桜を殺った隆一は新潟に居ると思われる女子二人の所へと
スカイラインを走らせた。途中、高速道路でFDとのちょっとし
た意地の張り合いがあって、そのFDは警察に尋問を受けて
いた。あれは冷や汗ものであり、また笑いを誘う出来事でもあ
った。なんとか新潟県に入り、上越市にある二人のターゲット
のもとに着いた。ターゲットの名前は女子6番の金田一真樹
(キンダイチ マキ)と女子11番の津村唯(ツムラ ユイ)である。
この名簿によれば住所が一緒だ。つまり女二人で同居って
事か。確かにあの頃から二人は仲が良かった。常に一緒に
居たと言ってもいいかも知れない。部活も一緒だったなぁ。
二人は今、一緒に花屋のアルバイトをしているらしい。近々
花屋を開店し、経営するらしい。(何故あの先生が知って
いたのかは知らないが)隆一はその花屋に向かった。
ここで一つ。皆さんに聞いてみよう。そう。出発時に持っていた
あのスーツケースの行方だ。二人乗りのスカイラインにデカイ
スーツケースは乗らない。なら何処へ行ったのか。
隆一は相内と待ち合わせをした仙台駅に30分前に着いた。
その時にこの女子二人の所に相内を殺った後に行こうと
計画していた。だが、相内殺しの時、雪見を使ったアイデアと、
寒いために、先に気温の低い場所にいる桜を殺ろうという気ま
ぐれのために少しその計画が長引いた。駅にある宅急便サー
ビスで新潟のとあるホテルに送っておいた。これで謎は解消。
読者の皆さんがこの謎を勝手に解いていた事は無駄だという
事になる。気付いていない人の仲にもなるほどと思わず言った
人がいるかも知れない。
今日は金田一と津村を殺った後にスーツケースを預けたホテ
ルに泊まる予定だ。やっとフカフカのベッドで寝られると思うと
気が楽になる。隆一はフフッと一人笑ってしまった。隣に誰か
乗っていたら充分怪しまれただろう。
そんな事を思っている間に花屋に着いた。花屋独特の店構
えの上、看板には「KANEMURA花店」と書いてあった。「
KANEMURA」とは金田一の金と津村の村を取ってくっ付
けた物だと隆一は読み取った。スカイラインを止めて車が来
ないことを確かめ降りた。ガードレールをヒュッと飛び越えて横
切る自転車をよけ、花屋に入った。そこには二人の女の子、
一人の中年男性が居た。
「いらっしゃいませ!」
と元気のいい女性特有の声で隆一は迎えられた。その顔つ
きはあまり変わってなかったために隆一は声の主が金田一だ
と分かった。金田一は隆一をじっと見つめて1分後にあのイジ
メに合っていた斉藤隆一なのだと発覚し、声を発さずに口だ
けで「あっ」という表情をした。すぐに奥に居たもう一人の女店
員(必然的に津村になる)を呼んだ。津村も金田一同様に
はっとした。二人は顔を見合わせている。その奥に何事かと
ひょこっと顔をのぞかせた。その顔に今度は隆一が驚かされた。
それは男子出席番号5番の小笠原大(オガサワラ マサル)だった。
隆一がその小笠原に気を取られている時に金田一が口を開
いた。
「斉藤君だよね?」
奥にいた小笠原と隆一は同じ動き、だが違う意味でえっ?と
言った。
「あ、あぁ。そうだよ。斉藤だよ」
二人は顔を見合わせた。隆一は二人が困惑の顔を見せると
思っていたが、予想に反して二人、そして小笠原が笑みを浮か
べた。小笠原が確認のため隆一に聞いた。
「本当にあの斉藤か?何でこんなところに?」
隆一は笑って言った。
「ちょっと、長い旅行に来たんだ」