ランボー デジタル修復版(字幕版)
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ランボーが帰って来る。と言っても、シリーズの人気を決定づけた80年代の1~3作目が4Kレストア版で劇場公開される。
『ランボー』シリーズを初めて観たのは、実は2作目の『ランボー/怒りの脱出』。小学生時代に1作目を観ないで映画館で鑑賞。復讐に燃えるランボーの生きざま、アクションのつるべ打ち、ジェリー・ゴールドスミスの胸躍るアクションスコアにひどく興奮。ベトナムで捕虜になった米兵をランボーが救出に向かうという“映画だけで成立した物語設定”を当時は深く考えずにノーテンキに楽しんでいたが、のちにアメリカ政府が「ベトナムに米国人の戦争捕虜が存在するという証拠はない」と公式見解を示し、なにげに本作を否定されたような少々寂しい気持ちにもなった。その一方で、本作を観たベトナム帰還兵がスタローンに「私はあの映画に救われた」と感謝の手紙を送ったというエピソードを聞いてちょっと感動もしたり。
しかし“ほぼ架空の戦争ストーリー”とはいえ、一人のアメリカ人が大勢のベトナム兵を殺しまくる映画に称賛を送る批評家はほとんどおらず、ラジー賞では作品賞など4部門を受賞。景気のいいアクション・ストーリーはかなりアメリカバンザイ!感満載だが、それでもやっぱり今でも観てしまう。『ターミネーター』で出世する前のジェームズ・キャメロンが書いたオリジナルストーリーで観たかった気もするけどね。そういえば米国では同年に公開されて大ヒットした『ロッキー4/炎の友情』も批評家からは「ロッキーをランボー化しただけの空虚な凡作」と叩かれてたのを思い出した。あとうちの母ちゃんが婦人会かなんかの旅行のバスで本作を観て「すごい面白かったわ~!」と語ってたのも思い出した。
2作目が好きすぎたこともあってか、順序は逆になったが後にレンタルビデオで観た『ランボー』は、“アクション基準”で観てたこともあり当時はあまりハマれなかった。しかし何度か観返していくうちに祖国のために戦ったのにアメリカに戻ったら居場所がなくなっていたランボーの悲哀と当時の米国の社会問題を切実に描いた、シリーズで最もドラマ性が高い傑作であることに気づき、今となってはシリーズ最高作であることは間違いない(あれだけ人を殺しまくったランボーがネズミごときにビビる場面はちょっと可笑しかったけど)。2作目を先に観たせいか肉体改造前の青年ランボーがフレッシュに映った1作だった。
そして期待して劇場に向かった『ランボー3/怒りのアフガン』は正直あまり好きになれなかった。アクションは2作目の焼き直し感が否めず(音楽も前作をまんま流用している場面がいくつかあった)、印象に残ってる場面はランボーがアフガン民とゲームに興じてるシーンや、自ら火薬を使ってのたうち回りながら怪我を治すシーン、ランボーにミッションを依頼するオッチャンが『ロボコップ』の悪党だったことぐらい(笑)。
前作の信ぴょう性のない捕虜奪還劇が不評だった反省を踏まえ、「アフガンを侵攻しているソ連とランボーが戦う内容なら誰も文句は言わないだろう」という発想のもとで作られたとしか思えない本作。しかし、米国公開直前にソ連がアフガンから撤退するという最悪のタイミングで封切られ、さらにエンドロールでは「すべてのアフガン戦士」に捧げたのに、その彼らがのちのタリバンの台頭となりアメリカの敵となったのは何とも皮肉。今では「ランボーは一体誰と戦ってたのか?」と失笑されている不遇な1作とも言える。「108人も殺害した最も暴力的な映画」という不名誉な記録でギネスブック認定もされた。興行は苦戦しシリーズは一旦打ち止めとなったが、「出来が良くない『ランボー3』で終わらせたくなった」とスタローン本人が20年後に自らの手でランボーを復活させる。ウクライナを侵攻しているロシアが世界中から非難されている今となってはまた違った目線から見られるかもしれない。
絶賛されている1作目と賛否分かれる2、3作目だが、感受性豊かな(?)映画好き少年として育った時代に映画館、レンタルビデオ、テレビで何度も夢中になって楽しんだ『ランボー』3部作を4Kレストア版で大スクリーンで再見できるのは嬉しい限り(4K ULTRA HDのBOXを買ったにもかかわらず)。今回の4Kレストア版のポスタービジュアルは『ランボー』日本公開時のデザインをリスペクトしたもので、シリーズファンにはニクイものに仕上がっている。
10月25日公開。