出雲市の漁村地域の疲弊は著しいものがあります。すでに出雲市の島根半島地域の中学校はすべてが廃校となり、合併時に8校あった小学校(分校を含む)も3校が廃校となり、残りの小学校もすべてが統合対象とされています。9月7日の出雲市議会の一般質問で出雲市の漁業・漁村政策を象徴するやり取りがありました。質問主旨は出雲市が70%の株式を所有し、3セクで運営する定置網の民間譲渡の根拠等を問うものですが、質問者が「いま、出雲市の漁村を支えているのは多伎、大社、十六島、塩津、小伊津の5つの定置網で、そこには若い就業者の姿も見える」と述べたのに対し、答弁者も同じ見解を示したのです。出雲市の島根半島沖には多伎、大社、十六島、塩津、美保、地合の6ヶ統の大型定置網があり、そのほかにも個人の小規模定置漁業が営まれています。魚価の低迷など厳しい経営環境下にあって、定置網漁業の経営者は、鮮度保持や省力化投資によって営業継続に必要な収益を確保し、高齢化の進展する漁村を支える基幹的役割を担っていますが、行政の担当者が定置網の存置する地域を十分に把握していない様に、出雲市の水産行政の現状が垣間見えました。通常、議会の質疑内容は事前通告されますから、こうしたケアレスミスは「あり得ない」のですが、市役所で漁村の現状が理解されていないとすれば、半島地域の衰退は加速度的になることは必至で、関係者の猛省を求めたいと思います。