彼は「いつか、」と声を発する。

「いつか寂しい思いをするかもしれない。今だけを考えて、その先はもっと孤独になるかもしれません」

 顔を上げる。彼は相変わらず笑んでいる。

「もし、」

 わたしが口を開いて止めても、彼はにこにことしているだけで。わたしの言葉を待っているようだった。

「もし、わたしが居辛くなったら。ここに来ても良いですか?」

 わたしはどこに居辛くなったら、と言わなかったのに彼は「構いませんよ」と快諾する。

「居辛くならないと良いですね」

 彼はさらっと口にする。

 その言い方が何だか妙に軽く感じられて、思わず顔が緩んだ。

「そうですね」

 沈黙が流れる。

「もし、話したいことがあったら来てくださいね。自分の話は、他の人たちには内緒ですよ」

 彼は口元で人差し指を立てる。子供っぽいような仕草が、やけに似合って笑みがこぼれた。