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REVENGE

小説。まぁ暇な人は見てってください

隆一は雑誌を買う際、財布を探した。その時あるものに触れた。

「あっ」

店員に謝り、雑誌を戻して店を出た。急いで車に乗り、犯行現

場に戻った。

「忘れてたぜ」

雪見の体は既に冷たくなっていた。風に揺られながら地面を見て

いる。その右手に相内にトドメをさした拳銃を持たせた。よし。

再び車に戻りさっさとその場から逃げた。先ほどのコンビニでカー

雑誌を買って見ていた。すぐに飽きて名簿を確認。ここから一番

近いのはっと・・・八戸かよ・・・更に寒いじゃねぇか。全員殺す前

にオレが凍死しちまうよ。はぁ。やんなっちゃうね。全く。

そういい残して仙台に別れを告げた。



12月4日になりかけていた。もう隆一にも睡魔が忍び寄っていた。

「やべぇ。眠ぃ」

そう言ってこの日の計画は終わった。

トータル3人。まだまだ先が長すぎる。今年中に終わるのか?

隆一は相内の遺体を茂みの中に黒いゴミ袋に入れて車に戻った。

再び低いエンジン音を鳴らす。2、3回ふかした。ハンドルを握り、

サイドブレーキを下ろしてアクセル全開で雪見のところへ向かった。


20分後。雪見の自宅と思われるアパートに着いた。だが思われる

という考えはすぐに無くなった。雪見が外で待っていたのだ。このクソ

寒い中、何十分も待っていたのか。気の毒に。隆一は雪見の横に

GT-Rを止めた。助手席の窓を開けた。すぐに雪見が話しかけて

くる。(ちょっとウザイ感じがしたが)

「やっぱ本当だったのか!待ってた甲斐があったぜ!乗せてくれよ!」

隆一はそのテンションにあまり付いていけなかったがドアを開けた。

雪見がドスンと乗り、車体が震度5ぐらい揺れた気がした。大袈裟

か?すぐさまシートベルトを締め、準備万端!いつでも出発できま

すぜ!親分!そんな風に見えた。全くお調子者だ。全然変わって

いない。隆一は聞いた。

「久しぶりだ。全然変わってないな」

「そんな事、後でいいだろ?どっかいこうぜ?」

よし。その言葉を待っていた。

「さっき、いい景色の場所を見つけたんだ。そこでいいか?」

「OKOK!早く行こうぜ?」

ミスマッチな風景から青いスカイラインは犯行現場に向かった。


雪見は何の疑いも恐怖も持たず、何も知らずに興奮だけでここに

来た。これから何が起きるか知ったもんじゃない。雪見はスカイライン

に釘付けだ。ボンネット開けていいか?とか、どんなのをカスタムした

んだ?とか、あの頃の車好きな雪見はまだここに存在していた。

雪見に聞かれ、しょうがなく許してボンネットを開けさせたとき、エン

ジンに見とれている隙をついた。首にある急所をトンと突いた。

「カッ」と変な声を出して、雪見はエンジンの上にもたれかかった。

すぐさま作戦に取り掛かった。雪見を地面に下ろし、茂みの中から

相内を取り出し、雪見の髪の毛を抜いて相内の右手に握らせた。

そのまま崖から相内を落とした。遺書は必要無くなった。クシャクシャ

に丸めてポケットに入れた。あらかじめ持ってきていたロープを木に巻き

つけて、一番下の部分をわっかにした。雪見の重い体を肩車してその

木まで近付き、首をロープにかかるようにわっかに入れ、肩から雪見を

外した。その瞬間、雪見は目を覚ました。

「グッ!カッ!カハッ!うっ!」

そのまま力なくロープにもたれかかった。念のため脈を計った。もう無い。

完璧だ。作戦終了。隆一は最後に見直し、二人にさよならをした。

スカイラインに乗り近くのコンビニに向かった。


出席番号21番 雪見藤二郎 クリア

隆一はシートにドサッと腰を下ろした時、いい事を思いついた。

名簿を急いで後部座席の上から引っ張った。急いで探す。

仙台市、仙台市・・・ラッキー!いたぜ!どっかに女神がいる

のか?信じられない奇跡だ。

男子21番。雪見藤二郎。しかもよりによってコイツか。利用

しやすい。すぐに迎えに行こう。まずは電話だな。

「はい。雪見ですが?」

声からして藤二郎に感じた。声だけは全く変わっていない。

「あ、久しぶり。斉藤隆一。覚えてる?」

聞き間違いかも知れないが微かに「あっ」と聞こえた。

「よ、よぉ。どうしたんだ?なんで番号を?」

「先生に教えてもらったんだよ。いやぁ。懐かしい」

短い沈黙。隆一が切り出す。

「そういえばお前、今何やってんの?夢叶ったか?」


隆一は雪見の後ろの席だった。受験の時、奴は言っていた。

「オレは将来、整備士になる。断言するぜ」

他の車好きともかなり話し合っていた。しかもその当時、オレ達の

クラスで絶大なる人気を誇っていた“GT-R”が奴の憧れる車の

一つに挙がっていた。その車を現在オレが乗っている。これも奇跡。


「あぁ。まぁな。今は1級整備士だ」

「おぉ。すごいなぁ。車は何乗ってんだ?」

雪見も何故かテンションが上がって来ていた。

「オレは今、ランエボだよ。エボⅧだ」

相内はにやけた。奴がGT-Rに乗っていなくてよかった。

「聞いて驚くなよ。オレはR34(サンヨン)だ。ブルー。結構チューニン

グもした。ドレスアップも。結構金かかったけどな」

雪見はオレをいじめていた事すら忘れていた。

「おぉ!すげぇ!お前どこ住んでるんだ?」

作戦通り。隆一は言う。

「今、ちょっとした事情で仙台に来てんだ。暇だったら迎えに行こうか?」

「マジで!?頼むよ!待ってるからさ!」

通話終了。携帯料金なんて気にしない。もうどうでもいい。作戦はうまく

行った。車で釣れば奴をコントロールするのは簡単だ。


隆一がいじめられている事をクラスで一度だけ話題になり、緊急会議

(もちろん隆一を除いて)が開かれた。話し合いの結果、卒業まで皆が

無言で接していればいいと決まった。卒業後もこのイジメに関して一切

触れてはならない。イジメは無かったかのように接する。そうも決まった。

隆一は相内に見晴らしのいいところを教えてもらい、その場所に

向かった。その間、相内は高校の思い出とか今の近況とかくだ

らない事をしゃべり続けた。隆一はとりあえず相槌や質問に答え

た。車はすぐにその場所に着いた。エンジンを止め、外へ出た。

「どうだ?オレ、結構ここ気に入ってるんだ」

隆一はふと思った。

「会社はいいのか?戻んなくて」

「あぁ。会社は休んだんだ。正解だったよ」

でも、お前の人生はここで終わってしまうんだよ。相内。

その時隆一に背中を見せていた相内は振り返った。

「ところで、何のために来たんだ?」

隆一は後ろからスタンガンを相内の首に当てた。

「うぁ!」

相内がもがきながら倒れる。スタンガンの出力は最大。最大と言っ

ても隆一がいじってパワーアップさせた出力だが。隆一は首以外にも

いたるところに当てた。持っていたペットボトルに入っていた水を掛けて

さらにスタンガンを当てた。水のおかげですんなりと感電した。

最後に、感電死と思わせぬように頭の横から銃で一発銃弾を入れた。

相内を待っているときにノートパソコンで作った遺書を置いてその場を

去った。奥さんに悪い事したかなぁと隆一は思った。

出席番号男子1番 相内幸之助 クリア


次は2番だな。いいペースだ。

「あっ。こっち」

自動ドアが開くのが遅くつっかえた相内を隆一は呼んだ。

「スマン。ちょっと遅れた」

相内は隆一の向かいの席に座りやってきた店員に「ホットコー

ヒー」と言いながらコートを脱いだ。一息ついて相内は言った。

「やっぱお前変わったな」

あくまでも隆一は冷静を装う。

「そう?お前の方が変わった。あの調子物が今では幸せ家族

だ。すっかり大人だ」

相内は笑った。届いたコーヒーにミルクと砂糖を入れ、混ぜて

飲んだ。再び相内は口を開く。

「まぁな。オレなりに頑張ったんだ。それよりお前。顔色良くなっ

た。あの頃は元気なかったしな」

「あんなことされて元気ある奴なんているのか?」

「すまない。オレ。卒業からその事ずっと考えてたよ。悪いことした

と思ってる。コレだけじゃお前が許してくれるはずがない。だけど

これからもずっと長い付き合いしていきたい。仲間として」

隆一は動揺した。こいつもあの先生と同じ対応をすると思って

いた。でも違った。しょっぱなから大番狂わせだ。こいつがこんな

事を言ってくるとは。言葉に迷った。仲間・・・

「なっ?ダメか?頼む」

「・・・」

隆一はふと思った。

「ドライブでもしないか?」

相内はポカンとした。我に返り答える。

「あ、あぁ。いいぞ。車はあるのか?」

「ある。お前の車でもいいがどっちにする?」

相内は少し考えて結論を出す。

「お前ので頼む」

「OK」

相内はホットコーヒーをグイッと飲み干し、会計を済ませ、隆一

と共に店外へ出た。隆一は相内を駐車場を自分の車の方へ

エスコートした。そのスカイラインを見たとき相内は思わず言った。

「お前いいの乗ってるなぁ。イカすぜ」

二人は車に乗り込む。隆一はキーを回し、エンジンを回す。それ

に相内はまた感動する。やはりこいつもこの車のいいところが分か

っているのだろうか。

「じゃあ行こうか」

長い長い高速道路を経てやっとの思いで仙台までやってきた。

つい先日にETCをつけておいて正解だったようだ。スムーズに

渋滞もなくここまで来れた。とりあえず車をコンビニに止めた。

「最初のターゲット。相内幸之助。妻、娘と3人暮らしか」

相内の住所に向かい、もう午前1時を回っていることに気付い

た。今日は相棒の中で一夜を過ごす。ちょっと寝にくいが・・・


眩しい太陽の光に目が眩む。急いで時計を確認してみる。

「もう7時か。あいつはもう出てきたのか?」

ちょうどその時、相内の家のドアが開いた。男だ。面影が残って

いる。相内幸之助だ。

「じゃあ、行って来る。なるべく早く帰るよ」

そう言って。車(レクサスだ。金持ちめ)に乗った。滑らかな走りで

ガレージから出て行った。それを見計らい、住所録に書かれてい

た電話番号に携帯から電話をした。3回くらいコール音が鳴って

からガチャっと音が耳に届いた。

「はい相内ですが?」

隆一は冷静を装う。

「あ、もしもし。初めまして。斉藤隆一と申します」

「はぁ。」

と誰なんだ?と言う感じで力無く応えた。

「実は幸之助さんの同級生でして。幸之助さんはいますか?」

答えはわかっているが聞く。

「あ。今、仕事に出て行ってしまいました」

「そうですかぁ。じゃあ僕から電話があった事と携帯番号を彼にお

伝えしていただけますか?はい。斉藤隆一です。はい。よろしく

お願いします。では」

ふぅと携帯をクーラーの部分に差し込まれている携帯ケースの中に

カチャッと入れた。電話が来るのを静かに待った。その時いきなり

「プルルルルルルルル」

と着信音が鳴った。急いで出る。

「もしもし?」

「オレだ。相内だ。いきなり電話よこすなんてビックリしたよ」

「ゴメンゴメン。急に懐かしくなって」

フッと微かに笑い声が聞こえた。

「オレの家の電話番号はどこで知った」

「先生に教えてもらったんだよ」

沈黙が流れる。急に相内が切り出した。

「お前、変わったな。声が違う」

「そりゃああの時と年齢も違うからなぁ」

「そういう事じゃない。力がある」

隆一は黙った。コイツも変わっている。あのお調子者が。

隆一は言った。

「ちょっと話がしたいんだ。駅前のコーヒーショップで待ってる」

「分かった。今から行く」

「そうそう。1番はコイツだったなぁ。懐かしぃ」

歩きながら今は亡き先生にもらった住所録を眺めていた。

「目的地は・・・はぁ?いきなり仙台?面倒くせぇ」

ここ東京から車で何時間掛かるのだろうか。隆一は新幹線の

雰囲気がダメだった。少しトラウマがあって。

愛車のスカイラインももう何年も乗っている。隆一は金に関して

今まで使うことも無かったのでそれぐらいの余裕があったし、

免許を取ってすぐスカイラインを買った。子供の頃からの憧れ

の車。あのズシンとしたボディ。鈍い音を奏でるエンジン。走り

出したときのあのマフラー音。隆一は大好きだった。たくましい

気がした。他のどの車よりも。

早速家に帰り、支度を始めた。

「え~っとスーツケースはこっちだったかな?」

押入れをあさる。スーツケース(スカイラインのイメージが強い

青を買った。なんとなく)に服、食料、この計画のためにわざわざ

作ったノート、犯罪に使える様々な道具。出来るだけ詰め込んだ。

金は先日、銀行から全ての貯金の10分の1程度下ろした。

それでも30万くらいある。財布に入るか不安だったが何とか詰めた。

すでに満腹状態の財布。ポケットに入らない厚さにまで膨れた。

準備を整え終え、愛車のキーをテーブルの上から取り、一回部屋を

見回した。必ず帰ってくるぜ。待ってろ。

幼い頃に父からもらった帽子を今はお守り代わりにいつも鞄に入れて

いる。今日は持って外に出た。すでに昼の12時を回っていた。

マンションの階段を下り、駐車場を突っ切ってスカイラインの前に立つ。

ドアにキーを入れ、回し、大きくドアを開いた。ドサッと座り、エンジンを

回す。ブオォォンという何とも言えない音。たまらない。いつ乗っても。

それから助手席にスーツケースを乗せてミラーを出す。

「さぁて。行こうぜ。相棒」

計画に入る前に全員の居場所を調べなくちゃいけないなぁ。大体の奴が

東京、もしくはその近辺に住んでると思うが、そんなの分からないから面倒

くさい。だがやらなきゃいけない。だって殺すんだから。まず電話ボックスの中

に置いてある人名と住所が載っている本でクラスメイトと同じ名前をピック

アップしてその場所に行き、本人とは接触せずに近所から情報収集する。

かなり面倒くさいやり方。でもコレぐらいしか調べ方がない。自分が警察官

でもなけりゃぁな。しかし、結婚して名字が変わった奴はどうする。調べよう

が無い。・・・・・・そうだ。先生なら今のクラスメイトの居場所を知っているか

もしれない。決まった。最初のターゲット。先生。待っててねぇ(笑)


12月3日。天候は快晴。先生の居場所はすぐ分かった。母校に連絡した

ところ、まだ勤めているらしい。早速、明和市立明和中学校に向かった。

校長に話して、特別に許可をもらい屋上に呼び出した。

15分後。屋上のドアが開いた。

「なんだ。お前、まだいたのか。もうこの世にいないと思っていたが」

登場からムカつく。本当に教員免許持ってんのか?

「久しぶりです。加賀先生」

加賀清十郎。確か今、40になったのかな。もう年じゃねぇか。オレは冷静を

保ったまま言った。

「いやぁ。懐かしいなぁ。全然変わってないんでビックリしましたよ」

無言。シカトしやがったな。続けて言う。

「クラスのみんなも元気かなぁ?先生はみんなドコで何やってるか知って

ますか?」

「あぁ」

以外だった。昔の名残で「オレは知らん」と言うと思っていたのに。ラッキー。

「ボク、あのときの楽しい思い出が懐かしくってみんなに会いたくなったんです

 よ。それで先生ならみんなの住所知ってるかなって思って」

先生は早くしろといわんばかりの態度で言った。

「住所録やるからあとは自分でなんとかしろ」

そういってドアを開け、階段を下りた。


5分くらいたった頃、戻ってきた先生がオレに住所録と思われる紙切れを持っ

てきた。本当に大番狂わせだ。あの先生がオレの言うことをすんなり聞き入れ

ている。校長の力か?分からないが都合がいい。

「あぁ。どうもありがとうございます。助かります」

「もういいか?」

「本当に今までありがとうございました。さようなら。先生」


まず一人目。加賀清十郎。クリア。次は出席番号1番か。   

斉藤隆一(サイトウタカカズ)。お前は誰なんだ。何のために生きている。何を目的に?

いつもそう思う。いつも自問自答する。それが生きがいになってきた気がする。バカかオレは。

人間なんてこの世に何億も存在する。その中の1がオレだ。斉藤隆一。だがオレには

生きていく意味が分からない。子供の頃はただ学校行ってランドセルほっぽって遊んだ。

今は子供じゃない。れっきとした・・・大人なのか?でも、子供ではない。それは断言する。


1999年。当時15歳。中学3年。明和市立明和中学校3年5組にオレは居た。

だがほとんど居ないに近かったか。イジメだ。オレは特に何もしていない。原因不明の事件だ。

オレの席は一番後ろの窓側の席。校庭がよく見えた。机にはいつもの様に「死ね」。「消えろ」。

「ウザい」なんて書いてある(正確には彫ってある)。教科書ももう捨てた。使い物にならない。

文字が残ってない教科書なんて持っててもタダのお荷物だし。引き出しにはゴミばっか。

先生もオレには見向きもしない。何を聞いても「俺は知らん」だと。まぁそれだけで終わる

はずもなく、げた箱には靴ないし。トイレで水かけられるし。リンチされるし。体もボロボロ。


そんな屈辱をクラス全員にやられた。その時は気にしていない様な素振りをしていたが内心、

無茶苦茶にしたかった。殺したかった。だからこの日を待った。

2006年12月1日。オレの22歳の誕生日。HAPPY BIRTHDAY。オレ。

殺し方はパソコン。図書館で科学の本などから大体50くらい集めた。

それとこの事件から時効までかなりの期間逃げなければならない。殺しは時間の勝負。

遺体が見つかる前にこの国から出ればいい。パスポートを偽造してオレの名前を使わないで出る。

とにかく無名の国へ。そして何年も暮らす。まだその頃でも若い。充分第2の人生を送れる。



さぁて。出席番号順に。おっと。先生忘れてたよ。ゴメンね。先生。