退院して1週間、昨日の土曜日は溜まった仕事を少しでも片付けるために出社して、今日は1日静養する計画でしたが、医師からはハードでなければ運動は可と言われていたので、テニスがしたくなりました。

とは言っても、傷口近くに血のかたまりなのか少しだけ違和感があるほか、めまいなどもたまにあって万全ではなくて、体調に異変があると続けられなくなって一緒にやっている方に迷惑をかけてしまうので1時間だけ壁打ちテニスをしてきました。

 

家からは少し遠いのですがお気に入りの壁打ちコートへ。

朝の太陽が眩しい季節にはなってきましたが、昨日ほどではないものの冷たい風が吹いていて結構寒かったですね。肉離れなど起こさないよう最初はスローペースで慎重に体を温め、その後徐々にペースを上げながら、1時間しっかり練習することができました。

こういうときはラケットが振れるだけでもうれしいものですね。

体調をみながら、あせらず本格的な復帰を目指そう。

 

 

買い物などを済ませて午後は自宅で読書。

入院中に読み始めた本、須賀しのぶさんの長編を1冊読み切りました。

 

須賀しのぶさんは「革命前夜」で出会って好きになった作家さんです。

「芙蓉千里」シリーズはこれまで読んだ小説のなかでも屈指の感動作で、続けて読んだ「また、桜の国で」のラストは涙をこらえながら読みました。

 

この作家さんの難しいところは、時代背景がかなりマニアックで、大学入試で世界史(特に近現代史)を勉強したくらいではとても歯が立たず、かなり読者を選ぶ作家さんだと思います。

伏線を積み上げて終盤に一気に感動の波に変えていく構成力はすごいのですが、それまでに時代背景の理解の面でついてこれずに読了を断念された方もいるような気がします。この作家さんの著作には前提知識を整理する解説書なりサイトがあればといいのになあと。

 

今回手にしたのは「荒城に白百合ありて」。

舞台は幕末の日本なので、これまで読んだ作品のようにヨーロッパ、満蒙の近現代政治史、民族抗争史の知識が必要とされない分若干敷居は低いですが、そもそも幕末維新の政治史の知識はあることが前提になっている小説です。

 

 

ネタバレは避けるように記載していきますが、少しでも先入観を避けたいようでしたら以下はお読みにならないでください。

 

この小説はひとことで言えば、幕末を舞台にした恋愛小説の傑作です。

 

幕末は英雄がたくさん出てくるので、どうしても男性が目立つ時代ですが、そこで恋愛小説を出してきたところはやはり須賀しのぶさんらしい。

特に武家に生まれ育った女性とはどういう人間で、そういう女性の恋愛とは何か、もっと突き詰めていえば、自由な恋愛という概念がほとんどない世界で人格を形成せざるを得なかった女性が決して結ばれることのない運命の男性に想いを寄せる姿を印象深く表現しています。

その想いは本人にも意識できないようなあいまいというか認識しづらいもので、それがこの小説の中盤での難しさ(伝えにくいものを表現することの難しさ)になっているような気がします。

 

小生は父親方のルーツが会津に、母親方のルーツが薩摩にある(先の大戦で両家とも東京に出て来なかったら絶対結ばれなかったはず(笑))のでもとより縁のある分野だったのと、司馬遼太郎を読んで育ったので、「竜馬がゆく」、「燃えよ剣」、「最後の将軍」などを通じて、この時代の歴史、政治的な背景はかなり知っていたので苦労はしませんでしたが、これから手にされる方は幕末維新の歴史はざっとおさらいしてから読んだ方が良いでしょう。

司馬遼太郎で幕末維新史を知るとすれば、女性ならば日本史上最高のイケメンである土方歳三を描いた「燃えよ剣」、男性ならば「竜馬がゆく」なのでしょうが、なぜ「攘夷」が「倒幕」に変わっていくのか、その点が冷静に説明されているのは実は「最後の将軍」です。

 

ネタバレになるので、内容には触れませんが、とにかく最後まで読んでこそ価値のある小説です。

この小説は、最初にクライマックスの前段を見せて読者を引き込んだ後、多少の起伏はあるにしろ、ともすれば淡々と幕末の会津、薩摩を中心とした幕末の政治、社会動向の話が続き、主人公の人間性が見えにくくてややもすれば「この小説はずれかな」と思わせるような感じもしてしまいます(途中で読むのをやめられた方も結構いるのでは?)。しかしながら、その長い伏線(この時代の武士や武家の女性の人間像が理解できると思います)から最後の最後に本当のクライマックスに持って行く(単行本で言えば)最後の20数ページ、そこに描かれた主人公たち特にヒロインの心情描写の引力はすさまじく、読者はきっと引き込まれることになると思います。

 

なので、須賀しのぶさんの小説は、「とにかく最後まで読んでみてください」というひとことが必要なのだと感じました。