沖縄県知事選で米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を容認した現職が敗れた。橋本内閣が基地負担の軽減を方針決定してから20年近くが経過しながら、国政上の最重要課題であるはずの安全保障を置き去りにした「基地はイエスかノーか」という構図の選挙結果をどう受け止めれば良いのだろう。今回の結果は、地政学的側面があるにせよ、国土面積の0.6%の沖縄に全国の74%の米軍専用施設が集中する現状に「日本国民全体で安全保障を考え、応分の負担をしてもらいたい」という沖縄県民の言い分を脇に置き、振興策とセットで米軍基地の維持を図ってきた日本政府の「基地は迷惑施設」とばかりの政策展開が、民主党政権の県外移設断念や新型輸送機オスプレイ配備などを契機に県民の不信感、憤りを増幅させ、結果として振興予算の増額などの従来手法が通じなくなったことを如実にあらわしている。政府首脳は「選挙結果にかかわらず、基地の移設を粛々と進め、負担軽減を図るべく努力する」と言うが、選挙で示された民意の否定は地方自治の否定で、民主主義国家として、方針の修正は致し方のないところである。国政にあたる関係各位には、中国の海洋進出という新たな周辺事態もあり、早急に国防のあり方と米軍を含めた基地の再配置について抜本的な議論の上、速やかな対処をお願いしたいものである。