参議院で安保法制の議論が始まりました。報道では国民世論は集団的自衛権の行使に否定的と伝え、国民の多くは、有事法制の整備を戦争の準備かのごとく受けとめているように感じます。そもそも、日米安保条約は、国連憲章で定められた集団的自衛権を容認して締結したもので、現条約には「集団的自衛の権利を有していることを確認して、米軍が基地を使用することを許される」と書かれ、第6条には、日本は条約に基づいて自国の領土を米軍に基地として提供しているが、その基地は日本のみならず極東(具体的には韓国と台湾、フィリピン)地域の平和と安全を守るために使われると明記されています。例えば、日本が攻撃されていなくても、韓国が北朝鮮に攻撃され、日本の基地から米軍が出動して韓国を支援すれば、国際法上は、紛れもなく日本の集団的自衛権行使になるのであり、北朝鮮は日本国内の米軍基地をミサイル攻撃することは必至です。また、日本国内の米軍基地は、有事の際、米軍に武器弾薬や兵力の補給を担う後方支援の要であり、日本が米軍基地の使用を許諾することは、日本が米軍の後方支援をすることと同義です。日本は日米安保条約を結んで、集団的安全保障体制を選択した時点で、集団的自衛権を容認したと考えることが自然で、批判を恐れて「集団的自衛権は有しているが行使できない」などとした従来の政府見解がおかしいのです。「集団的自衛権行使は違憲」とすれば「日米安保条約は違憲」となり、日本周辺の国際情勢、とりわけ、中国や北朝鮮の軍事的脅威や今後予想しうる緊急事態に対応するためにも、従来の矛盾を正すことは国政の責任です。自民党は、過去の奇妙奇天烈な答弁の誤りを改めた上で、参議院の審議において、より、徹底かつ丁寧に説明を尽くすべきであり、国民も周辺海域の波高が高まっていることを自覚し、戦争を未然に抑止するための方便について冷静に考えなければならないと思います。

(参考)
1951年に締結された日米安全保障条約の前文
平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。

1960年に改定された日米安全保障条約の前文
日本国及びアメリカ合衆国は(中略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって次のとおり協定する。