中沢啓治作の被爆体験漫画「はだしのゲン」について、松江市教委が昨年12月、市内の全小中学校に「描写が過激だ」として、教師の許可なく自由に閲覧できない閉架措置を求め、すべての学校が応じていたことが大々的に報道されている。
この漫画は原爆被害を伝える作品として全国の教育現場で広く活用されており、約20カ国語に翻訳されている作品だが、松江市では昨年8月に「間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に出され、12月議会で「不採択」とされた。が、市教委は議会審査の過程で出された意見を斟酌して、閉架措置として貸し出さないよう求め、市内の小中学校49校中、全10巻を保有している39校全てが閉架措置を取ったとある。
松江市教委の古川康徳・副教育長は「『はだしのゲン』は平和教育として非常に重要な教材で、教員の指導で読んだり授業で使うのは問題ないが、過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切と判断した。」とコメントしているが、「事なかれ」と時代錯誤の典型で、戦争や原爆投下がいかに悲惨なものかを問う作品の本質を離れ、一場面を取り上げて過激だとする姿勢には教育という視点が欠けているように思う。
歴史的事実から目を背け、指導者や大人に都合の良い情報だけを選別しても、子供に情報を読み解く能力は身に付かない。残酷だからこそ、過激だからこそ、そこから生ずる強烈な情操の変化が成長につながるのであり、教師や保護者に子供を指導・教育する場面が生ずるのである。今回の事案は島根の教育力の劣化が進行していることを如実に顕したもので、看過できない深刻な事態だと認識している。