僕が開業した頃は、ディスポ針はそんなに普及しておらず、オートクレーブ消毒を繰り返しながら、ステンレス針を使っていました。
消毒が終わると針尖のチェック。上からサランラップを張ったビンに針を突き刺して、抵抗なくスッと貫けばOKなんだけど、針尖の潰れたものは、これがうまく刺さらない。
そういうのは「ニューシャープナー」という機械で針尖を磨くんです。モーターに研磨布が巻かれたものなんだけど、針尖を当てると黄色い研磨布に黒い線ができる。で、もう一度、サランラップ。
「ニューシャープナー」にはライトと顕微鏡のようなスコープもついていて、針尖を確認しながら研ぐこともできた。松葉型が望ましいんだけど、慣れるまではなかなか納得できる形状にならないんです。
人によっては鹿皮で歪んだ針を伸ばしたり、それなりにみんな自分の道具に愛着を持っていたものです。
鍼管はコヨリを作って中の掃除をしたし、針皿も無水エタノールで拭いていました。
たさディスポ針の普及が広まるにつれて、徐々に手間のかかる針尖チェックなんてやらなくなりましたけど、僕はこの作業、けっこう好きだったなぁ。患者さんが少ない間は、こうやって時間を過ごしていました。ときどき研磨がすごく上手くいって、サランラップに突き刺したとき、微塵の抵抗すらない奇跡の針尖が生まれたりするのです。突き刺した実感すらなく、ずーっと通り抜けるような一本。
そういうフェイバリットな仕上がりの作品を集めては、「新しい患者様に使ってリピート率を高めよう」なんて考えるのですが、そういうときのほうが上手くいかなかったりするのが、ROCKな鍼灸治療家の悲しいところです。鋭すぎて内出血させたりとか•••。
久々に鍼を研いでみようかな。