まだ10代の頃、当時30代だった予備校の講師が、授業の合間の雑談で、

「君たちは、30代なんてもう(恋愛など)何も無いだろうと思っているだろうが、そんなことはない。
30代は30代で色々あるんだよ。」

…と言っていた。
文脈は忘れてしまったが、その言葉は頭の片隅に引っ掛かったままだった。

私は彼の歳をとうに越え50代を迎えたが、
こんなにも瑞々しい心を抱えたままとは思わなかった。

40代半ばを過ぎ、ミッドライフクライシスの最中をさ迷い、私の見た景色は、10代の頃にはとても想像しえないものだった。

あの、奥手で下ばかり向いていた私が、
男の視線に気付き、
その男と視線を交わし、
男が寄ってきて、
または私の方から男に近づき、
声を掛け、話をし、心を交わす…。
…こんな芸当をしてのけるとは思わなかった。
しかも、相手は一回りも二回りも年下だ。
人生は辿ってみなければ解らない。

困った事に身体の中では相変わらず荒ぶる獣がのさばっている。
一人の男に袖にされた位で大人しくなるタマではない。
私はまだまだ男を求めてさ迷わなければならないらしい。

こうなったらとことん付き合ってやろうではないか。
燃え盛る焔の赴くままに。
この身を裂かれ、ぼろぼろに傷付いたとしても。
それこそ灰となって散り逝くまで。