彼は「あぁ」と気の抜けたような声を出した。
彼の、力まない反応にわたしはほっと口を開く。
「誰かを、好きになった友人を羨ましく思います。その人に、振り向いて欲しいと努力する。自分を磨く姿は美しいです」
彼が構えないから、わたしは饒舌になってしまう。この人には、気軽に話して良いような気分になってしまう。
「だけど同時に、醜くもなる」
わたしは言葉を切って、反応を窺う。彼は変わった様子もなく、相変わらず小さな微笑を湛えて、わたしを見ている。
「自分以外の人に冷たくしたり、その『誰か』の傍にいる人たちを排除しようとしたり。選んだ人を貶めようとしたり」
わたしは短いけれど、今までわたしの歩んで来た人生の中で目にして来た光景を思い浮かべている。
同時に思い出している。
夢の中の『わたし』を。彼女の『誰か』を。
『わたし』は『彼』がとても好きなのに。『わたし』が美しくありたいと努力するのは『彼』に見て欲しいからなのに。
たくさんの人に美しいと褒め称えられても『彼』は『わたし』に笑みを向けない。
『彼』と言葉を交わす、『彼』に笑みを向けられる、そんな人たちに『わたし』の心は荒れている。