地方議員には「政務活動費」と称する国会議員の文書交通費にあたる政治活動費が支給されますが、使用目的が限定され、領収書の添付と残余金の返還が条例で義務付けられている理由は、財源が税であり、その使途を明確化・透明化することが議会の役割の基本だからに他なりません。

 令和6年度の国家予算の規模は112兆717億円で、実に島根県の予算の240倍に達する規模となっているように国会議員は、内政のみならず外交、防衛に至るまで私たち地方議員とは比較にならないほどの重責を担っていますが、TVの国会中継で繰り広げられる論戦の多くが、国政調査権を有する議員自身が住民生活の実態を取材した中から発せられる内容とは言い難い週刊誌由来のスキャンダルで、政治資金パーティー代金の還流(ネコババ)問題に至っては、立法府の員たる資格を返上して然るべき所作だと言われても仕方がないもので、極めて残念に思います。

 野党はここぞとばかり政治資金の裏金問題を追及しますが、そもそも、政治資金収支報告書の提出責任者を政治家ではなく会計担当者とする規定や政治活動費の記載省略の許諾などを規定した大甘の政治資金規正法を全会一致で制定したのは与野党の国会議員であり、裏金問題は自らが規定したルールを無視した議員が政治責任を取ることなく居座っていることに国民の怒りが増高し、昨日の世論調査では岸田内閣と自民党の支持率がともに20%を割り込んだとありました。

 加えて、国会議員に対しては歳費(給与)とは別に国庫から非課税で支給される月額100万円の「文書交通費」や使途明細を不要とする300億円を超える「政党交付金」の制度まで、何やかやの理屈をつけて改定されずに継続されていますが、この様を多くの国民が与野党のまやかしと見ており、支持する政党がないとする人が50%を超えている調査結果はその証左です。

 まさに「国民の政治不信極まれり」の状況を迎えています。しかし、岸田首相は国民の怒りの所在を見誤っているとしか言いようがありません。政治家の活動を支援する『政治献金』という寄付を必要不可欠とするなら、個人・団体にかかわらず、出入りを透明化すべきで、いわんや政治活動に対する税の給付を受けるのであれば、その使途を徹底公開することは議会人として当然の義務だと思います。

 多くの国民から自民党の国会議員は「遵法精神が欠けている」と見られており、もはや、政治資金および歳費以外の公的給付の使途を全面公開する法律改正を自らが早急に発議する以外に国民の支持を回復する道はないと考えます。しかし、その前にやることがあるはずです。議員が直接的な法律違反に問われたわけでは無いとしても、政治資金パーティの売り上げを過少申告し、『裏ガネ化』してきた事実を認めた以上、一刻も早く、自らが政治的・道義的を取って、関係者すべてが一定期間、議員報酬を返上するなど、一般国民に分かりやすい「けじめ」をつけるべきだと思います。