少し前の日本経済新聞の書評欄にガブリエル・ガルシア=マルケスの「出会いはいつも八月」の日本語訳が出版されたとの紹介があり、この南米コロンビアのノーベル賞受賞作家をはじめて知りました。

「出会いはいつも八月」は認知症となり筆が取れなくなるまで書かれていた未完の作品、つまりは遺作にあたるため、それを読む前に作風を感じておこうと図書館で借りたのがこちら。

 

この小説は書き出しが何と言っても衝撃的です。文学作品ですのでネタバレ承知で以下記載します。(ネタバレを好まない方は以下読まないでください。)

 

満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。

 

主人公は知識階級にいながら、独り身で本気で女性を愛することをせず、娼家に出入りしたりすることで女性との関係では深入りしないように人生を送ってきた人物。死を意識する年齢になって上記のような欲望が出てきて、娼家の主が用意した少女に初めて本気で恋をするという流れ。

最初は眠ったままの少女をただ見るだけで一晩を過ごすというところは、川端康成の「眠れる美女」に着想を得たとのこと。

 

これ以上は内容に触れませんが、主人公の心情の変化、さまざまな欲望や嫉妬が渦巻恋の苦しみを九十歳にしてはじめて経験するというところがこの小説を面白くしていると思います。

 

表題や書き出しからしてインモラルな要素があるのでその方面が好みではない方には向いていないかも知れませんが、寿命が長くなって、生物としての本源的な機能が失われた後も人生が続いていくようになったことが、この小説やその着想のもとになった川端康成の「眠れる美女」に描かれる老人の欲望というテーマにつながったのではないかという気がします。

この作家の代表作の「百年の孤独」や冒頭の「出会いはいつも八月」なども面白そうで、少し時間をかけながら読んで行こうと思いました。

 

あと、ここにきて川端康成をちゃんと読んでいなかったのは日本人に生まれたのに勿体ないと思うようになり、この小説のルーツである「眠れる美女」を読み始めました。そのうち読み比べの感想を書こうかなと思います。