7月で55歳になりますので、55歳の僕でできることを、色々とやってみたいですね。


ーーネット配信だとYouTubeだけではなく、ABEMA、NETFLIX、Amazon Primeとか色々とありますし、BSも最近は、BSよしもと、BS松竹東急、BSジャパネットといった新しい局も誕生しました。映像表現する媒体は年々増えてきていると思います。


辻さん それこそプロレス関連のYouTubeとかやってみたいですね。あの『リングの魂』が今の時代にあればきっと面白いでしょうね。あとはコブラさんやジャストさんのYouTubeとか(笑)。


ーーハハハ(笑)。あまりにも恐縮してしまいますよ(笑)。令和版『リングの魂』はみたいですね。あの番組は画期的でしたよね。


辻さん 今思えばとても画期的でした。『リングの魂』が始まった当初はレスラーたちとただ遊んでいるような番組だったんですけど、中盤から真面目にプロレスや格闘技を考える番組になりましたから。僕は途中から先輩に「お前、プロレス好きなんだからやれよ」と言われて担当するようになったんですよ。


ーー三沢光晴さんを呼んだ回もありましたよね。


辻さん ありましたね!みんなで三沢さんと記念撮影したんですよ。あれこそ画期的で、テレビ朝日に三沢さんが出ているんですよ。まだ全日本プロレス所属の時代でしたからね。


ーーそうです。全日本プロレス社長に就任した直後に三沢さんは『リングの魂』に出演されていますね。


辻さん 三冠ヘビー級王座の3本のベルトと共に記念撮影したのを覚えています。うれしかったなぁ…。


ーーちなみに南原さんと三沢さんの対談ですが、実際にカメラマンとして現場に立ち合われたと思いますが、いかがでしたか?


辻さん 三沢さんのUPを撮らせてもらったのですが、まさにドキュメンタリーで、サイズがどんどんUPになっていってしまいました(笑)。



辻さんにとってプロレスとは?



ーーそれでは最後の質問をさせていただきます。辻さんにとって、プロレスとは何ですか?


辻さん 『プロフェッショナル 仕事の流儀』みたいですね(笑)。ちょっと考えさせてください。うーん…。そうだなぁ…。プロレスは…僕たちに「勇気と夢を与えてくれるもの」ですね。TBSの『日曜劇場』で放送されるドラマ『半沢直樹』や『下町ロケット』を見た後って、「明日も頑張ろう!」って、思えるじゃないですか。あれはプロレスによく似ていると思うんです。プロレスを見てレスラーの姿に元気をもらって、明日も頑張ろうと。大谷晋二郎が負けても負けても立ち上がる姿を見て、明日も頑張ろうと僕らは思えるんですよ。プロレスの力は凄いです。


ーープロレスから勇気と夢をもらった我々が、リングで闘うレスラーを応援することで、今度はレスラーの方がエネルギーをもらって明日も頑張ろうと思うわけで、ファンと選手でプロレスを通じて相乗効果をしているんですよ。


辻さん 僕は「猪木さん、ありがとう!」「大谷選手、ありがとう!」しかないんですよ。だから大谷選手には「信じて、待ってるぞ!」と言うしかないんです。


ーーこれでインタビューは以上となります。本当に興味深い話を次々としてくださいまして本当にありがとうございました。辻さんの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。


辻さん こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


(「私とプロレス 辻稔さんの場合」完結/第3回終了)