秋平は「俺はサイテーなんだ」と繰り返す。
「辛くない、 わけなかったのに。絶対に、嫌だったはずなんだ」
当たり前だ、と俯く。
「それなのに」
口唇を噛む。
握りしめた拳に血管が浮いている。
真っ赤な血が流れているのに浮き出て見えるのは薄い緑色だ。
「俺は、」
秋平の声が上ずる。
震えている。
声だけでなく、全身が小刻みに震えている。
「俺は、アイツが我慢していればって思ったんだ」
サイテーだ、と繰り返す。
俯いて、モスグリーンのスラックスを握りしめる。
「アイツが我慢していれば、わからなかったのにって。そう、少しだけ思ったんだ」
秋平は「そんなの、」と続ける。
「サイテーだ」
秋平は震えたままだ。
「憧れてもらう資格なんかない。ちらっとでも頭を掠めたんだ。俺は、」
俺も、と言い直す。
「俺も、同罪だ」
秋平は固く目を閉じた。