8月29日午前5時58分ごろ、北朝鮮西岸から弾道ミサイルが北東方向に向けて発射され、6時6分ごろに北海道・襟裳岬上空を通過、6時12分過ぎに襟裳岬の東1180キロの太平洋上に落下したと発表されました。菅官房長官は記者会見で「航空機や船舶への被害は報告されていないが、ミサイルが日本の上空を通過したことは深刻かつ重大な脅威で、安保理決議等への明白な違反だ。北朝鮮の度を越した挑発行動を最も強い表現で断固非難する。」との政府見解を発表しましたが、J-アラートで警報され、マスコミ報道も一斉にミサイル関連に切り替わったものの、ミサイルに対する一般の受け止め方は「漠然とした危機感」で、暢気なものに映ります。ところで、燃焼には酸素が必要ですが、真空の宇宙空間を飛ぶロケットや長距離弾道ミサイルは燃料と酸素に相当する酸化剤を混ぜて燃焼させ、発生したガスを噴射することで推力を発生させて飛びます。日本のH-IIA/H-IIBロケットの燃料は液体水素と液体酸素という組み合わせですが、専門家によると、北朝鮮のミサイル燃料は「ジメチルヒドラジン」というアンモニア臭がする無色透明の液体で、致死量がわずか0・1ミリグラムといわれる「死の燃料」が使われているそうです。ヒドラジンは、体に付着すると熱を持っていなくても皮膚がただれ、大やけどのような状態になり、ガスの状態で吸い込むと肺水腫を発症して死に至るとされており、1996年に中国・四川省で「長征3号B」が墜落・爆発した時は、町がひとつ消滅したと言われています。ミサイルの落下地点が襟裳岬から1000キロ以上離れた太平洋上としても、サンマ漁が本格化する時期でもあり、周辺海域の海洋汚染が心配され、政府や自治体は丁寧な広報と落下物の除染に対する備えが必要だと感じます。