『理不尽』 | All Things are in Flux

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時々、何か書きます。
変わることを楽しみながら。

私が3歳の時、

1歳半の妹は医療事故で重度の身体障碍者になった


私のまねをして、舌足らずでおしゃべりしてた

柔らかなふわふわの笑顔の妹は


食べる事ができなくなり、

しゃべることができなくなり

生涯オムツの生活となった


日に何度も痙攣性の発作で、

全身をひきつらせて

呼吸もままならない地獄の苦しみを、

涙をぽろぽろこぼしながら

小さな体で懸命に耐えていた


生死の境を何度もさまよい、

入退院を繰り返し

何年も病院で過ごした


全身に注射を打ち、

身体がはれ上がり

しまいには打つ場所がなくなってしまった


痛みと苦しみで、眠る事も出来ず、

ずっと泣いていた


舌が麻痺してしゃべることの出来ない口で

 「あー!あー!」と泣いていた


それでも身体は成長するし、

喜怒哀楽もちゃんとあった

妹の笑顔はまるで天使の様だった


その無垢な魂が、

どんなに家族を癒してくれたことか


妹は懸命に

自分の運命を生きていた


母は、いつも妹と共にあり

自分の命を削るように愛し慈しみ、

死神から妹の命を守っていた


私は小さい頃から母と一緒に遊んだ記憶がほとんどない


でも、私にできる大切な役目は

ちゃんと知っていた


元気でいる事、

心配をかけない事

家の中を明るくしている事


家族みんなで、妹を包むようにして暮らし

その苦しみも悲しみも、

全部家族で分かち合った


やがて、歳の離れた下の妹が生まれ

その子は元気で、いつも穏やかな笑顔で 

一緒に上の妹を愛して守るようになった


1歳半で理不尽に奪われた自由な人生


学校に行く事もない、

友達もできない

愛する事も知らないまま、

叶える未来の夢も見れない


家族だけが、妹の世界のすべて

赤ちゃんの心のまま28歳まで生きた


最後の最後まで、

家族全員に愛されて旅立った


妹は、何も悪い事などしていない


残念だけれど、

世の中に理不尽は存在する


妹は、まるで、

家族が共通して見た夢のような存在


でも、

あの妹の人生を見て、私は育った


私の人生が、

妹が生きていた証となる様な

そんな生き方をしたい


どんな困難も、

妹が生涯受けた苦難に比べたら

笑ってやり過ごせる


命の重さ、

命の儚さ、

命の大切さ


生きる事は奇跡の中にある


妹が叶わなかった自由な人生を

私と、そして下の妹が生き抜く


どんな理不尽にも、

挫けたり、諦めたり、投げ出したりしない


生きたくて生きたくて 

でも生きることが叶わなかった命に対して

恥ずかしい生き方は絶対にしない


いつも前を向いていく


生きている限り、出来る事は沢山ある

希望を見つけて、知恵を絞って生き抜く


「絶望は愚か者の結論」とディズレーリは言った


私は、「絶望は勿体ない」と思う


今、生きているこの毎日は奇跡 

人生は奇跡の積み重ねで出来ている


今の日本が置かれた現実が、

誰のせいの理不尽であっても、

そんなものに負けてなんかいられない


生きて、生きて、生きて、生き抜いてやる!