英国型変異株の蔓延によって新型コロナウイルスの感染が過去最多となる地域が続出し、緊急事態宣言は、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に愛知、福岡を追加して5月31日まで延長され、北海道、宮城、神奈川、埼玉、千葉、岐阜、三重、愛媛、沖縄の8道県がまん延防止等重点措置実施区域となっています。対象地域では、飲食店の営業制限やイベントの自粛等が実施されていますが、ウイルスの感染力が極めて強く、感染者の増加に歯止めをかけるためにはワクチン接種が有為な対策であることは1日の感染者数が6万人を超えていたイギリスで2千人を下回る水準まで減少したことが如実に示しています。ところで、新型コロナウイルス感染症は阪神淡路大震災や東日本大震災をはるかに上回る「国難」です。政府は1年分の国家予算に匹敵する対策費を注ぎこみながら、感染者の隔離や医療提供体制に関わる法令が未整備なため、現場と霞が関の対応に大きな齟齬が生じており、それが病床確保やワクチン接種の遅延となっているのは残念です。仄聞するところでは、日本全体の病床数約150万床中、新型コロナウイルス用に確保されているのは5%弱で、人工呼吸器に至っては1%程度しか提供されていないのは「感染症法」の規定が阻害要因で、ワクチンや医薬品についても「薬事法」に開発や臨床研究、承認等における緊急事態に対応する規定がなく、接種についても平時の法令順守が求められるため、「迅速対応は難しい」とのことです。先日の国会の集中審議でこうした議論がされず、感染拡大の責任や休業補償、五輪開催の有無に言及した意見が多かったのはいささか期待外れでした。