ボクと『ゴーストバスターズ』。アイヴァン・ライトマン、ありがとう。 | ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁

ボクと『ゴーストバスターズ』。アイヴァン・ライトマン、ありがとう。

 

18:41Update●関係者、関係企業の哀悼ツイートを追加

 

※『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレがあります

 


『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を2回観ました。親から子へ、親のGB愛がしっかり受け継がれた素晴らしい続編でした。

その『ゴーストバスターズ』の生みの親であるアイヴァン・ライトマン急逝のネットニュースに、PC画面に向かって思わず「え、嘘でしょ」と声が出ました・・・・。75歳。亡くなられた原因は公表されていません。


『ゴーストバスターズ』を映画館で観たのは11歳の時。公開された1984年は映画界がとにかく潤ってた豊作の年でした。『風の谷のナウシカ』『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』『グレムリン』『ストリート・オブ・ファイヤー』『ライトスタッフ』『プロジェクトA』『スパルタンX』『お葬式』『ポリス・アカデミー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』・・・・・。

そして12月に『グレムリン』『ゴジラ』と並んで“3G対決”として注目されていた1本の映画が『ゴーストバスターズ』でした。『グレムリン』は80年代の映画界を席巻していたスピルバーグ印のファンタジーであり、『ゴジラ』は9年ぶりの新作として話題に。で、『ゴーストバスターズ』はその年の夏のアメリカでなにやら大ヒットしているSFコメディだと。当時、映画情報は映画誌から得るしかなく、「スターログ」や「ロードショー」で特集が組まれており、映画オタク化していた小学生の私は期待に胸を膨らませていました
(笑)


 

なにせ同時期公開の『ゴジラ』の劇中でもゴジラが暴れまくる有楽町のビルに『ゴーストバスターズ』の看板がチラッと映るぐらいだから、日本でもその注目度の高さがお分かりいただけるでしょう。




『ゴーストバスターズ』のキャストはアメリカでは「サタデーナイトライブ」などでおなじみの面々ですが、日本ではさほど知名度があったわけでもなく私もほとんど知りませんでした。かろうじて知ってたのは、ダン・エイクロイドは「『ブルース・ブラザース』の人だ」、シガニー・ウィーバーは「エイリアンと戦ったリプリーだ」、リック・モラニスは「『ストリート・オブ・ファイヤー』のあの兄ちゃんだ」
(同年の夏に劇場で観てた)というぐらいで。しかも当時はスピルバーグ映画に夢中だった私は、SFやアクション、クリーチャー系映画は大好物だけどアメリカのコメディにはあまり興味なかったし、「全員集合」や「ひょうきん族」は大好きだったけどはたして日本人の肌にアメリカンコメディは合うのかななどと、エラソーに考えながら(こんな評論家ぶったことは思ってなかったけどそれに近い感覚はあったかも)、「本当に面白いのかな」という懐疑的な部分もありました。

友人とその父親に連れられいざ京都スカラ座へ。『ゴーストバスターズ』が始まってからはもうスクリーンに釘付け。ライブラリー・ゴースト、スライマー、テラードッグ、そしてデヴィッド・ボウイ風なゴーザとスクリーン狭しと大暴れする奇抜なゴーストに夢中になりました。

 

 

コメディシーンもすんなり受け入れることができ、GBメンバーの掛け合い、応酬にニンマリ&爆笑。とにかくFUNNYシーンの多いこと。ピーターが可愛い学生を口説くための電気ビリビリ実験や、「聞け、匂いがする」「いつものテはダメだな」「うちは毎日そのテの客でいっぱいです」「俺はアパートで彼女を調べる・・・・あ、いや、彼女のアパートを調べる」「もちろん、マジな会社です」、ホテルのハウスキーパーに向かってレーザー発射して「実験終了」、ホテルの宴会場をメチャクチャにするGB、デカパイ話、テラードッグにビックリするアパートのオバちゃん(笑)、テラードッグに襲われるルイスに無関心なレストランの客たち、チョー長い階段をゼーゼーしながら上がるGB、「俺の彼女はイヌブタか」「俺たちが相手だ!かかれレイ!」「ゴーザさん、こんばんわ 超常現象を直ちに中止して家か最寄りの異次元に帰って下さい」「性格ブスにはコレしかない」「やっちゃった・・・・」などなど、SNLで鍛えられたセンスある笑いに日本の観客もしっかり反応し、あちこちで笑い声が起こってたのを今でも覚えています。



既に『スター・ウォーズ』3部作が完結した後の1984年公開ですが、CGが本格化する前の特殊効果(SFX)シーンも斬新で、ライブラリー・ゴーストが一瞬で変身するカットや、飯をガツガツ頬張るスライマーのコミカルな動き、クライマックスに向かうにつれSFXはよりハデになっていき、目の前で起こる楽しい場面にワクワク。今観ても、図書カードがシャーッと綺麗に舞い上がる冒頭場面や勝手に飛び出す玉子はどうやって撮ってるんだろうと感心しちゃいます。CGだらけの今の基準からしたら合成のアラが目立っていても、SFXの見せ方の上手さというか、とにかく「観ていて楽しい!」という気持ちを引き出してくれるところに『ゴーストバスターズ』の色褪せない魅力があります。大都会NYを魅力的に切り取った部分にも惹かれたし、アメリカのアパートの内廊下にはホテルのような絨毯が敷いてあるんだとちょい羨ましくも思ったり
(笑)




そして目玉のマシュマロマンが出てきた瞬間、映画館の観客は手を叩いて大爆笑。それも吉本新喜劇並みに。これほど観客が一体となって笑いに包まれた経験はなかった。「すまん、いつもの理性が働かない」とイゴンの言う通りフツーなら考えないような、下手したら観客が失笑する危険性もあったブッ飛んだキャラをクライマックスに持ってくるこの“賭け”は見事に大成功。今では『ゴーストバスターズ』シリーズを象徴する愛されキャラとなりました。



5年後の『ゴーストバスターズ2』も今では結構好きですが、公開時は1作目ほどハマれませんでした。なぜならその年は『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』『バットマン』『ブラック・レイン』『リーサル・ウェポン2』『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』など強敵が多すぎたからです。

それから年月が経過し、2012年にオリジナル・メンバーとアイヴァン・ライトマンによる3作目が公開されると報じられた時、ファンとして喜びました。しかし脚本やキャスティングの難航などで製作は遅延状態が続き、メンバーの1人だったハロルド・ライミスが2014年に死去。彼の死に落胆したアイヴァンは『ゴーストバスターズ3』の監督を降りて企画は消滅。その企画はポール・フェイグ監督による女性リブート版『ゴーストバスターズ』へと変わり、アイヴァンはプロデューサーとして参加しました。オリジナルメンバーもカメオ出演しているということで「違った意味での」期待はしてましたが、1作目のようなは面白さはアイデア、笑いには及ばず、正直1回観れば十分という感じで(でも3D演出が楽しかったんで2回観たけど)、アタシの中ではGBファンの期待に応えてくれたリブートとは言えませんでした。

もう『ゴーストバスターズ』の新作は期待できないだろうなと諦めていた時、2019年1月に『ゴーストバスターズ』の正統な3作目の制作発表が公式に行われ、その翌日に「2020年夏公開」と宣伝した超最速トレーラーが解禁(公開はコロナ禍で1年以上延期)。1作目のエルマー・バーンスタインの音楽が使われてたことから「オリジナルシリーズの続編」が強調され、これはファンとして大いに期待しました。しかも監督はアイヴァンの愛息ジェイソン・ライトマンで、息子のアイデアを聞いて「感激した」というアイヴァンはプロデューサーとして参加。当初構想されていた「ゴーストバスターズの世代交代ストーリー」を活かし、ジェイソンいわく「『ゴーストバスターズ』へのラブレターなんだ」とオリジナルシリーズへの愛を込めて完成させた『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を試写で観たアイヴァンは涙を流して「お前の父親であることを誇りに思う」と述べたといいます。



『ゴーストバスターズ』シリーズで注目されがちのアイヴァン・ライトマンですが、アーノルド・シュワルツェネッガー初のコメディ『ツインズ』を成功させ、『キンダガートン・コップ』『ジュニア』でも組み、コメディ俳優としてのシュワを確立させたのもアイヴァンの功績です。他にも『ミートボール』『パラダイス・アーミー』『夜霧のマンハッタン』『デーヴ』『ファーザーズ・デイ』『6デイズ/7ナイツ』『エボリューション』『Gガール 破壊的な彼女』『ドラフト・デイ』など、コメディを中心に数々の作品を手掛けられました。


『ゴーストバスターズ/アフターライフ』公開中のまさかの訃報に本当に驚きましたが、父親と一緒に本作を完成させたことがジェイソンの最高の“親孝行”だったのではないでしょうか。今ごろはあちらの世界でハロルド・ライミスと再会しているかもしれません(ちなみに本作のイゴン役のボディダブルはアイヴァン本人が演じていました)。


 

 

心よりご冥福をお祈りします。