試合当日は、いくら公休になっても授業は待ってくれない。
俺は宮治に前日の授業ノートを借りている。
「次の試合は、観に来るか?」
宮治は瞬きする。
「昨日、勝ったし。次の試合は平日じゃない、から」
なんだか言い訳をしているみたいだ。言葉を並べている。
宮治は「行くよ」と短い返事。
俺は何故かほっとしたような気持ちがして、また宮治のノートを書き写す。
見易い、丁寧な字が並んでいる。彼の気質を表しているかのようだ。
「次、どこと?」
俺は学校名を答える。宮治は「ふぅん」と含みを持たせる。
その意味を悟り、ぎくりとした。
「呉羽(クレハ)さんの学校とは当たらない?」
案の定、ユキの話題だ。
俺は「まだ」と短く答える。
答えるのが早過ぎただろうか。
「向こうの学校も、勝っているみたいだし。いつかは当たる、けど。まだ、」
俺は言葉を切る。
「まだ、当たらない」
対戦したところで、ユキが観戦するとは思えないけれど。
「でも言ったろ?」
宮治の目と合わせる。
「当たっても、ユキは来ない」
俺は、本当は自分に言い聞かせているのかもしれない。
ユキが来るはずない、と。