恒例企画「プロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コ」シリーズ45回目です。このシリーズはライターの池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれていまして、池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事。つまり、このシリーズはサンプリングのサンプリング。私がおすすめプロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。
内容紹介
累計180万部超の大ヒット『燃えろ! 新日本プロレス』シリーズの人気連載を完全収録。
ブーム再燃の新日本プロレスのルーツや歴史、人物図、ファン待望の新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑まですべてを網羅!
目次
第1部 新日イズム
必殺技の権威/道場こそ新日本の矜持/大物外国人を呼べなかった大逆転発想/力道山が示した「3本の指」/金曜8時の黄金伝説/「立ち給え! 馬場君」猪木の挑戦状/他団体は叩き潰すのみ! /"神様"の遺産、ストロングスタイルとは何か?/異種格闘技戦は"殺し合い"! /ファンを捕える「一寸先はハプニング」/マイクアピールの魔力/強いレスラーは「極めっこ」から生まれる/ベルトの権威は、王者の実力が決める/IWGPの大いなる野望/ドラゴンの偉業、ジュニア黄金期の幕開け/WWFとの黄金の蜜月時代/ドーム興行、6万人の恍惚/入場テーマ曲の功罪/"鬼軍曹"流マッチメークの極意/「喧嘩マッチ」という思想/太鼓腹はレスラーにあらず! /悪道一筋! "成り上がり"ヒールの生き様/タブーを破った『ワールドリーグ戦』/開発途上国に蒔いた"プロレスの種"/噛みつかないのか! ?反骨のアンチヒーロー/最大の敵はタッグパートナー/現場監督・長州力の豪腕/"最高権威"コミッションをめぐる闘争/タイガーマスク誕生の必然/「一本勝負」という"パンドラの箱"/外国人レスラーを駆逐した「軍国闘争」/闘いの原風景、猪木の「ノーロープ願望」/老若男女のエンターテインメント/ドサ回りに島流し、海外武者修行の神髄/起死回生「ゲテモノ大作戦」/「世代闘争」という幻想/外国人レスラーが見たストロングスタイル/NWA王座復活、WCWとの外交戦術、MMAのルーツは、キック&空手の共同戦線/新日レスラーの「アメリカンスタイル」/オリジナル新必殺技の鮮烈! /「新日本ブーム」を牽引した"仕掛け"の極意/新日マットに受け継がれる「力道山イズム」/"戦争ギミック"を超えた闘いのリアリティ/時代を先取るシリーズ名/「名勝負数え唄」の絶頂期はいつか?/変幻自在なコラボレーション/"最強の女房役"坂口征二/日本発の本格タッグ、過激なるヤマハ魂! /プロレスラー、引き際の美学
第2部
特別収録 新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑(昭和編)
あとがき
内容(「BOOK」データベースより)
貴重な写真や資料も多数掲載、新日本の歴史、精神、神髄を知る完全読本!!特別収録・新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
流/智美
1957年11月16日生まれ、茨城県水戸市出身。一橋大学経済学部在学中、プロレス評論の草分け・田鶴浜弘に弟子入り。80年3月、大学卒業後にベースボール・マガジン社『プロレスアルバム』でフリーのプロレスライターとしてデビュー。プロレス関係のビデオ(DVD)監修、テレビ解説、ナビゲーター、プロレス漫画原作、トークショー司会などで活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
今回は2014年に集英社さんから発売されたプロレスライター流智美さんの「詳説 新日イズム 完全版 闘魂の遺伝子がここにある!」をご紹介します。
この本は、2011年から2014年にかけて集英社さんで発売されたDVDマガジン「燃えろ!新日本プロレス」に毎号同封されていた小冊子の中で連載されていた「新日イズム」というコラムをまとめたものです。
闘魂、ストロングスタイル、道場、異種格闘技戦、IWGP、喧嘩マッチ、世代闘争などありとあらゆるテーマから流さんが闘魂の遺伝子「新日イズム」を綴った一冊です。
なぜ、この本を取り上げたのか?
理由は三つあります。
一つ目は、この本の特別付録として昭和プロレステーマ曲研究家・コブラさんによる「新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑(昭和編)」が掲載されているからです。コブラさんには、当ブログで二度に渡り、テーマ曲対談でお世話になり、素晴らしい記事を仕上げることができました。そんなコブラさんの真骨頂が発揮されたのが、この「新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑(昭和編)」なのです。こちらについてはまた後々触れることにしましょう。
二つ目は、私は以前noteで平直之さんの著書「UWF外伝」を通じて、UWF私論をまとめたことがあり、やはりUWFという団体もスタイルもムーブメントも、新日本プロレス抜きで語ることができないというのがありました。
三つ目は…これは最後の総評で触れることにしましょう。
今回はこちらの「詳説 新日イズム 完全版」をネタバレも含む批評を行いながら、気になった項目を8つ、コブラさん執筆の特別付録、総評という形でプレゼンさせていただきます。よろしくお願いいたします!
★1.必殺技の極意
この本の最初に書かれたテーマは「必殺技の極意」。ここでは流さんは、力道山時代から続く昭和のプロレスの楽しみ方は、水戸黄門の印籠のように、この技が出たら終わりというスタイルが「グラフの横軸」ならば、ひとりのレスラーが成長していくにつれて必殺技を変えていくスタイル「グラフの縦軸」を提示したのが初期の新日本プロレスで活躍したアントニオ猪木、長州力、藤波辰爾であると綴っています。必殺技のバロメーターのようなものをグラフに例えるのはなかなか興味深い例えだと思います。
しかし、グラフの縦軸と横軸の関係が1980年半ばになると崩れていき、相手の得意技を仕掛ける攻防が多発したことにより、必殺技はその技を使うレスラーの専売特許ではなくなったことが要因。そこから昭和から平成になると「カウント2.9のプロレス」となり「必殺技グラフ」は消えていったと流さんは綴っています。
ただ流さんは、「見る側に説得力を持たせることができさえすれば、必ずしも昭和のように一撃必殺技が理想だとは言えまい」と論じています。ここは大事なことで、技に説得力があれば、成立するが、例え一撃必殺技だったとして説得力がなければ意味はないということなのです。
最終的に大事なのは見る側を納得させる説得力ということなのかもしれません。
実は棚橋弘至選手がエースになってからの新日本は攻防はきちんと進化をさせながらも最終的には一撃必殺技で終わるプロレスになっています。棚橋選手だとハイフライフロー、オカダ・カズチカ選手ならばレインメーカーといった感じです。
恐らく原点回帰していった背景としては、あまりも技が出尽くして飽和状態になっていたプロレスの攻防を見つめ直してやっぱり必殺技がきちんと決まれば試合は終わる形に戻した方が整合性があるのではないかと現場サイドが考えたのではないだろうかと。この決断は正しいと私は思います。
★2.道場こそ新日本の矜持
この回では流さんが昭和の新日本で鬼軍曹として恐れられた名コーチの山本小鉄さんから聞いたエピソードがメインで構築されています。
山本さんは「道場と練習の重要性」をよく語っていて、「トレーニングを嫌がるようになったら、その時点でレスラーじゃない」がモットーでした。
新日本は今も昔も道場は東京・世田谷区・上野毛に存在している。隣に隣接されている寮はリフォームされても、50年近く立っても建物自体は変わりません。
個人的に印象に残ったのは、新日本は創設して数年後に異種格闘技路線に走るわけですが、道場破りに備えて、サンドバッグや柔道着などの他の格闘技器具があり、レスリング以外も練習していたそうです。
「俺たちは素人さんにナメられたら終わりだから」
私は山本さんのこの発言に新日イズムを感じました。ナメられたその時点で自分自身や団体のアイデンティティーはないわけです。だからこそ相手に自分たちの強さを実力で証明して分からせるのです。ちなみにレスラー間でも「ナメられたら終わり」という反骨心から生まれる展開ってあると思います。
学生プロレス出身という経歴を持つ真壁刀義選手が、レスラーから虫けらのように扱われても耐え抜いて、実力を磨いてスパーリングで強くなり最終的には誰も真壁選手をバカにできなくなったというのは紛れもなく「ナメられた終わり」という反骨心から生まれた結果です。
この本は主に20世紀の新日本について掘り下げているので、今の新日本と対比しながら読み進めていくとさらに面白さが倍増すると思います。
★3."神様"の遺産、ストロングスタイルとは何か?
次に紹介する回はストロングスタイル。流さんはこの言葉の起源を綴っています。
元々は本格派とショーマン派というものがあったそうだが、要はストロングスタイルとは新日本発信の和製英語で、「新日本がやっているプロレスは本格派で、全日本はショーマンシップが主体の見せ物プロレス」と周囲を洗脳させるための戦略的言霊だと。これは新日本による自分たちの強さやスタイルを提示するためのブランディングですよね。
ただ何を持ってストロングスタイルなのかという具体的な意味や説明には不十分。初期の新日本ではストロングスタイルの象徴としてカール・ゴッチが起用されている。
「誰もが”完全”にはなることは出来ない。いつでも必ず向上できる余地があって、それを埋めたとしても、また余地が出来る。そんなものなんだ。自分の向上できる余地に気づけなくなった人間はそこで成長が止まる。結局、自分が棺桶に入るまで、ずっと鍛錬と勉強を怠ってはいけないということだよ」というゴッチの名言があるように、強くなるための飽くなき鍛錬と求道というスタイルがゴッチイズムであり、道場での鍛錬がその幹となるのです。
ストロングスタイルの源流がゴッチイズムで、ゴッチイズムをアレンジしたのが新日本のストロングスタイルなのかもしれない。
ただどうしても抽象的な意味になってしまう。
「ストロングスタイルは言葉に過ぎない」
棚橋選手の名言は本当に的確なのです。
今の新日本はさまざまなスタイルがひとりのリングでパッケージされた総合デパートです。
アメリカンプロレスも見れるし、ルチャ・リブレも見れるし、ヨーロッパスタイルも見れる。あらゆるスタイルがある中のひとつの大きな軸としてストロングスタイルは存在しています。
ストロングスタイルとは何か?
その答えはプロレスという摩訶不思議なワンダーランドを包む霧のなかにあるのかもしれません。
★4.強いレスラーは「極めっこ」が生まれる
この回は特に面白いです。サブミッションとは「提出、提案」と「服従、降参」という二つの意味があるそうです。元々関節技はサブミッションホールドではなく、コンセッション(譲歩という意味)ホールドと表現されていましたが、いつの間にかサブミッションと形容されるようになります。
実は日本プロレス時代にサブミッションを取り合うスパーリングのことを「極めっこ」と呼ばれていたそうです。
「極めっこ」の実力者だった北沢幹之(魁勝司)さんの証言がかなり興味深いので一部ご紹介します。
「力道山先生がおられた頃、極めっこができやいやつは絶対にプロレスラーとは認められませんでした。道場でのスパーリングなどという
高尚なものじゃなくて、要するに先輩レスラーの実験台、オモチャですよ。グシャグシャにされる。それに耐えられないやつは逃げました。オモチャにされる中で、自分も極めっこに強くなっていったんです。極めっこが強くならなければ当然、海外武者修行には行かせてもらえなかった。日本人レスラーは体が小さいから、アメリカ、ヨーロッパ、メキシコの大きな選手は我々をナメてかかる。そういう態度に出たやつを黙らせるには、リング上で極めてやるしかないんです。ナメられたままだと、すぐ仕事から干されましたからね」
そこから1967年にカール・ゴッチが日本プロレスのコーチに就任したことにより、ゴッチ仕込みのサブミッションが伝来。
アキレス腱固め(それ以前にも存在したが必殺技に昇華したのがゴッチ)、ヒザ十字固め、腹固め、クルック・ヘッドシザース、チキンウイング・フェースロックといった関節技や、肛門への指突っ込み、カメになった相手の延髄にヒジをいれて防御を崩す、相手の頬骨に自分の上腕の骨を食い込ませるヘッドロックなどの裏技まで。
この力道山時代から存在し、ゴッチによって進化していた「極めっこ」に打撃やスープレックスを加えたプロレススタイルこそがUWFなのです。
この項目は新しい新日本ファンには読んでほしいですね。どんなスタイルでも新日本の選手の源流には「極めっこ」があって、そのバックボーンがあるからこそ自身のプロレスラー像を構築するアレンジが可能なのです。
★5.IWGPの大いなる野望
新日本のフラッグタイトルであるIWGP。このタイトルが設立された目的とは、「世界各地の強豪を集結させて、真の世界統一王者を決める」という野心からだった。
全日本は当時世界最高峰のNWAと提携しているため、NWA世界ヘビー級王座に挑戦したり、時には王座を戴冠(ジャイアント馬場が過去に3度戴冠している)する機会に恵まれていた。
NWAメンバーでありながら、NWA世界王座に挑戦する機会に恵まれない新日本はならば自分たちで世界最高峰の王座を作ればいいのだと創設したのはIWGPだった。
元々は年に一回開催されるリーグ戦だったが、タッグ王座、ジュニアヘビー級王座が創設されたのを機に1987年のIWGPリーグ戦を最後にタイトル化され、IWGPヘビー級王座が誕生したのである。
今年(2021年)、新日本では1987年に設立された「新日本産世界最高峰のタイトル」IWGPヘビー級王座と2011年に設立された「アメリカを始めとする海外マットにおいての、IWGPヘビー級王座への登龍門」という意味合いで設立されたIWGPインターコンチネンタル王座が統一されて「IWGP世界ヘビー級王座」が創設された。
これは色々と波紋を呼んでいるが、流さんの「IWGP設立時の初心を忘れないことこそ、ベルトの権威を永久に維持する条件であること」という一文と以前猪木さんが語った「ベルトの権威はそれを巻いているレスラーの実力によって決まる」という言葉に今後の「IWGP世界ヘビー級王座」というアイデンティティー確立のヒントになるのではないだろうか。
★6."鬼軍曹"流マッチメークの極意
初期の新日本はプロモーターである猪木さんから委任されて山本小鉄さんがマッチメーカーとなっていました。前座からメインイベントまでの取り組みを決めるのがマッチメーカーの仕事です。後に長州力さんが就任すると現場監督と言われるようになりました。
各選手の実力、当日のコンディション、対戦相手同士の相性、特定の巡業地に大手スポンサーがいる選手いない選手などありとあらゆるところまで把握した上でマッチメークしなければいけない大変な業務です。
ちなみに初期の外国人招聘係であるブッカーはカール・ゴッチでした。ただ、ゴッチが呼ぶ外国人レスラーは実力はあっても地味なレスラーが多かったのが事実。
流さんは山本さんのマッチメークについて「前座からセミファイナルまでの選手が一丸となってメインイベントに出る猪木をさいだいげんにカッコよく見せること。若手選手が大技を使うことは厳禁」と「食材が鶏肉でもお客さんに高価なビフテキと同じ満足感を与える」と評しています。よくよく聞くとかなり計算されていて、コストパフォーマンスが高いマッチメークといえるかもしれません。
今の新日本。これは新日本だけではありませんが、コロナ禍で大変です。色々と練っていた戦略や企画もコロナ禍によって見直したり、延期したり、中止したりしています。でもやり方を工夫することでお客さんに満足感を与えるメニューを提供することができます。そのことをこの回は教えてくれるのです。
★7.悪道一筋!"成り上がり"ヒールの生き様
新日本のおける初期の大ヒールといえば、タイガー・ジェット・シンと上田馬之助さんが挙がります。
まずシンはアメリカのメインテリトリーを経由せずに新日本に参戦し、エース猪木を追い詰める大ヒールとなりました。
上田さんは日本プロレス時代はセメントに強い実力者でしたが、アメリカ遠征や国際プロレス参戦を経て、新日本では「稀代の大悪党」となりました。シンも上田さんも入場シーンから殺気と緊張感を漂わせ、闘いのワンダーランドと形容された新日本を恐怖のドン底に陥れます。
とにかく二人ともファンからキャラではなく本当に憎まれたヒールでした。
また1981年から参戦したラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇の「はぐれ国際軍団」も新日本が生んだ大ヒールです。あまりにも猪木ファンから嫌われた木村さんは自宅にいたずら電話や投石といった嫌がらせを受けたそうです。
つまり「お前が憎い」「こいつが嫌」という憎悪の気持ちをリアルに抱かせ、リングに悪の華を咲かせたのが昭和における新日本の大悪党たちです。
今の新日本はどうでしょうか?
これは関しては時代が違ったり、背景も違ったりしますし、リングと普段は別人なんだよと思われてしまうのが現実です。リングのキャラクターだけで終わったのは、2008年にヒールに転身し、最後まで黙々とクレイジー坊主で暴走し続けた飯塚高史さんくらいではないでしょうか。
それくらい今の時代に「日本国民から嫌われるヒール」になるというのは難しいし、覚悟はいります。
もし今の新日本、いや今のプロレス界でヒール道を歩むことをアイデンティティーにするレスラーがいるのならば、徹底的に嫌われるという難行に挑んでほしいと思う次第です。ただし、安易に金的攻撃や凶器攻撃をすればヒールというわけではありません。昭和の新日本における成り上がりヒールには「俺はここで悪党として生き抜くんだ」という意地と誇りを感じるのであります。
★8.老若男女のエンターテイメント
この回で流さんは日本に輸入される前、1950年代のアメリカではプロレス興行はR指定のエンターテイメントだったと綴っています。
そうだったのだなと思いました。
理由は、当時アメリカの多くの州では小学生以下の子供の午後10時以降の外出が禁じられていたようで、興行終了時間が午後11時から12時になるため、子供は生でプロレス観戦ができなかったのです。
そこから規制が緩和され、大人の同伴ならば子供の生観戦は許可されたり、1970年代になるとファミリー・エンターテイメントに変貌していったというのが歴史の流れです。
私はこの記事で今の新日本は総合デパートと評しましたが、飲食店で言うとありとあらゆる料理が食べられるファミレスなんですよね。
日本プロレスは和風仕立ての西洋料理、全日本プロレスは日本プロレスと同様の和風仕立ての西洋料理、国際プロレスは世界各地のバイキング料理ならば、新日本はストロングスタイルや異種格闘技戦といった独自路線を進んだ創作和食なのだと思います。
そんな新日本は紆余曲折を経て、ファミレスにモデルチェンジしていったような印象があります。本来の味は、そのメニューのひとつとなって生き残る形にして。
元々R指定のプロレスが家族で楽しめる娯楽なるまで、どのような歴史や変遷があったのかを知ることは大事なことではないかと思います。
今回、この「詳説 新日イズム 完全版」をプレゼンする際にこの項目とコブラさん以外の記事は、この本の前半部分(100ページ以内)を紹介しています。後半にかけても面白いのでは是非読んでご確認いただければありがたいです。かなりプロレスの知識はアップする素晴らしい内容となっております。
★9.新日本プロレス入場テーマ曲大図鑑(昭和編)
これは単純に面白い!!
昭和プロレステーマ曲研究家コブラさんによる入魂の記事です。
コブラさんは私との対談で新日本のテーマ曲の特徴として、「フュージョン、カンフー映画、アニメのジャンルから主にテーマ曲選びをして印象がある」と語っていましたが、本当にバラエティーに富んだ選曲なんですよね。
これだけでも読む価値はあります!
私はコブラさんとの対談における資料として活用させていただきました。
一部紹介すると藤波辰巳選手のテーマ曲でビル・ロビンソンのテーマ曲で有名な「BLUE EYED SOUL」(カール・ダグラス)が一回だけ使われたとか、ダスティ・ローデスのテーマ曲として全日本の試合で時間切れ引き分けになった際によく使われる「カクトウギのテーマ」(坂本龍一&カクトウギ・セッション)が使われた時期があったとか。もう、偉大なるトリビアだと思います。
★10.【総評】シン・新日本プロレスに問う!~現在・過去・未来はひとつの路線で繋がっているというメカニズム~
この本のあとがきで流さんは、「詳説 新日イズム 完全版」を世に出した意図して次のように綴っています。
「今や新日本は何度目かの黄金時代を迎え、東京ドームや西武ドームに数万人の大観衆を集めている(2014年時点)。そんな時期だからこそ、原点に立ち返って、本当の『新日イズム』はどこにあったのか。そして今、どこにあるのか、あるべきなのか…を考え直してみる必要があるのではないかと思う」
私は思うに、今こそ新日本は原点を見つめ直す時期が到来したと思っています。
私はなぜこの本を紹介した三つ目の理由は、今の新日本にとってのいい教材になるのではないかと思うからです。
来年(2022年)で新日本は50周年を迎えます。
特にこの木谷オーナーの発言で注目したいのは「活気、勢いを取り戻さないと…」という部分。残念ながら、新日本はコロナ禍以降、低迷している印象が強いです。
もちろん選手は頑張っているし、新しい企画も出してはいるのだろう。ただしその選手や団体の頑張りが伝わっていない、波及していない。
そこが問題だと思います。
個人的にはコロナ禍以降、新日本は3ヶ月ほど興行を休んで再開した時に当時ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンにいたEVILをバレットクラブに移籍させ、NEW JAPAN CUP優勝&IWGP二冠王者にさせ、金的攻撃や凶器、介入といったダーティープレイが強調される試合展開が目立つ路線に走ったことが、ブランディングの間違いだったのではないかと。
別にヒールが悪いわけではない。ただ新日本のヒール像というのは近年、割りとワンパターン化している現状がありました。
そういえば最近ヤフーコメントで今の新日本について、なかなか的を得た内容がありました。
「毎度毎度ヒールの乱入、 試合ぶち壊して狡いスリ カウントだけ攫っていく。新日本もいい加減このワンパターン演出やめない と、ほんとにファンが離れていくよ。王道のプロレスで客を沸かせるレスラーの試合が見せられないなんて
新日本プロレスの名が廃れる」
新日本は現在、名勝負製造機・鷹木信悟選手がIWGP世界ヘビー級王者となり、真っ向勝負のタイトルマッチを展開していますが、やはりこの上記のような先入観は拭えていないのが現実。
要はバランスなのです。
ベビーフェースとヒールは相互関係。
太陽と月のような関係なのです。
だが、そのバランスが崩れていくとせっかくのいい試合が台無しになってしまいます。
あの頃、見ている側はプロレスに何を求めていたのか。それは裏切りでもサプライズでもなく、生きる勇気や希望ではなかったのではないのかと。
もちろんコロナ禍もあって色々と戦略の見直しや誤算はあっただろうが、それはどこも同じ。ならば今の時流を読んだ上でのブランディングがあったのではないだろうか。その読み間違いが、失速に繋がったのではないだろうか。
もしあのコロナ禍で時流に合わせた、いや先を行くようなブランディングを展開していけば、コロナ禍というピンチをチャンスに変えたプロレス団体として再評価されたのではないだろうか。
ちなみにコロナ禍というピンチをチャンスに変えて頭角を現したプロレスリング・ノアはさまざまな企画にチャレンジしたり、リング上ではとにかく真っ向勝負を信条とする潮崎豪選手のGHC戦における数々の名勝負がプロレスファンの心を掴みました。
そこは新日本とは対象的でした。
2005年経営難によりユークスにオーナー企業が変わり、ブシロード体制となり生まれ変わった新日本を「シン・新日本プロレス」と言うならば、生まれ変わる際に取捨選択してきたであろう過去の新日本を「シン・新日本プロレス」は今こそ再確認して、今後のブランディングのヒントにするべきではないだろうか。
人や組織といったあらゆる生命体がひとつの電車ならば、現在・過去・未来というのは、ひとつの線路で繋がっているのではないかと私は考える。
現在を変えるならば、過去を振り返ることが大事で、そこからの未来に向けてどうなりたいのかというゴールに向けた戦略が見えてくる。
未来を作る場合は現在と過去にヒントがある。
過去をうまくビジネスとして使うならば、現在や未来について考えることでヒントが生まれたりする。
「シン・新日本プロレス」に問いたい!
今こそ20世紀の新日本の歩みに未来に繋がるヒントがあると。
決して懐古主義ではなく、取捨選択でいいのです。ただその見落としはありませんか?
流さんがこの本のあとがきで「200人、300人という少数の観客しかいない、あの1972年の『ガラガラの会場』で全選手が見せてくれた『出し惜しみなしの全力ファイト』、あれこそ私にとっての永遠の『新日イズム原風景』」と綴っています。
海外選手があまり使えないといった色々と事情があっても、新日本のレスラーには各々が目指す全力ファイトでリングで生き様を見せてほしい。例え善玉でも悪役でもエースでも脇役でも、どんな立場の選手でも。
今こそ、出し惜しみせずに…。
「今を一生懸命やらないのに、どうして明日はあるんだ!」
かつて新日本で馳浩さんが残した名言を「シン・新日本プロレス」に捧げたい。
頑張れ!新日本プロレス!
現在の新日本に一脈通じる大切なルーツが綴られている名作「詳説 新日本イズム 完全版」。

