ついに、鳩山由紀夫内閣総理大臣が退陣しました。昨年夏、国民は、政策や政権運営に対する多少の不安よりも、圧倒的な価値を政権交代に求めました。何よりも優先した事項は、既得権益の打破であり、既存の統治構造と権力者の癒着を断つことにあったと思います。東西の冷戦構造が崩壊し、日本社会の成長が鈍化するなかで、「国土の均衡ある発展」を掲げる従来の富の再配分が、社会システムとして成り立たなくなったことが「自民党の賞味期限切れ」と言われる所以です。税収が痩せた代替財源を赤字国債に求め、従来手法で地方や業界・団体に配分する政策に、国民は、明確にノーを突きつけました。鳩山総理退陣について、直接の原因は「政治とカネ」「普天間問題」などに対する一連の不手際であることは論を挨たないところですが、底流には、この8ヶ月余、国民に見せつけられた民主党の政権運営手法は、旧権力の支援団体や業界を締め付け、新たに囲い込むというものであり、「従来とどこが違うのか」という失望があります。第94代内閣総理大臣には、菅直人副総理・財務大臣の就任が確実視されていますが、総理大臣が代わったからと言って普天間の問題が進展するとは思えません。また、税収を超える国債発行、いわゆる「売り食い」状態の拡大が行き詰まることは自明で、増税なしに平成23年度の予算編成は不可能です。「国民がなぜ政権交代を選択したのか」を、民主党、自民党のどちらが正面から受け止め、時代と国民が求める国家戦略を描くことができるのか、鳩山総理の退陣を聞き、2大政党に与えられた時間はそう多くないと感じました