皐月の空を心地良い風をうけて鯉のぼりが悠々と泳ぐ姿に、子どもたちの健やかな成長を願う風習は、「黄河の急流に竜門と呼ばれる滝があり、その滝を登ろうと多くの魚が試みたものの登れたのは鯉だけで、登り切った鯉は竜になった」という中国の故事に倣ったものと聞きますが、日本のすばらしい伝統です。5月5日は「子供の日」。祝日法には「子供の人格を重んじ、子供の幸福をはかるとともに、母に感謝する」とあります。古くから季節の変わり目である「人日・上巳・端午・七夕・重陽」の五節句の時期に、薬草で体のけがれを祓い健康と厄除けをしてきた習慣が、貴族や武家で「上巳」に雛人形、「端午」に武者人形などを飾って子供の健やかな成長を願う節句行事になり、一般に伝わったと言われています。ところで、昨年の国勢調査で、全人口に占める日本の若年人口比率は12.8%(島根県は12.7%)で、老年人口比率26.0%(31.8%)の2分の1を下回り、あらためて少子高齢化が加速度的に進行している実態が明らかとなりました。少子化対策と言えば、保育所の待機児童数が象徴的に取り上げられますが、保育所や子ども園は、保護者の収入で保育料が規定されていることからわかるように、主たる受益者は子供を施設に預けて就労する保護者であり、子供の育ちを社会で支えるとする趣旨は従たるものとなっています。高齢者に偏った年金、医療、介護といった社会給付のあり方を見直しすることなく、少子化対策の重点を保育所の増設や保育士の待遇改善におくことは、少子化の本質を矮小化するもので、晩婚化の進展や出生数の減の加速にはほとんど効果はないと思われます。さて、わが家に今春8代目の後嗣が誕生し、初めての端午の節句となりました。爺としては子らに良い時代を残してやりたいと願うばかりです。