祝BD化記念!『バタリアン』金曜ロードショー版日本語吹替え&DVDを徹底レビュー(再録) | ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁

祝BD化記念!『バタリアン』金曜ロードショー版日本語吹替え&DVDを徹底レビュー(再録)

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日本盤ブルーレイのリリース決定を記念し、2010年1月にアップしたブログ記事を再録(一部加筆修正あり、ネタバレあり。情報はすべて掲載当時のものです)

 

 


85年、世間が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で盛り上がっている中、ホラー映画史に残る1本の作品が公開された。


それが「バタリアン」


ダン・オバノン監督が名作ホラー「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の番外編的な後日譚として製作したホラーコメディで、「ナイト~」のスタッフが書いた原案を基にオバノンが脚本化した。「ナイト~」へのオマージュとパロディを盛り込み、頭を破壊しても死なない、走って襲ってくるなど、従来のゾンビの常識を覆した設定に、ホラーファンは唸った。28日後・・・』などにも影響を与えた“爆走ゾンビ”先駆的作品となった。

 

キョーレツなインパクトを残すバタリアンたち。絶妙にブレンドされたホラーとブラックな笑い。そしてパンクを全編に配した奇抜な演出。コメディとはいえ、シリアス&バイオレンス描写にも手を抜かず、ただの“おふざけホラー”にしていないのはオバノンのすごいところ。バタリアン化する前に自ら焼却炉の中に身を投じるフランクの自死シーンは今でも泣ける名場面だ(笑)

 

「笑いと恐怖は紙一重」とはよく言ったもんです。チュー

 

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原題は「THE RETURN OF THE LIVING DEAD」。当時の配給元である東宝東和が付けた邦題の「バタリアン」とは、“大隊”“大群”を意味する。まさにバタリアン(死人)が大挙して人間に襲いかかる。原題以上にインパクトのあるこの邦題は『サンゲリア』『サランドラ』と並ぶ名邦題となり、のちに“オバタリアン”という流行語も生んだ。さらに東宝東和はゾンビ・キャラに「ハーゲン・タフ」「オバンバ」「タールマン」勝手気ままにネーミング。元々、これらゾンビにはそういった名前はなく、日本公開版、ソフト版の字幕は東和命名のキャラ名がそのまま使われている。


しかしその名前があったからこそ、ジェイソンのように知名度が広がったとも言われており、オバノン本人にも認可されていたという。

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また公開時、東和はバイオSFX方式上映というハッタリもかます。特別なにが起こるわけでもなく、むりくりに盛り上げようとする誇張宣伝は“東和方式”と呼ばれ、寛大な映画ファンは???になりながらも追及することなくそれを受け入れていた。

 

米軍のミサイル攻撃により、バタリアンもろとも登場人物全員がフッとんでしまうバッドエンディング「悲劇でした。でも雨がすべてを洗い流してくれます」と淡々と話す米軍大佐。悲劇とユーモアが入り混じる結末は衝撃的だった。エンドクレジットでは、ロックと共にハイライトシーン集が流れ、最後まで楽しませてくれる。

 

「映画はウソなのか!?」

「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」
 

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■バタリアン弱者のためのバタリアン講座


1.バタリアンとは、米軍が開発した殺人ガス兵器、トライオキシン245を浴びて生き返った死人のこと。いうなればゾンビ

 

2.人間を襲う理由は脳みそを食べるため。食べると苦痛が和らぎ、人肉そのものには興味がない。2作目では動物も襲っているから、人以外の脳みそでも効くようだ

 

3.死人なのに走って襲ってくる。筋肉は腐乱しているはずなのに疾走できるのも謎だが、トライオキシンが筋肉に変異を及ぼしたという説もあり。でも2作目ではまたノロノロゾンビに戻っている

 

4.思考力があり言葉を話す。無線で救急車やパトカーの応援を呼ぶなど結構ずる賢い。2作目では車も運転している

 

5.頭をかち割っても首を切断しても死なない。しっかり焼き殺すか、電流を流して殺すしかない

 

6.1作目のトラッシュのように襲われた人間もバタリアン化する場合もあればしない場合もある

 

7.アゴの力はハンパなく強いと思われる。だって頭蓋骨も噛み砕いて脳みそを食べるぐらいだから

 

8.腕力、脚力も強いはず。だって棺桶から抜け出して深く埋められた地中から這い出てこれるぐらいですから


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■一度見たら忘れられないバタリアンズ! (登場順)

 

●縦割り犬
ユニーダ医療倉庫に獣医学校用に保存してあった標本のイヌ。内臓丸出しでも“キャイ~ン キャイ~ン”と復活する

 

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●ハーゲンタフ
入荷されたばかりの新鮮な死体。頭にツルハシをブチこんでも、バラバラに切断しても、元気ビンビン。コイツを焼却して薬剤がしみ込んだ煙が雨で墓地の地中に染み込み、バタリアンが大量復活。ちなみに東和名は、ハゲでタフだから“ハーゲンタフ”

 

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●タールマン
米軍が細菌兵器で甦った死体を秘密裏にドラム缶に収納されてたやつ。手違いでユニーダ倉庫に運ばれて地下に保管してあったが、フランクが余計な事をしたためガスが噴出。空気に触れてしまいドロドロのタール状に溶けてしまったことから、
東和名“タールマン”と名づけられる

 

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●ガイコツ
ギンギンのロックと共に現われたバタリアン。
シャレコウベなのに眼球がある

 

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●オバンバ
本作で最も愛されるババアキャラ。脊髄をピクピク動かしながら、
バタリアンがなぜ人間の脳みそを食べるのかその理由を教える。元々は金髪で、赤毛に見えるのは血を浴びたから


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■バタリアンに追われるキャラたち

 

●フランク
ユニーダ医療倉庫の倉庫長。タールマンのドラム缶から噴き出したガスを
吸ってしまい自分もバタリアン化。変わり果てた同僚のフレディを見て絶望する


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●フレディ
ユニーダ倉庫でバイトを始めた学生。フランクと同じく
ガスを吸ってしまい
バタリアン化。ついには恋人ティナの脳みそを求めるようになる。硫酸で目を潰されたり、最後までカワイソウなやつ

 

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●バート
ユニーダ倉庫の社長。親友のアーニーにハーゲンタフの
焼却をお願いし、さらに被害を拡大させた張本人

 

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●アーニー
ユニーダ倉庫近くにある火葬場に勤めるバートの親友

 

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●トラッシュ
フレディの不良仲間の一人。ストリップ癖があり「私は年老いた男たちに生きながら食べられるのよ」と嬉しそうに話し、その通りになる。こいつもバタリアン化


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■金曜ロードショー版をチェック!

「いやあ~映画って本当に面白いものですね」。
水野晴郎氏の解説が懐かしい。


解説では「監督のダン・オバノンさんはホラー映画に対してものすごい愛情があるわけですね。その愛情がこの映画をパロディとして見事に仕上げてるわけです。ですから観てて笑い転げてくるわけですよね!」「さあ、恐ろしいですよ! トイレに行けなくなるかもしれませんよ~」と愛情たっぷりに解説。


●TV版では以下の残酷描写をカット(尺はほぼ変わらず)

・ハーゲンタフの頭にツルハシが突き刺さるカットと糸鋸で首を切断するカット
・スーサイドがタールマンに頭をかじられるカット
・救急車の無線を使って応援を呼ぶバタリアンが、救急隊員の脳みそを食べているカット(救急隊員の頭が半分なくなっている)
・フレディの不良仲間(モヒカンの奴)の頭をかじるオバンバの胴体を、バートが斧で切断するカット、アーニーが鉄の棒で刺したオバンバを運び出そうとするカット
・現場に駆け付けた警官が脳みそを喰われた救急隊員を確認するカット

 

ちなみに、オープニング・タイトルでハーゲンタフが甦るカットでは、袋のガサガサ音が足されていた。こういう細かい演出がニクイ。ただし吹替版は東宝東和キャラ名はほとんど活かされておらず、「オバンバ」や「タールマン」はあえて無視されている(笑)

 

 

●DVD版字幕とテレビ版吹き替えの違いを徹底検証

 

DVD
フランク 「『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を見たか?」
フレディ 「死体が人間を喰う映画だろ。見たよ」

吹替え
フランク 「お前さん、あれ観たかい?『ソンビの夜』って映画」
フレディ 「ああ、あれね。死人が人を襲って喰うってやつだろ」

 

フランクがフレディに米軍のガス兵器事故の経緯を話すシーンだが、やっぱりここは「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のほうが良かった。ちなみに劇場版でも「ゾンビの夜」と訳されている。

 

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DVD
フレディ 「漏れない?」
フランク 「大丈夫。軍技術者団体の作ったタンクだ」

吹替え
フレディ 「まさか漏れないだろうな?」
フランク 「漏れる? 陸軍が作った特製の棺桶だぞ、こいつは」

 

“陸軍が作った特製の棺桶”はナイスな吹き替え。

 

DVD
フランク 「殺せんぞ」
フレディ 「そうさ! ハゲのタフ野郎だ」
バート  「まったく。ハーゲンタフだ」
フランク 「酸を使おう」

吹替え
フランク 「一体 どうすれば殺せるんだ」
フレディ 「どうやっても死なないのかもしれないぞ」
バート  「何も残らないように溶かしてしまう方法があれば」
フランク 「酸だ」

 

DVD版は会話がメチャクチャ。実際はこんなこと一切喋ってません(笑)。

 

DVD
若者たち 「あの声よ!」「黙って聞け!」
アーニー 「なんだ?」
若者たち 「バタリアンだよ!」
アーニー 「バタリアン?」
若者たち 「墓から出てきた死人の群れよ!」

吹替え
若者たち 「あの声が聞こえないの?」「黙ってよく聞いてみろよ」
アーニー 「なんだあれは?」
若者たち 「死人どもがわめいているんだ!」
アーニー 「死人がわめく!?」
若者たち 「ええ、そうよ。お墓の中から這い出してきて私たちを追いかけてきたの!」

 

こちらも東和字幕で何の説明もなくいきなり「バタリアンだよ!」とかます(笑)。

 

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DVD
アーニー 「車が襲われた! 恐ろしかった! 救命士も奴らに殺された! 車には乗れん。これはもう警察を呼ぶしかないよ」

吹替え
アーニー 「バケモノだあ! 車のまわりにウジャウジャ! 恐ろしいゾンビだ、奴ら! ア~アッ! 救急隊が死んだ、救急車には一歩も近づけない。おいバート、警察だ。警察を呼ばなきゃ大変だ! ゾンビだ、ゾンビ! ア~ア~~! ゾンビ! ア~~ア~~!」

 

吹き替えのセンスの良さが発揮されたシーン。「ゾンビ!ゾンビ!ゾンビぃ~~!」の連呼がケッサク。

 

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DVD
アーニー 「名前は?」
オバンバ 「オバンバ」
アーニー 「なぜ人間を襲う?」
オバンバ 「人じゃない、脳みそだよ」
アーニー 「脳だけ?」
オバンバ 「そうよ」
アーニー 「なぜ?」
オバンバ 「痛みのせいだよ」
アーニー 「何の痛み?」
オバンバ 「死んでることの痛みだよ」
アーニー 「死は苦痛なんだ」
オバンバ 「その痛みを全身で感じてる」
アーニー 「脳を食べるとどうなるんだ?」
オバンバ 「食べると痛みが消え去るんだよ」

吹替え
アーニー 「おい、聞こえるか?」
オバンバ 「アアア~~」
アーニー 「なぜ人間を喰うんだ?」
オバンバ 「人間じゃない、脳みそだよ」
アーニー 「脳みそだけか?」
オバンバ 「そうさ」
アーニー 「なぜ?」
オバンバ 「痛みのせいだよ」
アーニー 「痛みがどうした?」
オバンバ 「死人の苦痛はたまらない」
アーニー 「苦痛って・・・死んでるのによ」
オバンバ 「この体が朽ちていくのが感じられるわ」
アーニー 「脳みそを喰うとどんな気分がするんだ?」
オバンバ 「痛みがほんの少し和らぐのさ」

 

DVDでは「オバンバ!」と自己紹介する迷シーン。吹き替えオバンバの「死人の苦痛はたまらない。体が朽ちていくのが感じられるわ」は、死人ですら苦痛に感じる兵器ガスの威力のすごさを思わせる名ゼリフ。

 

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DVD
アーニー 「バート、君の借りは帳消しだ」

吹替え
アーニー 「バート、お前さんには貸しがあったな。返すまで死ぬなよ」

 

吹替版の方がアーニーとバートの関係性が良く出ている。

 

DVD
バート 「墓地にいる化け物どもは人間を食べるんです! もうとても手に負えない。早く助けに来て下さい、お願いだ」

吹替え
バート 「墓地のまわりにいる連中は普通じゃないんです! 奴らに捕まったら最後、誰でも喰い殺されてしまう! 狂犬病みたいなもんだが伝染はもっと早い! だから一刻も早く助け出してくれ! 頼む、今すぐに!」

 

吹き替えの方がバタリアンの怖さが感じられる。

 

DVD
「映画はウソか!?」
「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」
「悪くない質問だ」

吹替え
「あれは作りものか!?」
「もっともな質問だ」
「もっともな質問だ」
「もっともな質問だ」
「もっともな質問だ」

 

エンド・クレジットの名ゼリフ。両方とも好き(笑)。


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■DVD版をチェック!

 

DVDはフォックスから何度か発売されているが仕様は一度も変わっていない。画質は今の基準にしたら標準クラスだが、ビデオやLDに比べたらかなり良い。

 

当時のビデオやLDは劇場公開版のフィルムをそのままテレシネしたもので、暗い場面になると何が映っているかわからないぐらいひどいものだった。当時の東宝東和がテレシネしたフィルム質は劣悪なものが多く、本作も例外ではなかった。字幕も手書き風のシネマフォントなので上映フィルムをそのまま転用したことが明らかだった。


DVDでは、トラッシュの赤毛が鮮明に見えるぐらいの高画質に。ただ、LDの汚い画質のほうがかえって『バタリアン』のおぞましい雰囲気を醸していて、特にオバンバはLDのほうが腐敗感がより出ている。DVDだとキレイすぎていささかゴム人形に見えてしまうのだ(笑)


あと、劇場版(LD)とDVDで微妙な編集の違いがあった。タールマンの声が劇場版より若干変わっていて、「ブレイ~ンズ!」が少し低音ボイスになっている。でも、エンド・クレジットでのタールマンの声は“劇場版”のままなので聴き比べてほしい。少しだけだが変わっていることに気づくはずだ。また、フランクが自死する場面では、劇場版では音楽が最後まで流れているが、DVD版では途中でフェードアウトしていて、フランクの断末魔の叫びがハッキリと聞こえるように

 

DVD版の字幕は東宝東和版をほぼそのまま流用。「そうさ! ハゲのタフ野郎だ」「まったく。ハーゲンタフだ」など、初めて観る人には意味不明な字幕がいくつかある(笑)

 

個人的には「正しい翻訳字幕」も選べるようにしてほしかった。

 

ちなみに2008年10月には、「カルト・コレクション」としてパッケージを“日本仕様”にリニューアル。これは劇場パンフレットと同じデザインを使用している。ファンはアメコミチックな米国仕様のパッケージよりもこっちのほうがなじみがあるのではないだろうか。DVDそのものは同じ仕様だ。


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でも、僕はタールマンを主人公っぽく使ったLDのジャケットのほうが好きだけどね。

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米国盤では、2007年にキャストのコメンタリーなどを追加したコレクターズ・エディションでリニューアルリリースされている。


TV版日本語吹替、正規翻訳字幕版を追加収録をして、音声をdts・5.1chサラウンド化し、さらに新たな特典を盛り込んだアルティメット・エディションを出してほしいものです。


できれば今度はブルーレイで!

 

 

●ダン・オバノン監督のコメンタリーから『バタリアン』裏ネタを拾い読み!
 

・フランク役は実は当初、ロメロ本人が演じるはずだった
・当初、トビー・フーパーが監督するはずだった
・ドラム缶から出る黄色い煙は硫黄煙で、何日も臭いがとれなかった
・標本の蝶は、図鑑から写真を切り抜いて中心を少し折ってボードにピンを止めたもの。それを少し離れたところからボール紙であおいで風を送った
・本作は男向きの映画だと思ったのでヌードシーンを入れたが、公開されたら男女半々だったので甘かったと反省した
・火葬炉はアウシュビッツのガス室をイメージして作った
・骸骨が墓から出てくる場面を初めて観た時はガッカリしたそうだ。「ラフモデルが上出来だっただけにあれが本番用と知って愕然とした」
・本物の牛の脳みそを食べた人にはボーナスを出した。監督が最初に食べて見せた。

 

 

次回は『バタリアン2』をテッテイレビューします!