水藍が「先生も、」と神妙な声で呟く。

 瞼を上げれば彼女と目が合う。だが「いえ、」と彼女の方が目を逸らす。

「今日は、菖蒲(あやめ)ちゃんは? 一緒じゃあないんだ?」

 いつもセットでいるのに。

 彼女の従姉妹で親友。校内ではお姫様とそれを守る騎士として有名だ。

「常に一緒にいるわけじゃないですよ」

 言い返しはするものの、語尾が弱い。

 水藍の声のトーンがいつもより弱くて俺は口を噤む。居心地の悪い沈黙が流れた。

「菖蒲。最近、綺麗になったと思いませんか?」

「え……? そう、かな? どうだろう?」

 唐突な質問に動揺してしまった。

「何か吹っ切れたみたいな、」

 水藍は憂いを込めたようなため息を吐く。

 再び沈黙が流れる。

 何と答えれば良いのか。見掛ける菖蒲は、俺には同じにしか見えなかったけれど。

 水藍の様子に、言えなかった。