隆一は相内の遺体を茂みの中に黒いゴミ袋に入れて車に戻った。
再び低いエンジン音を鳴らす。2、3回ふかした。ハンドルを握り、
サイドブレーキを下ろしてアクセル全開で雪見のところへ向かった。
20分後。雪見の自宅と思われるアパートに着いた。だが思われる
という考えはすぐに無くなった。雪見が外で待っていたのだ。このクソ
寒い中、何十分も待っていたのか。気の毒に。隆一は雪見の横に
GT-Rを止めた。助手席の窓を開けた。すぐに雪見が話しかけて
くる。(ちょっとウザイ感じがしたが)
「やっぱ本当だったのか!待ってた甲斐があったぜ!乗せてくれよ!」
隆一はそのテンションにあまり付いていけなかったがドアを開けた。
雪見がドスンと乗り、車体が震度5ぐらい揺れた気がした。大袈裟
か?すぐさまシートベルトを締め、準備万端!いつでも出発できま
すぜ!親分!そんな風に見えた。全くお調子者だ。全然変わって
いない。隆一は聞いた。
「久しぶりだ。全然変わってないな」
「そんな事、後でいいだろ?どっかいこうぜ?」
よし。その言葉を待っていた。
「さっき、いい景色の場所を見つけたんだ。そこでいいか?」
「OKOK!早く行こうぜ?」
ミスマッチな風景から青いスカイラインは犯行現場に向かった。
雪見は何の疑いも恐怖も持たず、何も知らずに興奮だけでここに
来た。これから何が起きるか知ったもんじゃない。雪見はスカイライン
に釘付けだ。ボンネット開けていいか?とか、どんなのをカスタムした
んだ?とか、あの頃の車好きな雪見はまだここに存在していた。
雪見に聞かれ、しょうがなく許してボンネットを開けさせたとき、エン
ジンに見とれている隙をついた。首にある急所をトンと突いた。
「カッ」と変な声を出して、雪見はエンジンの上にもたれかかった。
すぐさま作戦に取り掛かった。雪見を地面に下ろし、茂みの中から
相内を取り出し、雪見の髪の毛を抜いて相内の右手に握らせた。
そのまま崖から相内を落とした。遺書は必要無くなった。クシャクシャ
に丸めてポケットに入れた。あらかじめ持ってきていたロープを木に巻き
つけて、一番下の部分をわっかにした。雪見の重い体を肩車してその
木まで近付き、首をロープにかかるようにわっかに入れ、肩から雪見を
外した。その瞬間、雪見は目を覚ました。
「グッ!カッ!カハッ!うっ!」
そのまま力なくロープにもたれかかった。念のため脈を計った。もう無い。
完璧だ。作戦終了。隆一は最後に見直し、二人にさよならをした。
スカイラインに乗り近くのコンビニに向かった。
出席番号21番 雪見藤二郎 クリア