326日、エディオンアリーナ大阪で開催されていた大相撲春場所は千秋楽となり、横綱稀勢の里が13勝1敗で優位にあった大関照ノ富士を本割り、優勝決定戦ともに下し、逆転で貴乃花以来22年ぶり8人目の新横綱としての優勝を決めました。13日目の日馬富士戦で負傷し、14日目と千秋楽は左腕が利かない状況での強行出場には、かつて小泉首相から表彰式で「痛みをこらえて良く頑張った。感動した!」と総理大臣杯を渡された貴乃花を彷彿させ、八角理事長をして「語り継がれる逆転優勝」と絶賛させた『目に見えない横綱の力』は日本中を感動させました。稀勢の里の相撲に抜群の安定感があることは過去の成績が如実に示しており、誰もが認めるところですが、『ここ一番』での力強さに欠け、先場所の初めての優勝が大関昇進後31場所目であっただけに、まさに、『地位が人格をつくる』の通り、今場所は従前とは見違えるような風格が感じられました。稀勢の里は優勝インタビューで「何か今までとは違う不思議な力を感じた15日間だった」と語っていますが、江戸時代に書かれた剣術書に「勝ちに不思議な勝ちあれど、負けに不思議な負けなし」とあるように、壁を乗り越えた者が身につけた境地の有無こそが『横綱』と『大関』の差だと感じました。ただ、上腕の筋断裂が事実とすれば関取寿命を縮める懸念があり、完治まである程度の時間を費やしてでも、当分は怪我の治療に専念してもらいたいものです。