1月25日、出雲市平田学習館で、斐伊川下流部農地約3,728㌶の灌漑用水(農業水利)事業として平成16年度に着手された国営斐伊川沿岸農業水利事業の完工式が行われ、農林水産省、島根県、出雲市、土地改良区などの関係者80人が出席しました。斐伊川下流に拡がる斐川平野は県内屈指の穀倉地帯ですが、天井川の斐伊川は渇水期に干上がるため、安定的な農業用水確保が難しく、かつては住民の「水違い」とする諍いが絶えない地域でもありました。戦後の食糧増産を掲げて昭和29年に開始された「国営中海土地改良事業(中海干拓)」は、中海を干拓して10000㌶の農地を造成するとともに宍道湖を淡水化して農業用水に充てるとする一大プロジェクトでしたが、農業情勢の変化や環境保護などの観点から事業中途で変更・中断・延期・中止とされ、斐伊川沿岸農業水利事業は「干拓事業の後始末」として12年間に216億円の事業費をかけて取水口や用水路の整備、汐止堰や調整池の設置、水管理システムの導入などが図られました。坂井康宏中四国農政局長は式辞で「関係各位の理解と協力で懸案であった農業水利の整備が図られたことは感慨深いものがある」と述べ、奥田透農林水産省農村振興局整備部長が「整備した水利を活用して多用な農業の展開が図られることを期待している」とする農林水産大臣の祝辞を代読しました。関係者を代表して謝辞を述べた長岡秀人出雲市長は「立派な水利施設の完成により、かつて『水違い』で死人まで出るほどの地域だったが、いま、用水不足の声は小さい。今後は適切な維持管理に努め、有効活用を図りたい」と述べました。この事業の完了によって国営中海土地改良事業に関わるすべての事業が完了し、「昭和の国引き」は終了しました。