岸田文雄首相は7月14日の記者会見で、安倍晋三元首相の追悼を「国葬儀(国葬)」とすることを表明しました。戦前は大正15年の「国葬令」に基づいて、天皇・太皇太后・皇太后・皇后の葬儀が「大喪儀」、7歳以上で薨去した皇太子、皇太孫、皇太子妃、皇太孫妃及び摂政たる皇族と『天皇の特旨を得た国家に偉功ある者』が「国葬」と規定されていましたが、ポツダム宣言により「国葬令」は失効し、現在は、皇室典範第25条に規定された「天皇崩御に伴う大喪の礼」のみが国家儀式として行なう葬儀となっています。昭和42年に、戦後、初めて「国葬」として日本武道館で執り行われた吉田茂元首相の葬儀は、閣議で「国葬」と決定し、政教分離に基づいて宗教色を排して行われましたが、安倍元首相についてもこの例が踏襲されると考えます。葬儀の費用の全部を国が負担することには行政訴訟の提起を懸念する意見もあって、大勲位菊花大綬章頸飾の佐藤栄作元首相の葬儀が政府と民間有志の発起人による「国民葬」、同じく大勲位の中曽根康弘元首相と現職で死去した大平正芳元首相の葬儀が「内閣・自民党合同葬」とされた経緯があります。岸田首相は、元首相の功罪をあげて反対する野党や識者の意見を取り上げるマスコミが少なくない中で、55年ぶりに国葬とする決断に至った理由を「東日本大震災の復興、日本経済の再生、国際協調の推進などの功績は素晴らしい」「海外首脳から哀悼の声が相次いでいることなどを総合的に勘案した」などと述べましたが、「国葬儀」は、大多数の国民の共感を得る妥当な決定だと思います。