シネトーク85『ミッション:8ミニッツ』●B級SFと思ってスルーしちゃうと後悔するで!
三度のメシぐらい映画が好きな
てるおとたくおの
ぶっちゃけシネトーク
●今日のてるたくのちょい気になることシネ言
「最近、リンジー・ローハンと小○美奈子がダブってしまう」
シネトーク85
『ミッション:8ミニッツ』
SOURCE CODE
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ギレンホール/ミシェル・モナハン/ヴェラ・ファーミガ/ジェフリー・ライト/マイケル・アーデン/キャス・アンヴァー
2011年米/94分/ビスタサイズ/ウォルト・ディズニー配給(2011年10月28日公開)
※重要なオチもネタバレしてます!
これから映画を観る人は読まない方がいいです
てるお 「最近の映画って劇場から出ちゃうとすぐに忘れちゃう薄味な作品ばっかりなんだけど、本作は観終わった後になってから色々と気になっちゃうんだよ。あの場面はどういう意味があったのか?とか、あの結末は何を意味してたのか?とか」
たくお 「味わいがあるというかもう1度確認したくなる。1回目よりも2回目の方が楽しめる映画やね」
てるお 「どうせヒネリ系SFスリラーだろ?とタカをくくったてら、主人公の<人生やり直しドラマ>へと昇華させてるのが意外だった。まさか最後で泣かされそうになるとは・・・・」
たくお 「『このラストは映画通ほどダマされる!』と大々的に宣伝してたけど、今の観客は二転三転系映画にすっかり免疫ができてるからちょっとやそっとのことじゃそんなに驚かない。『じゃあダマされてやろーやないけ!』と、いつものドンデン返し受け身姿勢で臨んだんだけど、そういう映画じゃなかった」
てるお 「1発勝負の安っぽいストーリーじゃない。かといって観客をダマす映画でもないと思うんだけど。この宣伝コピーはちょっと違うんじゃね?」
たくお 「いや、俺は逆に客を呼ぶにはうまいコピーだと思ったけど。SFスリラーがヒューマンな愛のドラマで締めくくるという意味では<ダマされた>わけだし」
てるお 「まあね、この宣伝文句で観ようと決めた人も少なくないはず。ポスターと予告編だけじゃただのB級SFだと思ってる人も多いだろうし」
たくお 「しかも邦題もB級感丸出し(笑)。原題の『ソース・コード』のままでいいんじゃね?」
てるお 「それだとソースのバーコードを作る映画かなんかだろうと思っちゃう人がいるかもな」
たくお 「誰に見せたいんだよ、そんな映画(笑)。でもね、先入観だけでスルーしちゃうのはあまりにもったいない。自信を持ってオススメできるサプライズ映画だし、映画通ならまず観るべき」
てるお 「泣いてる人もけっこういたね。場内からすすり泣く声が漏れてた。『ステキな金縛り』なんかよりもずっと泣けるぞ(笑)」
たくお 「鑑賞後に大いに語り合いたいな。そういう仕掛けもウマい」
てるお 「脚本はよく出来ているし、テンポも抜群にいい。次はど~なるんだろ!?と緊迫感がずっと漂う展開に惹き込まれる。語り口も絶妙だし、さすがダンカン監督」
たくお 「どうした、いつもは上から目線で批判ばっかりしてるキミがホメるなんて珍しい(笑)」
てるお 「別に上から目線のつもりはねーけどよ(怒)」
たくお 「観た人によってさまざまな解釈ができるのがこの映画の狙いどころなんだろうな」
てるお 「でね、オレなりに結末から考えられるさまざまな<解釈パターン>をまとめてみた」
A/元の世界では列車テロは起こり、シカゴ・テロは防げた。スティーブンスはパラレルワールドで生きる
観た人のほとんどがこう思っているであろうオーソドックスなオチ。スティーブンスはグッドウィンに送ったメールの通り「このプログラムは新しい世界を作りだしていく」機能があることに気づく。新しい世界というのは、元の世界(現実の世界)とは別のパラレルワールド(並行世界)。スティーブンスの活躍により列車テロを防いだパラレルワールドが作られたわけだが、元の世界では列車テロが起こったが、シカゴ・テロは防ぐことができた。スティーブンスは生命維持装置を遮断され死亡、パラレルワールドでショーンとして生きることを決め、クリスティーナと幸せに暮らす。多くの人命を助けたヒーローではあるが、ショーンの人格、人生を乗っ取ってしまっているのでいささか後味が悪い(笑)。
B/元の世界とパラレルワールドはリンクしている。スティーブンスはパラレルワールドから消える
パラレルワールドではすべてのテロを未然に防げることができ、スティーブンスはショーンとしてパラレルワールドで生きる決意をする。パラレルワールドと元の世界はリンクしていて、元の世界も列車テロを阻止した世界へと書き替えられた。これまでの世界がリセットされ、全く新しい世界が作りだせるというハッピーエンド。ただし、2つの世界がリンクしているという設定だと、元の世界のスティーブンスが仮死状態で、パラレルの世界のスティーブンスがショーンになれてしまうという矛盾が生じる。なので、パラレルの世界で任務を成功させた瞬間に、スティーブンスは消滅し、ショーン本人の人格に戻らないとおかしい。
C/元の世界では列車テロは起こり、シカゴ・テロは防げた。スティーブンスは元の世界でもパラレルワールドでも死ぬ
スティーブンスはパラレルワールドで幸せに生きていくように思えるが、生命維持装置を切られたことでパラレルの彼も死亡。モニュメントに映ったスティーブンスの顔がショーンだったことから、列車テロから助かったショーンはスティーブンスに乗っ取られることなく、クリスティーナと幸せな人生を送っていると解釈。テロが未遂に終わった8分後以降のシーンは、スティーブンスが“こうなってほしいと望んだ光景”を見ているだけに過ぎない。父親と和解し、街をテロから救った兵士(救世主)としての生を全うしたスティーブンス。ケース内の彼が幸せそうな顔をしていることからそのように解釈することもできる。肉体は滅んでも“意識”の中だけで生き続けていくという美しいエンディング。
D/実はタイムトラベルをしていて、テロが起こらない未来に書き替えられた
仮想プログラムで作り出された世界だと思いきや実は本当にタイムトラベルをしていて、スティーブンスの活躍により起こるはずだったテロを未然に防げたという『BTTF』タイプの分かりやすいオチ。
E/最初から軍が仕組んだテストケースだった
そもそも列車テロはなく、すべて軍が仕組んだテスト・プログラムだった。脳死状態のスティーブンスが実験台として選ばれ、テストの成功を確信した軍は、この驚異的なプログラムをテロ事件などに役立てることを決める。
たくお 「なるほど~。観た人のほとんどはやっぱりパラレルワールド説を強調しているよね」
てるお 「俺は、スティーブンスが体験する死者の記憶から引き出した仮想プログラムというのは、実はすべてパラレルワールドだと思うんだ。主人公は何度もテロ前の世界に転送されるけど、彼が爆死する世界も、列車に轢かれ死ぬ世界も、犯人に撃たれてしまう世界も、転送されるたびに1つのパラレルワールドとして形成されていく。そして最後にスティーブンスが最も望む“最良の世界”が出来上がりジ・エンド、なんじゃないかな、と」
たくお 「スティーブンスがこれはただの仮想プログラムじゃないと気づくのは、線路に落ちて列車に轢かれてしまう3回目のミッションの時。8分過ぎても元の世界に転送されなかったことから『これはもしや!?』と疑い始める」
てるお 「で、パラレルワールドが形成されていることに気づいたスティーブンスがラストでイチかバチかの賭けに出る」
たくお 「任務が無事に終わって、動くこともできない植物人間の自分に戻ってしまう<元の世界>よりも、列車テロを阻止して、父親と和解し、クリスティーナと幸せな時を過ごす<パラレルワールド>を選んだスティーブンスが生命維持装置の遮断をグッドウィンにお願いした、ということか」
てるお 「彼女にキスをした瞬間に装置が遮断され、映像が止まるじゃん」
たくお 「うん」
てるお 「フリーズして再び動き出した後の世界がスティーブンスの“新たな再生”と見る人も多い」
たくお 「なるほどね」
てるお 「ただ俺は、あの“新たな人生”の部分は蛇足な気がするんだよね。キスをしたところで終わってりゃ、より感動的な深いドラマとして余韻に浸れたのに、あの余計な場面がせっかくの余韻を削いじゃっている」
たくお 「そう? 僕はあのエンディングでいいと思ったけどね」
てるお 「結局、スティーブンスはショーンの意識や体を乗っ取ってクリスティーナをモノにしたわけだろ? そう考えたらコイツ、けっこうヒドいヤツだよな(笑)。いくら大勢の乗客を救った英雄だったとしてもさ」
たくお 「俺はおまいらの命を救ったんだから、第2の人生を楽しむ権利ぐらいはあるだろ! ってか(笑)」
てるお 「そんな傲慢なキャラじゃないけどさ(笑)」
たくお 「あのエピローグは監督のアイデアで付け足されたもので、監督自身も『ショーンには申し訳なかったけどね』と謝ってる(笑)」 ※パンフレットより
てるお 「キスする2人 ~ 笑いに包まれて幸せそうな乗客たち ~ フェードアウト=ジ・エンドにしてさ、スティーブンスはその後どうなったかを観客に委ねちゃえばよかったのに。あの取って付けたエンディングのおかげで今年一番の傑作になり損ねた」
たくお 「ハッピーエンドにするなら、パラレルの世界でもスティーブンス自身が再生されて、幸せに満ちたショーンとクリスティーナを影から見守るような感じにするとかね。そしてスティーブンスがショーンに『ありがとう、君のおかげだ』と一言声をかけて姿を消していく。不思議そうな顔をしているショーン・・・・・みたいなシメにすれば、後味スッキリで終われたかも」
てるお 「そうなんだよ、そういうエンディングだったら★5つだったな」
たくお 「監督は“一応の答え”を提示しているけど、結末以降の展開は観客に委ねた作りにしていると思うよ」
てるお 「観た人によってさまざまな解釈が生まれる。だから面白い」
たくお 「でも僕は、あれだけ困難なミッションに何度も挑んで乗客全員を救ったスティーブンスには幸せになってもらいたい。ショーンには申し訳ないけど(笑)」
てるお 「俺は生命維持装置が切られてことでパラレルワールドでのスティーブンスも死んでいると思うんだ。キスした後の8分以降の映像はスティーブンスの夢の中=彼が望んだ世界を“ファンタジー”として見せているに過ぎない」
たくお 「なるほどね。ソレ、いいところ突いてる」
てるお 「てか、スティーブンスがショーンを乗っ取ったとしたら、彼女の前ではずっとショーンを演じなきゃいけないわけだよね。いつかバレちゃって『あなた、本当にショーンなの!? 誰なの!? イヤッ、近づかないで~!』ってことにならねーか?(笑)」
たくお 「その後の展開はジョニデのB級SF『ノイズ』みたいになったりして」 ※地球に帰還した宇宙飛行士のジョニデが全くの別人になってたというB級SFスリラー
てるお 「だからさ、オレ的には余計なエピローグはバッサリ切っちゃうか、Cパターンの結末が理想なんだよね。Cの結末こそ、スティーブンスの魂が昇華されていく美しい結末とは思わんか?」
たくお 「ミレニアム・パークのクラウドゲートに映る顔がスティーブンスではなくてショーンからして、Cパターンであるという解釈もできるわな」
てるお 「でも、最初にトイレの鏡で顔を見た時も同じ演出をしているので、あのラストシーンはどう解釈していいか戸惑ったという人も結構いるみたいよ。演出上、観客にはスティーブンスの姿として映っているけど、恋人や乗客にはショーンの姿にしか見えないわけで」
たくお 「それよりも分かりずらいと思ったのはスティーブンスがグッドウィンにメールする場面。あれってスティーブンスが列車テロを阻止した転送後の世界のグッドウィンにメールしたんだよね? 最初観た時は、転送された世界から元の世界の過去のグッドウィンにメールしたのかとずっと思ってた」
てるお 「俺も初めは2つの世界がリンクしていて、Bパターンのオチなのかと思ったよ。でも5度目のミッションでスティーブンスがラトレッジ博士に電話した時、博士は『電話は受け取っていない。プログラムから現実を変えることはできない』と言ってたから、それはあり得ない」
たくお 「でも、あのメールの場面には重要な意味があるんだよね。列車テロを阻止したショーンの姿をしたスティーブンスが、プログラム発動を待っている仮死状態の自分に“励まし”の言葉を送る。これからプログラムに利用されようとしている、つまり、非人道的な扱いを受けているもう1人のスティーブンスにとって『すべてうまくいく』という言葉は何よりの“救い”になっている」
てるお 「パラレルワールドの機能を持った画期的なプログラムだから、今後起こる事件でも解決の糸口を見つければ、その事件が起こらなかった世界を作り出すことができる・・・・ということか。改めて考えると深いな」
たくお 「だから複数のパラレルワールドが作られていったという説が濃厚になってくるわけで、列車テロが起こってしまった世界がある一方で、すべてのテロを防げた世界もある」
てるお 「シカゴでの大規模なテロも防げなかった最悪な状況に陥ったパラレルの世界もあるかもしれないし」
たくお 「ただ、こっちはすっかり構えて観てるから、いろんなオチを想定しちゃうんだよ。みんながグルになってスティーブンスを試していたというEパターンのドンデン返しなのかなと思ったけど、それじゃ映画的に盛り上がらないわな」
てるお 「俺は実はスティーブンス自身がテロ犯なのでは? とも疑ったけど。でもそれだと後味が悪い」
たくお 「ただのドンデン返しや二転三転映画のほとんどはつまらないんだけど(笑)、本作はいかに観客の先読みを鮮やかに裏切ろうとしているか、脚本、演出に色々と工夫が見られる」
てるお 「何度も同じ場面を繰り返して見せ、スティーブンスは爆弾を見つけるための次のステップに進んでいく。普通ならこのリピート演出はダレるもんだけど、さっきとは違った展開を見せてくれるので最後まで飽きさせない」
たくお 「複雑な設定を聞いていると紙に書いて整理したくなるんだけど、それほど小難しい話じゃない。ラトレッジが装置について『量子物理学を応用して、うんちゃらなんちゃら~』みたいな話をクドく説明してたけど、そのへんも気にする必要はないので、ストーリーに身を預けて楽しめばそれでいい」
てるお 「とはいえ、ツッコミ部分も多いけどな。次のテロが迫ってるというのに、死んだ乗客のショーンとスティーブンスの脳の適合性がうまい具合に合っちゃうのは都合良すぎるし」
たくお 「乗客が全員死亡するぐらいの爆発テロなのに損傷していない乗客の脳をよく見つけられたよな(笑)」
てるお 「だったら乗客全員の脳みそを調べて犯人を割り出したほうが早くねーか?とも思ったけど」
たくお 「そこはぜ~んぶ『SFなんで』で片付いちゃうんだろうね(笑)。そんな細かいツッコミしててもキリがないけど」
てるお 「ま、SFだからと言ってあまりにも何でもアリだったり、夢オチでしたー!みたいな禁じ手を使われるとシラけちゃうけどね。SFってサジ加減一つで傑作にもなれば凡作にもなる。でも本作はシラける一歩手前のギリギリの部分でうまく留めてると思った」
たくお 「大学教授にしか分からないような小難しい理論なんか持ちだされても、パープリンな僕にはサッパリなので、筋の通った展開にしてくれりゃそれでいい。脚本はそんなに破綻してないし、SFなんだから多少辻褄が合わなくてもストーリーや演出で魅せてくれれば観客は納得してくれるもんだよ」
てるお 「論理的にSFを解釈することに必死になって、ハッキリした答えを求めたがる人には本作は向いてないかもねー(笑)」
たくお 「でも何が嬉しいかって、B級SFと小バカにして鑑賞に臨んだ本作が、実は奥の深いSFだったというサプライズ的な出会いだわな」
てるお 「同感。今年は良い意味で裏切ってくれたサプライズ映画とそんなに出会えてないから、必見の1本であることは間違いない。逆に期待させといて、なんじゃコリャなメジャー大作が多いけど(笑)」
たくお 「シネトーク用に細かい部分を再確認しようともう1回観ようと思ったんだけど、パンフレットに最後のオチまでこと細かく書かれてたんで助かった(笑)」
てるお 「ここまでオールネタバレなパンフも珍しいな」
たくお 「話が入り組んでいるから、鑑賞後に詳細を再確認したい人向けに作られてるんじゃないの?」
てるお 「これ、鑑賞前にパンフを先に読んだらドエライことになるで(笑)」
●『ミッション:8ミニッツ』満足度料金
てるお 1200円
たくお 1300円
『ミッション:8ミニッツ』 ★★★★
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