2017冬ドラマレビュー4●『カルテット』『スーパーサラリーマン左江内氏』 | ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁

2017冬ドラマレビュー4●『カルテット』『スーパーサラリーマン左江内氏』

2017ドラマ

ざっくりと本音でレビュー

-第4回-

 

 

 

注意ネタバレしてます。苦情は受け付けませんニヒヒ
※Yahoo!テレビ評価点数は3月24日時点のもの

 

 

 

 


カルテット 80点
(TBS/全10回/視聴率=初回:9.8%、最終回:9.8%、平均:8.87%)
Yahoo!テレビ評価/4.35点(1906人)


回を重ねるごとにアイツら4人がどうしても気になってくる


坂元裕二によるオリジナル脚本ドラマ。ラブ・ストーリーでもあり、ヒューマン・ドラマでもあり、コメディでもあり、サスペンスでもあり、成長劇でもある、一括りにできない異色作。松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平演じる4人のアマチュア奏者が弦楽四重奏のカルテット「ドーナツホール」を結成し、軽井沢の別荘で共同生活を始める。

 

 


大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の後枠だけにTBSも相当なプレッシャーがあったのではと思ったが、意外とそうでもなく“自由奔放”なドラマ制作を目指したんだそうな(その自由な空気感は観ていて何となく伝わってきましたね照れ)。男女4人の共同生活から発展するラブ・ストーリーかなと誰もが想像する内容の“斜め上”をいくのが坂元ドラマ。いい意味で期待どおりのものを見せてくれない。制作にあたって影響したドラマは『やっぱり猫が好き』なんだそうな。なるほど、アドリブ的な会話劇や他愛ない出来事を可笑しく見せる手法は通じるものがある。

 

 


坂元作品の前作『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(60点)は、都会人蔑視描写があまりに酷くてあまり評価してなかったが、はたして今回はどうか。


スタート時はとりとめのない会話劇を見せる「坂元ドラマらしい作りだな」というボンヤリした印象しかなかった。しかし、その“なんでもない”会話シーンや、普通のドラマなら省かれてそうな“大きな見せ場でもない”場面を挟み込んでくることで、いつの間にか視聴者もこの男女4人の共同生活の一部に入り込む感覚にさせる“坂元マジック”が徐々に、かつ効果的に働いてくる。5、6話あたりになると「あいつら来週はどうしてるんだろう、どうなってるんだろう」と気になってしまうのだ。巧みな手法だと思う。照れ そのかわり、坂元ドラマのキャラクターは慣れるまで時間がかかるという注意も忘れてはならない(2、3話でも話があまり動かないから脱落した人も多いと聞く)

 

 


とにかく粋な会話が面白くて興味深い。突拍子もない話題で始まるから、少し聞き逃しただけで「ん?何の会話してるんだ?」ということも少なくない。チュー 唐揚げにレモン汁をかけるかけないとか、ゴミ当番の順番決めとか、飲み屋でどうでもいいことを駄弁ってるレベルの会話劇を魅せるのも坂元マジックの特徴。あと“言い間違い”で笑いを取るテクニック。司(松田龍平)が八木亜希子演じる谷村さんの谷間が気になって、いつの間にか「谷間さん、谷間さん」と連呼してた名(迷)場面はウケた。笑い泣き 第3話で真紀(松たか子)とすずめ(満島ひかり)がお蕎麦屋でご飯を食べる場面も印象的。涙を流してご飯を食べるすずめに真紀が「泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます」と優しく語りかける。名ゼリフだ。

 

 


粋な演出もドラマの独特の空気感を伝える。第1章終幕である5話ではタイトルが29分後に出てくる。第一章と第二章の“つなぎ”を見事に演出したタイトルにちょっと鳥肌。グッ 4人の過去や素性が描かれ、彼らの関係性を深めていった第一章、そしてまだ謎が多かった真紀の衝撃の過去が明らかにされ、ドラマ的緊張感が増していく第二章。真紀の行方知れずだった夫・幹生(宮藤官九郎)の登場で物語が大きく動き出す。彼が強盗をして逃走中 → 拘束されているすずめ → 有朱(吉岡里帆)が鉢合わせになった幹生ともみ合ううちにベランダから落下 → 幹生、絶望して死に場所を探す・・・・・という、サスペンスからコメディに展開していく一連の流れは絶妙。ハラハラさせて、ドカンと笑わせて、夫の自首シーンでしんみりさせる。ホント、視聴者の感情を弄んでくれるドラマである(笑)。

 

 


衝撃的展開はまだ続き、真紀が実は別人の戸籍を不正取得して他人になりすましていたことが発覚。養父殺害疑惑で世間から好奇の目で見られ、他のメンバーまでマスコミにさらし者にされてしまう。最終回では、行方をくらました真紀のアパート付近で“誘導演奏”する3人や、“世間の注目”を逆手にとってコンサートをやってやろうと彼らが一念発起するクライマックスなど、胸を打つ場面が多い。「誰かに届ければいい。1人でも」。万人に好かれる必要はない。さまざまな事情や過去を抱えた彼らが演奏することによっていつもの4人に戻る見事な着地。それでいて余韻も素晴らしい。グッグッグッ

 

 

 

ちなみに最終回で彼らに手紙を送り、コンサートにも現れた謎の女は、主題歌を担当している椎名林檎説が飛び交ったが、演じたのは岸茉莉という女優さん下差しで、本人もここまで話題になるとは思ってなかったらしい。スタッフのただのミスだった「時間軸ズレ問題」など、作り手が意図しないところで視聴者の“深読み合戦”がツイッターなどで波及していくのは、いかにハマっていた人が多かったか説明するまでもない。

 

 


“目が笑ってない”演技をさせたら魅力5倍増しのワル巧み女・吉岡里帆も存在感を発揮。店をクビになって4人とお別れするシーンや、イケメンの外人をゲットして「人生、チョロかった! アハハハハ」と高笑いする小悪魔ビッチぶりは最凶。ヤな女なのに嫌悪感を抱かせない。彼女のスピンオフをぜひ見てみたい。あと、第9話の冒頭でチラッと出ていた戸籍を売った女を演じた篠原ゆき子もよく見かけるけど、彼女も最近気になる女優さんの一人。

 

 


4人の中でキャラ的に一番光ってたのがムードメーカーの家森(高橋一生)。息子との別れシーンで泣かされたり、ムダに熱く語る唐揚げレモン汁反対論や「サンキュー、パセリ」論、雪の上を直立姿勢で滑り落ち(第7話)、長すぎる春雨チョッキン(最終回)で笑わされたりと、とにかく彼の仕草がいちいち面白い。「わしにもくれっ!」(『千と千尋の神隠し』のカエル・パロですな)にハマってる人、急増中。チュー 『民王』の貝原茂平に続く、高橋一生クンの当たり役である。

 

 


視聴率は1桁台だったものの、放送終了後“カルロス”な視聴者が続出。製作陣も確かな手応えを感じているだろうから続編SPとかでまた4人と再会させてほしい。エレガントなエンドクレジットも含め、最後の最後まで遊び心が効いた演出もマル。家森の“行間案件”じゃないけどこのドラマの行間を、“みぞみぞ”しながら楽しんだ傑作デス。爆  笑

 

 

 

 

 

 

 

 


スーパーサラリーマン左江内氏 60点
(日本テレビ/全10回/視聴率=初回:12.9%、最終回:10.5%、平均:9.54%)
Yahoo!テレビ評価/3.61点(595人)


深夜枠だったら70点という感じユルユルコメディ


藤子・F・不二雄のSF漫画『中年スーパーマン左江内氏』を福田雄一演出・脚本でドラマ化。出演は、堤真一、小泉今日子、島崎遥香、横山歩、ムロツヨシ、賀来賢人、早見あかり、佐藤二朗、笹野高史、高橋克実ら。

 

 


原作が藤子マンガで、堤真一がやる気のない中年スーパーマンを演じて、福田雄一が監督で、早見あかりが出てるならば(←個人的好み)、チェックしないわけにはいかない。ま、福田雄一演出となると、おのずとどんなテンションのドラマなのか大体見えてくるわけで・・・・・。チュー


とはいえ、これまで深夜ドラマ専門だった福田監督の記念すべきゴールデンタイム初進出ドラマだから、ちょっとは作りを変えて、ちょっとはマジメに、ちょっとはおふざけテンションを抑えて、ゴールデンタイムにふさわしい(耐えうる)ものになってるのかと思いきや・・・・・全然そんなことなかった。ガーン いつもの福田カラー強めのアホ臭さ&くだらなさ、深夜ドラマ的ノリのユッルユル&小ネタ満載な作りは全く変えていない。「何も考えないで楽しめる」「ゴールデンタイムらしくないユルさがいい」という好評の声もあれば、「さすがにこのテンションはキツい」「ギャグがくどすぎ」「キョンキョンのモラハラが不愉快」という批判も多く、賛否真っ二つ。でもキョンキョンに関しては、あんな悪口程度でモラハラ批判する人がいるんだあ、と逆に驚いたけど。たかがギャグドラマなのに。キョロキョロ

 

 


ま、福田雄一作品の世界観は独特すぎて当たり外れが結構ある。『勇者ヨシヒコ』シリーズは、思考力がユルみきっている深夜枠だから面白いのであって、これをゴールデンでやってたらはたしてここまで支持されていたかどうか分からないし、『裁判長っ!おなか空きました!』『ニーチェ先生』はドラマというよりほとんどコントだし、かと思えば『アオイホノオ』という傑作を撮るときもあるから福田雄一は侮れない。なので、ボクの中では福田監督は「信頼度60%のクリエイター」なんですね。全作観てるわけじゃないけど、この人のドラマのノリは理解しているつもりなので、本作の初回を観て「あ~、これはもう深夜ドラマ・モードで観ないとダメだな」と早々にスイッチを切り替えたから、福田アレルギーを発症しないで済んだ(笑)。本作は、エピソードの出来不出来の差はあれど「まあまあ楽しんだ」てな感じです。

 

 


左江内が人気アイドルの助っ人に駆り出される第3話や、小悪魔な本田翼もカワユスな第5話、栃木弁丸出しのメンヘラなスーパーウーマン(永野芽郁)が登場する第8話は結構ツボだった(エンディングダンスを恥ずかしながら踊る彼女も可愛い)。ぜひ永野芽郁主演でスピンオフ『メンヘラスーパーウーマン笹原桃子』を作っていただきたい。ラブ 

 

 

 

ただね、早見あかり主役回がなかったのは大いに不満。彼女のコメディエンヌとしての実力は『ウレロ』シリーズで実証済み。第6話で、あかりんが休日の課長をテキトーにイメージする場面でのコメディセンスはなかなかのもの。あかりん主役の回を期待してたから最後まで観てたのに、彼女を生かさなかった福田監督にガッカリ。マイナス10点。ムキー

 

 


あと、福田監督と必ず“セット売り”されているムロツヨシ、佐藤二朗の独擅場のコント劇場は毎回用意されているが、さすがにこれはクドく感じた。面白ければアリなんだけど、このノリは少々キツイ。もうちょっとゴールデン用にブラッシュアップしてほしいし、福田監督はちょっとこの2人に頼りすぎ。えー 佐藤のアドリブに堤真一らが素で笑ってるのは観ていて面白いんだけど・・・・・。

 

 


でも原作って、フツーの中年サラリーマンがむりやりスーパーマンをやらされてるのに普段の生活は何も変わっていないという、そのギャップが面白いところだと思うのだが、ドラマ版では、ヒーローとして活躍している時と妻の尻に敷かれてる時の主人公の“落差的面白さ”があまりない。どっちもフザけてるようにしか見えないから。そこはもうちょっと計算して演出してほしかった。深夜枠だったら70点という感じ、チャンチャン。