東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相が、ソチ五輪のフィギュアスケートの浅田真央選手について、最後の競技直前に「あの子は大事なときに必ず転ぶ」などと発言し波紋を広げていますが、ビーンスター株式会社代表取締役でコミュニケーションアドバイザーの鶴野充茂氏は、「大勢の人前で話す時、リーダーは、『5人の聞き手』がいることを意識しておくことが、失言を防ぐ秘訣だと次のように述べています。
 『5人の聞き手』とは、1人目は、直接メッセージを伝える相手、つまり「講演の参加者である聴衆」。2人目は、メッセージを「広める人」で、新聞記者やメディアなど、講演を聞いて、「その場にいない人」に伝える人たち。3人目は、「感情的に反応する人」で、報道を見て激怒したり、ファンになったりする人。4人目は、「自分で確認する人」で、発言に疑念を持ったり、報道に違和感を感じたりする人。5人目は、騒ぎに「便乗する人」で、騒動を大きくし、「どう思うか?」と聞いて回るメディアはその典型だと。
 発言に対する反応は、激怒する声、発言の趣旨を調べて報道の仕方を問題視する声、全体を見た上でやはり発言に問題を感じるという声など、実にさまざまですが、リーダーは、聞き手の「視点」、特に、意識や感情を持って聞いている人たちがいることを意識して話すことで、失言は防げると言います。
 発言の一部を取りあげるメディアの恣意的な報道は今に始まったものではなく、仮に恣意的で、悪意を持ったものでも発言していない言葉が報道されることはありません。『5人の聞き手』とは、いわば「異なる文化圏の人」で、同じコミュニティの人やいつも話をする人とは違う視点を持っている人たちのことであり、リーダーはその役割から、自分と同じ領域の人とだけではなく、別のタイプの人たちとコミュニケーションを取る必要があり、自分の常識が通用しない場合があるということを常に意識して発言することが必要だとしています。