10月9日、松江市議会は市庁舎建設計画の再考を求める住民投票条例を賛成4・反対27で否決しました。本館、北館、別館などからなる松江市役所は経年劣化が進み、耐震不足が指摘されるなど新庁舎建設が課題となっており、松江市は5年前から新庁舎建設プロジェクトの策定に着手し、現在地で庁舎整備を進める計画が議会で承認されました。これに対し「市民の庁舎建設に対する合意形成が不十分」として再考を求める条例の直接請求が14,145人の署名を添えて市長に提出され、松浦正敬市長は「直接請求は市民の庁舎建設に対する関心喚起に貢献するが、計画の策定手続に瑕疵はなく、条例制定は不要」とする意見書を付して市議会に条例案を提案しました。市議会は直接請求された条例の提出者代表などから意見聴取を行った上で、9月定例市議会の最終日に採決しましたが、直接請求の動向を詳しく報じてきた地元紙は「市民の声届かず」とする1面トップに「閉鎖的市政浮き彫り」「避け続けた市民との対話」「不信感払拭へ説明尽くせ」とする手厳しい言論を浴びせています。有権者の1割近い署名を集めた直接請求の民意の重みは十分としても、地方自治体の首長には利害得失や時間軸などから為政者としての冷徹な判断を求められたことも事実で、住民から可否判断を委任されている議会も十分な時間と手続きを踏んだと判断されたのだと思います。今回の事案に学ぶ点は公報のありかたで、地方自治体の長と議会には「伝える努力」のみならず、代議制民主主義の委任の範囲を意識した「伝わっている確認」が必要だと感じました。