「真説・佐山サトル」おすすめポイント10コ | ジャスト日本のプロレス考察日誌

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今回、僕がどうしてもご紹介したいプロレス本はこちらです。





ノンフィクションライターの田崎健太さんの「真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男」です。

まずは本の内容を紹介します。

内容紹介

プロレス界最大のアンタッチャブル―― 
総合格闘技を創ったタイガーマスクの真実! 

1980年代前半、全国のちびっ子を魅了し、アントニオ猪木を凌ぐ新日本プロレスのドル箱レスラーとなったタイガーマスクは、なぜ人気絶頂のまま2年4ヵ月で引退したのか? 
UWFにおける前田日明との“不穏試合"では何が起きていたのか? 自身が創設した総合格闘技「修斗」と訣別した理由は? 

現在も「21世紀の精神武道」へのあくなき追求を続ける佐山サトルは、その先進性ゆえに周囲との軋轢を生み、誤解されることも多かった。 
謎多きその素顔に『真説・長州力』の田崎健太が迫る。佐山サトル本人への長期取材に加え、前田日明、長州力、藤原喜明、中井祐樹、朝日昇ら多数のプロレスラー、格闘家、関係者の証言で綴る超重厚ノンフィクション。 

“孤高の虎"の真実が今、明かされる! 

【目次】 
プロローグ 佐山サトルへの挑戦状 
第一章 父親のシベリア抑留 
第二章 プロレス狂いの少年 
第三章 ガチンコの練習 
第四章 『格闘技大戦争』 
第五章 サミー・リー、イギリスを席巻 
第六章 タイガーマスク誕生 
第七章 結婚とクーデター 
第八章 電撃引退 
第九章 “格闘プロレス"UWF 
第十章 真説・スーパータイガー対前田日明 
第十一章 佐山サトルの“影" 
第十二章 初代シューターたちの苦闘 
第十三章 バーリ・トゥードの衝撃 
第十四章 ヒクソン・グレイシーと中井祐樹 
第十五章 修斗との訣別 
エピローグ “孤高"の虎 


【著者プロフィール】 
田崎 健太(たざき けんた) 
1968年、京都市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館『週刊ポスト』編集部などを経てノンフィクション作家。 
著書に『偶然完全 勝新太郎伝』、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』、『ザ・キングファーザー』、『球童 伊良部秀輝伝』(ミズノスポーツライター賞優秀賞)、 
『真説・長州力 1951-2015』、『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』、『ドライチ ドラフト1位の肖像』など 


本当に凄い本でした。田崎さんは以前出された「真説・長州力」も凄い本でしたが、こちらも素晴らしかった。是非一人でも多くの皆さんに読んでほしいのですが、ネタバレは控えたい。そこで私は思いつきました。池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれているのを読んで面白かったんです。それで池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事だそうです。つまり、今回「真説・佐山サトル」のレビュー記事はサンプリングのサンプリング。私がこの本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。


1.イワン・ゴメスの記述が多い!


新日本や日本プロレス界、格闘技界においてこのイワン・ゴメスという格闘家の存在は大きいのです。藤原喜明選手によると「ヒールホールドがイワン・ゴメスから教わった」とのことでした。あと佐山さんによるとゴメスから足を取られないように蹴る技術やマウントポジションのポジショニングなども写真を見せながら教えてくれたようです。私はイワン・ゴメスについていずれ書きたいと思っているのでその参考文献には十分使えると思いました。


2.鬼の黒崎健時が率いるキックボクシング目白ジムでの練習記述が詳しく書かれている!


佐山さんは新日本プロレスでの新人時代に「鬼の黒崎」と恐れられた黒崎健時氏が率いるキックボクシングジム・目白ジムに内緒で通い、キックボクシングを習得したことは有名ですが、その目白ジムに通う理由と練習内容などが詳しく書かれています。


3.ウェイン・ブリッジの証言が読める!


イギリスのレジェンドレスラーであるウェイン・ブリッジの証言は佐山さんがイギリス遠征時にサミー・リーがいかにイギリスで大ブレイクしていたのかという大きな裏付けになっています。またウェイン・ブリッジのプロフィールとレスラー人生をさりげなく追ってくれているのも、イギリス人プロレスラーが大好きな私にとってはありがたい限りでした。


4.アントン・ハイゼルがなければ…と嘆きたくなる惨状が分かる。


1980年代の新日本は毎週金曜夜8時中継の視聴率が20%を越え、観客動員数も超満員が多く売上をあげていたにも関わらず、選手や社員に還元されていなかったことが後々のクーデターや選手離脱の火種となります。年間売上が19億8000万円があるのに、繰越利益がわずか750万円しかありませんでした。その原因は猪木さんのサイドビジネスであるアントン・ハイゼルの運営に新日本の利益が流れていたことが判明。もしアントン・ハイゼルがなければ、すべてはうまくいっていたのかしれないとこの本を読んで改めて感じました。


5.日本で一番ショウジ・コンチャについて詳しく書かれている。


ショウジ・コンチャといえば、古くからのプロレスファンなら悪名高き代理人として記憶されていると思います。この本で私はショウジ・コンチャが曽川庄司という名前だったことを知りました。タイガーマスクを辞めて早く新しい格闘技を作りたい佐山さんの想いにこのショウジ・コンチャはスッと入り込んでしまい代理人となってしまったことも佐山さんの人生を悪い意味で変えたとこの本を読んで思いました。もしMMAの代理人として活躍しているシュウ・ヒラタさんとかが佐山さんのブレーンになっていたら、佐山さんはもっと成功したのかもしれませんし、人間関係で苦労することも今よりも少なかったのかなと思いました。ショウジ・コンチャ、やっぱりワルです!


6.真説 スーパータイガーVS前田日明


この本で一番興味深かったのはいわく付きの事態となったスーパー・タイガーVS前田日明について36ページに渡り記述されていることです。色々と謎多き一戦となったスーパータイガーVS前田日明。あの時、なにが起き、あのような試合になり、不透明な結末となったのか。佐山さんと前田さんの証言によって、あぶり出しています。これを読んで感じたのはやっぱり二人のベクトルに大きな隔たりがありました。そして前田さんの証言に佐山さんが真っ向から否定している場合が多かったです。


7.馬場さんの名言が炸裂!


実は佐山さんやUWF勢はこの1980年代中期に別々の理由で全日本プロレスとの参戦交渉を進めていました。結果的に佐山さんとUWF勢の参戦は幻となりました。その時に馬場さんが残した名言に思わず唸ってしまいました。その内容はこの本を読んで確認していただければと思います。


8.やっぱりシューティングは狂っていた


この本では佐山さんが作り上げた総合格闘技の礎となったシューティング(修斗)について詳しく書かれています。やっぱり初期のシューティングはカルト宗教なんだなとこの本を読んで改めて思いました。色々と狂っています。


9. プロレスには裏切られなかったが、格闘技には裏切られた


これは以前佐山さんがインタビューでの発言なのですが、なぜこのような発言をしたのかずっと疑問でした。逆ではないのかと思っていました。プロレスに裏切られたから、格闘技に走ったのだと…。しかしこの本を読むと佐山さんの発言に納得しました。格闘技ブーム以前の状況で競技を運営する苦悩を抱え、借金に困りスポンサー探しに奔走し金策に明け暮れていた佐山さん。そんな佐山さんの苦闘を選手達や関係者は知るよしはありません。そしてカルト宗教やテロ組織で起こりやすい内ゲバが発生します。その内ゲバの果てに佐山さんは修斗から離れることになりました。新日本やUWF時代より修斗時代の方が人間関係が複雑でややこしかったんだなとこの本を読んで感じました。


佐山さんはさぞ悔しかったと思います。修斗のお家騒動は2010年頃から再燃して、大問題となりましたが、その根本はカルト宗教のように排他主義や原理主義に包まれた修斗の宿命だったと思います。佐山さんと修斗の関係が改善することを願います。修斗は誰がなんと言おうが佐山さんが作った格闘技です。


10.息子の存在が明らかに!


この本のエピローグでは佐山さんが今まであまり明かしてこなかった息子さんの存在を明かしています。 ここだけでも貴重な文献だと思います。




以上、「真説・佐山サトル」を読んで僕が感じたおすすめポイント10コでした。


田崎さん、ネタバレはしないでこの本の素晴らしさをマニアックにプレゼンしましたよ!


田崎さんは本当にさまざまな方から証言を紡ぎ検証を繰り返すことで、真説を導いていったと思います。本当に手間隙がかかる作業だったと思います。でもその結晶として「真説・佐山サトル」が生まれたのですから、この作品を描いた田崎さんに感謝したいです!ありがとうございます!


次は田崎さんによる「真説・前田日明」に期待したいです!