先ごろ終了したNHKの朝ドラ「まんぷく」で「私は『武士の娘』です」というフレーズは、武士の娘として厳格に育てられ、アメリカで作家として活躍された杉本鉞子(すぎもと えつこ)さんを想起させます。杉本さんは、明治維新の頃に旧越後長岡藩の家老の家に生まれ、英和女学院を経て結婚のため渡米し、事業の失敗や夫の死に見舞われながらも、作家に転向し、雑誌『アジア』に連載された日本の生活を紹介する『武士の娘』がベストセラーとなりました。後に、日本人として初めてコロンビア大学で日本語と日本文化の講座を持つなど、明治、大正、昭和にかけてアメリカで活躍し、高い評価を受けた日本女性で、NHKが2015年にドキュメンタリー番組を制作し、紹介しました。ところで、4月11日、世界貿易機関(WTO)の紛争処理の「二審」に当たる上級委員会は、日本が韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止措置を不当として提訴し、日本の主張を認めた「一審(紛争処理小委員会;パネル)」の判断を破棄し、韓国の主張を認める決定を下しました。WTOでの日本の敗訴は、日本産農林水産物の輸入制限措置を執る諸外国の取り組みを容認する根拠となるものであり、こうした「外交的敗北」は、国際社会に対する日本の情報発信力が弱いか「大丈夫」とタカをくくっていたからではないでしょうか。