「国土交通省は19日、経営が厳しいバスやフェリーなどの公共交通機関を支援するため、2011年度概算要求で、今年度予算(193億円)の倍以上にあたる約400億円を要求する方針を固めた。」と報道された。政府が、高速道路の原則無料化方針で地方鉄道やバス、フェリー会社などの経営を圧迫する一方で、生じた地域交通の事業会社の赤字を穴埋めするという政策の矛盾を来年度以降も続けると言うのだろうか。
 平成22度の国の一般会計予算は、税収が37兆円に対し、国債その他で55兆円となっている。「不況の克服」を理由に、負担よりも給付の拡大に主眼がおかれているが、財政支出の内容には小首を傾げる内容も多い。警察や消防・防災、義務教育など、国民が等しく恩恵を受ける基礎的な行政サービスが無料であることは当然としても、付加サービスとなる高速道路や高校教育の授業料などが財源が明示されないまま無料化されていることなどはその代表例である。
 とりわけ、高速道路は鉄道ならば「特急」「新幹線」に相当するもので、時間短縮の利点に対する料金徴収は当然で、大方の社会的理解もある。今年度に社会実験として一部地域で高速道路の無料化が実現(島根県内の高速道はすべて無料)されているが、国も地方も「打出の小槌」を持っているわけではない。適正な負担と給付のレベルについて再検討しなければ「やらなくてはならない」施策の財源が不足し、結果として行政サービス全体のレベルが低下するのは必至だと思う次第である。