私が全て話終えて「ふぅっ」と息を吐くと、青葉は「そういうことか」と呟いた。

 彼は私の視線に気付くと苦笑する。

「珍しかったからさ、星良のハッキリしない言い方が」

探るみたいだった、と付け加える。

 同居人でもある青葉に、私の様子を聞いたのだろう。いつもズバズバ言う星良の、ハッキリしない言い方が気にかかって青葉も腰を上げたんだな。

 もしかしたら家での私の振る舞いがいつもと違ったのかもしれない。若葉にも「店長らしくない」なんて言われてしまう体たらくだし。

 青葉は「そういうことかぁ」ともう一度、呟く。

 カップを手にとったが口に運ばず、また戻す。取っ手を指先で撫でている。やがて手を止め、私へ視線を向ける。

「気持ちは、解らなくもない」

「んん?」

 遠い言い回しだなぁ。

 解るのか解らないのか、どちらだ。

 青葉は「ウチは弟だから」とカウンターを指差す。そこにはいない、若葉を示す。

 それで彼の言いたいことが、ホンの少し解った。

「結婚ってさ、嫁にいくものって思われているだろ?」

それってどうなんだろうな、と首を傾げた。

「俺にはいまいちピンと来ないんだよな、ソレ。嫁にいくってのが正直、よくわからない」

 青葉は口を尖らせる。子供じみた仕草も、私と二人だけの時は許している。さすがに社長がこれでは威厳が無さすぎるからだが、二人の時は友人である一面まで隠させたのでは青葉だって堅苦しいだろう。

「行く、イコール出ていくになっている訳だと思うんだよ。でもさ別に他人になる訳でもないじゃんか」

家族には変わらないだろ、と告げる。つまりさ、と続ける。

「尚真は星良が他人になっちまうような気が、どこかでしているんじゃないか? 奪られたような気が、どこかであるんじゃあないのか?」

そんな訳ないって思いながらな、と彼は視線をカップに戻す。

 そう、なのだろうか。

 青葉の言葉を、鵜呑みにするほど納得はしていない。けれど「そんなことはない」と強く否定できる根拠もない。感情はどちらにも傾くが、どちらにも傾かない。

「俺はやっぱり何も言えないな」

 彼は「尚真が正しいと思う」と私と目を合わせる。

「この問題は、身内の話だ」

 青葉のハッキリとした声が静かな店内に響く。

 冷めたコーヒーを口に運び、顔をしかめた。彼も酸味の強いコーヒーは苦手なのだ。

「『家族同然』と『家族』てのは、違うと思う。あくまでも『同然』なんだ、『みたい』なものだ」

俺の考えだけどな、と注釈をつけた。

「だから俺が簡単に『会えば良い』『やめれば良い』と言う話じゃない。決めるのはお前だよ、尚真」

 きっぱりと言い放つ。