日本産科婦人科学会など17の学術団体の「国は子宮頸がんワクチンの積極的な接種を勧めるべき」との見解に対し、「ワクチンは危険」とする人たちが学術団体側の見解を撤回するよう求めたと報道されました。近年、予防接種の副作用(副反応)に対する危険性を理由にBCGやポリオなどのワクチン接種を拒否するケースが珍しくないと言います。

日本では、ポリオ、BCG、ジフテリア、百日せき、破傷風、麻疹、風疹、日本脳炎、小児の肺炎球菌感染症、Hib感染症、ヒトパピローマウイルス感染症を「A類疾病」とし、集団感染を予防するため予防接種を受けるよう努力義務が規定され、インフルエンザやおたふくかぜ、水痘、A型肝炎、B型肝炎など「B類疾病」の予防接種は任意接種とされています。

ワクチンには「生ワクチン」「不活化ワクチン(トキソイドを含む)」があり、生ワクチンは、生きている病原体のウイルスや細菌を弱めたものを接種して免疫力をつけるもので、MR(麻疹・風疹混合)、麻疹(はしか)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずほうそう)、BCG(結核)などがあります。不活化ワクチンは、病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使うため生ワクチンに比べて免疫力が弱く、何回かに分けて接種するもので、します。代表的なワクチンとしては、DPT-IPV四種混合(D:ジフテリア・P:百日せき・T:破傷風・IPV:不活化ポリオ)、DPT三種混合、DT二種混合、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌、不活化ポリオなどがあり、うち、ジフテリア、破傷風のワクチンは細菌から発する毒素を取り除いたトキソイドと言われるものです。

ヒトは、通常、決められた回数の予防接種を受けると、その病気に対する十分な抵抗力(免疫)が得られます。これは、ウイルスや細菌に一度感染すると、身体の中にその病気に対する免疫情報が長く残るという特性から、ほとんどの場合、その病気にかからないか、かかっても軽くてすむので、現在、日本では多くの感染症がほとんど無くなるか、発症例が極めて僅少になってきました。

そのため、一般に予防接種の必要性が軽視されつつあり、また、予防接種が個人の選択になっていることもあって、副作用(副反応)を理由に予防接種を拒否するケースが目立つようになっています。言うまでもなく、予防接種は、重症化する可能性のある感染症を予め予防する有効な手段であり、副作用(副反応)のほとんどは生体の一時的な生理症状で、感染症の罹患リスクに比べるときわめて小さく、感染症の拡大による社会の混乱防止の観点からも必要不可欠です。

 子宮頸がんワクチンについても摂取した場合のがん発生率が飛躍的に減少する有効性が確認されている以上、国が一定の副作用(副反応)に対する周知をした上で、ワクチン接種を奨励することは当然ではないでしょうか。